2023 年 43 巻 p. 738-751
目的:診断後2年未満の成人期クローン病患者のセルフケア支援で活用できるアセスメントツールの開発に向け,ツールに含む看護アセスメント項目の妥当性と実用性を検証する.
方法:クローン病患者への看護実践経験のある看護師466名に質問紙を配布して2回のデルファイ調査を実施した.同意率は80%に設定した.
結果:第1回調査は146名,第2回調査は94名の回答があった.[自分の病気・治療・社会資源についての関心と理解],[病気の受け止めとセルフケアの目標],[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践],[病状に応じたセルフケアの実践],[ストレスの認知と対処],[周囲からのサポート]の視点から成る計56項目を確定させた.
結論:確定した看護アセスメント項目は患者のセルフケア状況を包括的に捉える視点で構成され,本項目を活用することで一貫したアセスメントが可能であることが示唆された.
Purpose: To develop an assessment tool that can be used to support self-care in adult patients with Crohn’s disease less than 2 years after diagnosis and to examine the validity and utility of the nursing assessment items to be included in the tool.
Methods: A questionnaire was distributed to 466 nurses with practical nursing experience in taking care of patients with Crohn’s disease, and two Delphi surveys were conducted. The agreement rate was set at 80%.
Results: In total, 146 nurses responded to the first survey and 94 to the second survey. A total of 56 items were determined from the perspectives of “concern and understanding of one’s disease, treatment, and social resources”, “perception of disease and self-care goals”, “self-care practice in accordance with lifestyle and life events”, “self-care practice in accordance with the medical condition”, “recognition and coping up with stress” and “support from surroundings”.
Conclusion: The finalized nursing assessment items was derived from the comprehensive perspective of patient self-care status, suggesting that consistent assessment is possible by utilizing these items.
クローン病(Crohn’s disease;以下CD)は肉芽腫性炎症性疾患であり,小腸・大腸を中心に全消化管に特徴的な病態を生じ原因不明で根本的な治療法がなく,再燃と寛解を繰り返す(藤谷ら,2011).CDは潰瘍性大腸炎と併せて炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease;以下IBD)と呼ばれるが,病変の部位,形態や病態は明らかに異なり,それぞれ独立した疾患と考えられる(日本消化器病学会,2020).CDの好発時期は10代後半から20代の成人前期であり,患者の年齢層別にみると成人期が最も多く,全体の約85.2%を占める(厚生労働省衛生行政報告例,2020).
CDの治療では根本的な治療法は確立しておらず,内科的治療法では食事栄養療法と薬物療法が実施される.CDでは寛解期においても継続した治療は必須で,患者は永続的な療養が必要となる.また,患者は薬物療法や食事栄養療法の実施の他,症状のセルフモニタリングなどセルフケアの実践が必須で,さらには病気の経過や生活と折り合いをつけ,セルフケアを主体的に構築することが重要になる.特にCDと診断されて1~2年未満の時期にある患者は疾患の経過の不安定さから不安や抑うつ症状を呈しやすく,自己評価が低い傾向にあり(Lynch & Spence, 2008;Choi et al., 2019),セルフケア不足が生じやすいため,看護師が的確に患者のセルフケアをアセスメントし,支援に繋ぐ必要がある.
欧州のIBD患者への看護を専門とする看護師が組織する団体であるNurses European Crohn’s and Colitis Organisationは,患者に対する看護アセスメントはエビデンスのある統一したアセスメントツールを活用することが肝要であると提言している(Kemp et al., 2018).IBD患者に回答してもらうことでセルフケア能力を測定する尺度はすでに開発されており,信頼性・妥当性も示されている(Lovén Wickman et al., 2018).しかしながら,この尺度には腸管狭窄に伴う腹部症状の病勢察知と対処(石橋,2012)や肛門病変を踏まえたスキンケア(Fearnhead, 2019),症状に応じた食事栄養療法(山本・中村,2019)といったCD患者特有の合併症や治療のセルフケア項目は含まれていない.そのため,この尺度からCD患者のセルフケアをアセスメントするには限界がある.また,患者の回答から看護師がセルフケアをアセスメントし,支援に繋ぐ方略は示されていない.この現状から,本邦のCDの専門外来では各施設独自に作成した問診票を活用して,患者のセルフケア能力をアセスメントしている実情があるものと推察される.施設毎に問診票が異なることや個々の看護師の経験知によってアセスメントの視点が異なることで,患者への一貫したアプローチが行えない可能性が考えられる.また,CDは複雑な病態を示し,患者によって症状は異なり,食事栄養療法をはじめ治療が生活と密着しており,患者が行うセルフケアも個別性に富む(山本・布谷,2021).そのため,セルフケア支援では個々の患者の病態や治療,生活と関連させながら包括的な視点で看護アセスメントを行う必要がある(山本・布谷,2022).
そこで,診断初期のCD患者のうち発達段階上,最も多い割合を占める成人期にある患者のセルフケア支援を看護師が行う際に活用できるアセスメントツールの開発に向けて,まずはツールに含める看護アセスメント項目を明確化する必要があると考えた.本研究の目的は,診断後2年未満の成人期CD患者の主体的なセルフケア構築を支援する際のアセスメントツールの開発に向け,看護アセスメント項目の妥当性と実用性を検証することである.本研究により,患者がセルフケアの基盤を構築する時期における一貫した看護アセスメント項目が明確になり,シームレスなセルフケア支援に繋ぐことができると考える.
本研究における用語の定義について,文献を参考に以下のとおり定義した.
成人期:Levinson(1978/1992)の定義する成人前期と中年期の発達期を参考に,本研究では「成人期」を「17歳から60歳」とする.成人前期は社会における自らの場を確立しようと地歩を固める時期であり,中年期はそれまでの人生を振り返り評価し,将来について考える時期である.各発達期の心理社会的背景は異なるが,症状のセルフモニタリングやストレスへの対処など,診断初期のCD患者がセルフケアを構築するための課題は両時期で共通するため(Lesnovska et al., 2010;Wåhlin et al., 2019),本研究では成人前期と中年期を合わせて成人期とした.
セルフケア構築:Orem(2001/2005),宮本(1996)による定義を参考に,本研究では「セルフケア構築」を「CDの発症により新たに必要となるセルフケアの要件を充足するために,患者が学習によって新たなセルフケアを築いていくことであり,病気と共に生きながら安定感や充実感が得られることを目指すものである」とする.
看護アセスメント項目:坂下ら(2021),日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会(2011)によるアセスメントの定義を参考に,本研究では「看護アセスメント項目」を「看護師がCD患者のセルフケア状況を患者とのコミュニケーションや観察から系統的に収集,集約して,セルフケアにおける強みや課題を分析するために必要な指標」とする.
本研究はデルファイ法を用いた質問紙調査を実施した.デルファイ法は,専門家集団からのアンケートの回答を統計的にまとめ,フィードバックを繰り返し,回答者の意見を収斂する方法である(Polit & Beck, 2004/2010).デルファイ法による調査は質問紙を用い,直接対面での話し合いが不要で,回収された回答を分析し,要約し,新しい質問紙とともに専門家にフィードバックする.フィードバックされた集団の視点をもとに専門家は新たに質問に回答する「回答-分析-フィードバック-回答」というプロセスが繰り返され,意見が洗練されるプロセスを辿ることができる(Burns & Grove, 2013/2015).本研究では,研究者間で検討し作成した看護アセスメント項目案についてCDの看護学研究者より助言を受けるプロセスを踏んでいることから,デルファイ法による調査は2回実施することにした.
2. 研究協力者CD患者が受診する医療施設に勤務し,CD患者への看護を実践した経験のある看護師を対象とし,看護師経験年数やCD患者への看護実践経験年数,役職の有無,配属先は問わないこととした.条件に看護師経験年数やCD患者への看護実践経験年数を設定しなかった理由は,CDの専門病院は全国的に少なく,エキスパートといわれる看護師の人数を事前に予測して選定することが難しいと判断したためである.Keeney et al.(2011)はデルファイ法による調査において,協力者の専門的な知識などを均質にできない場合,協力者の人数をより多く設定する必要があると述べている.これを踏まえ,特に経験年数は問わず,CD患者への看護実践経験のある多くの看護師から回答を得ることを優先した.
3. 看護アセスメント項目の開発プロセス・調査手順(図1) 1) 看護アセスメント項目案の作成項目案の作成にあたり,項目作成方針として了解可能性と内容妥当性の2点を設定した.了解可能性ではアセスメントを行う看護師が了解可能な項目であること,内容妥当性ではアセスメント対象となる患者のセルフケア内容として妥当な項目であることを方針とした.この方針に基づき,CD患者のセルフケアの特徴を明らかにした文献検討(山本・布谷,2021)およびCD患者の看護実践経験を5年以上有する看護師への面接調査から抽出されたセルフケア支援において必要となる看護アセスメントの視点(山本・布谷,2022)を参考に項目案を作成した.次に,項目案について類似するものをまとめ,アセスメントの分類として意味を成す名称を付け,同じく分類についても類似するものでまとまりをつくり視点とした.分類および視点の名称付けにあたり,項目作成方針の了解可能性を考慮し,分類は『~力』の表現に統一し,視点はゴードンの機能的健康パターン(江川,2019)を参考にした.3視点,12分類,91項目から成る看護アセスメント項目案を作成した.
看護アセスメント項目の開発プロセス・調査手順
作成した看護アセスメント項目案について,CD患者の看護論文を筆頭で執筆している研究者4名に個別インタビュー調査を行い,確認を求めた.研究者より,「診断後2年未満の時期にある患者に適した項目に焦点をあてた方がよい」,「実用性を考慮し,セルフケアのアセスメントに特化させた方がよい」といった助言を受け,3視点,12分類,66項目に洗練させ,看護アセスメント項目(第1版)とした.
看護アセスメント項目(第1版)に関して,診断後2年未満の成人期CD患者のセルフケア構築を支援するアセスメント項目としてふさわしい内容であるか(妥当性),臨床の現場で実際に看護師がアセスメントできる項目であるか(実用性)について,それぞれ4段階のリッカートスケールで回答を求める質問紙を作成した.リッカートスケールは「4:非常にあてはまる」,「3:あてはまる」,「2:あてはまらない」,「1:全くあてはまらない」に設定し,記載される項目以外に必要と考えるアセスメントがあれば,自由記述での回答を求めた.また,協力者の属性(性別,年齢,看護師経験年数,CD患者への看護実践経験年数,所属部署,役職,資格)についての質問項目を設けた.
3) デルファイ法を用いた第1回調査2021年8月~同年10月の期間で,CD専門医が所属する全国213施設の施設長もしくは看護部責任者に研究協力の依頼を行った.研究に協力可能な場合は,研究協力者の選定基準を満たす看護師の人数について回答を求めた.結果,213施設のうち41施設(19.2%)から同意を得られ,施設内訳として大学病院15施設,一般病院23施設,クリニック3施設であった.41施設の施設長もしくは看護部責任者より計466名の看護師が調査可能と回答があり,人数分の研究協力依頼書,研究同意書,看護アセスメント項目(第1版)・質問紙,返信用封筒を送付した.最終的に第1回調査では,146名(31.9%)の看護師より同意が得られた.質問紙の回収後,協力者の属性は項目ごとに記述統計により算出した.アセスメント項目については,妥当性と実用性それぞれで,「4:非常にあてはまる」,「3:あてはまる」の回答数を集計し,これを同意とみなし,全体の回答数のうちの同意割合を算出した.デルファイ法を用いた研究では同意率について,51~70%までの幅があり,その設定に関して確立したものはなく(Polit & Beck, 2004/2010),本邦における看護師を対象にした研究では80%に設定したものが多い(藤田ら,2018).本研究では,文献検討(山本・布谷,2021)と看護師を対象にしたインタビュー調査の結果(山本・布谷,2022)をもとに案を作成した後,看護学研究者にアセスメントの視点と項目の内容的妥当性について意見を受けており,第1版の段階で一定の洗練がなされていると考え,同意率を80%に設定した.
4) 看護アセスメント項目(第2版)および質問紙の作成第1回の調査結果を踏まえ,同意率が80%以上を占めた項目を看護アセスメント項目(第2版)に反映させ,80%未満の項目は削除した.また,第1回調査の質問紙の自由記述の回答について,項目作成方針に基づき了解可能性と内容妥当性を研究者間で確認できたものを新たな項目として採用し,類似するものを統合して,分類および視点の配置を検討した.
看護アセスメント項目(第2版)について,第1回調査同様に診断後2年未満の成人期CD患者の看護アセスメント項目としての妥当性と実用性について,それぞれ4段階のリッカートスケールで回答を求める質問紙を作成した.第2回調査の回答にあたっては,第1回調査の意見から変更してよいことを明示した.なお,第2回調査の質問紙には第1回調査結果について,同意率80%を示したグラフと除外および追加した項目を明示し,協力者がこれを参考に回答ができるようにした.
5) デルファイ法を用いた第2回調査2022年1月~同年3月の期間で,第1回調査の研究協力の同意があった看護師146名宛てに第2回調査研究説明書,看護アセスメント項目(第2版)・質問紙,返信用封筒を郵送した.結果,94名(64.3%)の看護師より返送・回答が得られた.質問紙の回収後,第1回調査同様に協力者の属性は項目ごとに記述統計により算出した.アセスメント項目については,妥当性と実用性それぞれで,「4:非常にあてはまる」,「3:あてはまる」の回答数を集計し同意割合を算出した.デルファイ法の同意率についても,第1回調査と同様に80%以上に設定して,これをもって看護アセスメント項目としてコンセンサスが得られたものと判断した.
4. 倫理的配慮研究協力者には,第1回調査の依頼時に,研究協力依頼書を用いた書面を送付した.研究協力依頼書には,研究の目的,調査方法,プライバシー保護を含めた倫理的配慮とその対策,調査への参加は自由で,本調査は2回調査で行うが,第1回調査の回答後であっても辞退して問題はない,研究に協力しなくても不利益を生じない,研究結果は学会,学術雑誌へ公表することを明記した.研究協力依頼書に記載した内容を踏まえ研究協力に同意する場合,同意書に署名をし,返信用封筒で返信いただいた.質問紙は無記名での回答とし,研究協力者毎に返信用封筒を用い返送を求めた.第1回調査で返送を求めた同意書および質問紙は,別々の返信用封筒とし,研究協力者個々に研究者へ直接返送いただいた.また,封筒を開封する際,同意書と質問紙が連結し個人が特定されないように配慮をした.本研究は,武庫川女子大学(No. 21-01)の研究倫理委員会,および日本赤十字九州国際看護大学(20-021)の研究倫理審査委員会の承認を得た.
研究協力者146名の性別は女性140名(95.8%),男性6名(4.2%)で,平均年齢は37.8歳±9.0(中央値37)歳,看護師経験年数の平均は15.3 ± 8.5(中央値15)年,CD看護実践経験年数の平均は7.8 ± 6.2(中央値6)年であった.調査時点の所属は,外来が38名(26.0%),病棟が107名(73.2%),無回答1名(0.8%)であった.
看護アセスメント66項目のうち,妥当性について同意率80%未満であった項目は1項目であった(表1-1の項目No. 23)).実用性については,同意率80%未満であった項目は5項目であり(表1-1の項目No. 23),24),28),36),表1-2の項目No. 49)),うち1項目は妥当性の同意率も80%未満であった.妥当性または実用性において同意率80%未満であった5項目について,アセスメント項目から削除すべきか研究者間で検討したうえですべて削除した.また,内容が類似する1項目(表1-2の項目No. 55))および身体査定や症状アセスメントの8項目(表1-1の項目No. 15),33),表1-2の項目No. 42),46),48),56),57),61))について,セルフケアのアセスメントに特化した簡便な項目にするため,削除することにした.
デルファイ法第1回調査 診断後2年未満の成人期クローン病患者のセルフケア構築を支援する看護アセスメント項目(第1版)の同意率(1)
視点 | 分類 | No | アセスメント項目 | 妥当性 | 実用性 | 第1回調査をふまえた修正・削除 | ||||
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n | 「4:非常にあてはまる」「3:あてはまる」の回答数 | 同意率 | n | 「4:非常にあてはまる」「3:あてはまる」の回答数 | 同意率 | |||||
病識・健康管理 | 病気や治療についての理解力 | 1) | 病気について受け入れができているか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 139 | 96.5% | 「…受けいれているか」に変更 |
2) | 病気や治療に不安を感じているか | 146 | 145 | 99.3% | 144 | 142 | 98.6% | |||
3) | 自分の病変部位や合併症について理解できているか | 146 | 139 | 95.2% | 144 | 134 | 93.1% | 「…理解しているか」に変更 | ||
4) | 納得がいくかたちでの治療が実施されているか | 146 | 138 | 94.5% | 144 | 134 | 93.1% | 「…理解しているか」に変更 | ||
5) | クローン病が難治性疾患で寛解維持が重要であると理解できているか | 146 | 143 | 97.9% | 143 | 138 | 96.5% | 「…理解しているか」に変更 | ||
6) | 自分に処方されている薬剤の名称と効用を理解できているか | 146 | 139 | 95.2% | 143 | 134 | 93.7% | 「…理解しているか」に変更 | ||
7) | 治療薬の副作用について理解ができているか | 146 | 134 | 91.8% | 144 | 132 | 91.7% | 「…理解しているか」に変更 | ||
8) | 薬の服用,成分栄養剤の注入を正しい方法で実施できているか | 146 | 140 | 95.9% | 144 | 139 | 96.5% | 「…理解しているか」に変更 | ||
9) | 病気や治療の正確な情報を自ら調べることができているか | 146 | 130 | 89.0% | 144 | 121 | 84.0% | 「…自ら調べているか」に変更 | ||
治療を継続していく力 | 10) | 治療を継続していく必要性を理解できているか | 146 | 145 | 99.3% | 144 | 140 | 97.2% | 「…理解しているか」に変更 | |
11) | 治療の中断で起こりうる病状の変化を理解できているか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 132 | 91.7% | 「…理解しているか」に変更 | ||
12) | 定期的に受診する必要性を理解できているか | 146 | 146 | 100.0% | 144 | 142 | 98.6% | 「…理解しているか」に変更 | ||
13) | 治療を継続するうえで支障をきたす事柄がないか | 145 | 140 | 96.6% | 144 | 139 | 96.5% | |||
療養と生活のバランスをとる力 | 14) | 睡眠,休息の確保が寛解維持には不可欠であることを理解しているか | 146 | 137 | 93.8% | 143 | 120 | 83.9% | ||
15) | ストレスでセルフケアへの影響,体調に変化が生じていないか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 129 | 89.6% | 症状アセスメントの項目のため削除 | ||
16) | ストレスは腸管炎症の誘因になることを自覚しているか | 145 | 140 | 96.6% | 143 | 129 | 90.2% | |||
17) | ライフスタイル・ライフイベントに合った療養が実施できているか | 146 | 140 | 95.9% | 144 | 132 | 91.7% | 「…実施しているか」に変更 | ||
18) | 仕事や学業と療養を両立して症状に応じた調整をはかることができているか | 146 | 140 | 95.9% | 144 | 138 | 95.8% | 「…調整しているか」に変更 | ||
19) | セルフケアは無理がなく継続可能であるか | 146 | 140 | 95.9% | 144 | 137 | 95.1% | |||
セルフケアを主体的に行う力 | 20) | 発症前まで体調不良時はどのようなセルフケアを行っていたか | 146 | 125 | 85.6% | 142 | 117 | 82.4% | ||
21) | 自分に関心をもって主体的にセルフケアに取り組もうとしているか | 146 | 137 | 93.8% | 142 | 123 | 86.6% | |||
22) | 自分の健康・病気・治療に対する優先順位を低く設定していないか | 146 | 121 | 82.9% | 143 | 115 | 80.4% | |||
23) | 自己の存在価値や自己能力を過小評価していないか | 145 | 115 | 79.3% | 143 | 107 | 74.8% | 同意率80%未満のため削除 | ||
24) | 目標・ありたい自分を目指すには,セルフケアの微調整が必要だと認識しているか | 146 | 128 | 87.7% | 143 | 114 | 79.7% | 同意率80%未満のため削除 | ||
25) | 病気だけでなく仕事や余暇,趣味をもった生活を送っているか | 146 | 133 | 91.1% | 144 | 124 | 86.1% | |||
26) | 病気や治療の影響で楽しみ,生き甲斐,趣味に影響がでていないか | 146 | 137 | 93.8% | 143 | 128 | 89.5% | |||
27) | 困り事を自分で抱え込まず,SOSを医療者を含めた第3者に伝達することができているか | 145 | 133 | 91.7% | 142 | 130 | 91.5% | 「…伝達しているか」に変更 | ||
28) | セルフケア実践での成功・失敗体験を経験しているか | 146 | 127 | 87.0% | 144 | 113 | 78.5% | 同意率80%未満のため削除 | ||
29) | この先どのように生活していきたいのか自分の考えをもっているか | 146 | 135 | 92.5% | 143 | 119 | 83.2% | |||
30) | セルフケアの実践で,安定感・充実感を感じているか | 145 | 123 | 84.8% | 142 | 118 | 83.1% | |||
31) | 自分が利用できる就労支援に関する情報を収集しているか | 146 | 131 | 89.7% | 144 | 124 | 86.1% | |||
32) | 指定難病に関する制度を理解しているか | 146 | 139 | 95.2% | 144 | 134 | 93.1% | 「指定難病の制度だけでなく更新手続きの方法・時期を理解しているか」に変更 | ||
症状の変化に気づく力 | 33) | 患者特有の体調の変化があるか | 145 | 140 | 96.6% | 143 | 135 | 94.4% | 症状アセスメントの項目のため削除 | |
34) | 腹部症状の察知で悪化の前兆を察知できているか | 145 | 138 | 95.2% | 143 | 136 | 95.1% | 「…察知しているか」に変更 | ||
35) | 症状の変化や違和感について意識し,それに気が付くことができているか | 146 | 143 | 97.9% | 144 | 140 | 97.2% | 「…気が付いているか」に変更 | ||
36) | 自分の体調の変化を記録しているか | 145 | 128 | 88.3% | 144 | 115 | 79.9% | 同意率80%未満のため削除 | ||
37) | 独自の前兆を認識し,それを捉えようとしているか | 146 | 137 | 93.8% | 142 | 123 | 86.6% | 「独自の悪化の前兆を認識し…」に変更 | ||
症状に応じて対処する力 | 38) | 症状を察知したら食事・栄養療法の切り替えができているか | 146 | 137 | 93.8% | 144 | 133 | 92.4% | 「…切り替えをしているか」に変更 | |
39) | 症状に応じて休息をとっているか | 146 | 140 | 95.9% | 143 | 129 | 90.2% | |||
40) | 発熱・下血や肛門病変の変化で必要な受診判断ができているか | 146 | 139 | 95.2% | 144 | 136 | 94.4% | 「…受診判断をしているか」に変更 | ||
41) | 体調の変化を正確に医療者に伝えることができているか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 135 | 93.8% | 「…伝えているか」に変更 |
※網掛けにした項目は削除
デルファイ法第1回調査 診断後2年未満の成人期クローン病患者のセルフケア構築を支援する看護アセスメント項目(第1版)の同意率(2)
視点 | 分類 | No | アセスメント項目 | 妥当性 | 実用性 | 第1回調査をふまえた修正・削除 | ||||
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n | 「4:非常にあてはまる」「3:あてはまる」の回答数 | 同意率 | n | 「4:非常にあてはまる」「3:あてはまる」の回答数 | 同意率 | |||||
食事・栄養 | 脱水をきたさないように水分摂取を調整する力 | 42) | 下痢やその懸念で水分摂取を控え脱水が生じていないか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 130 | 90.3% | 症状アセスメントの項目のため削除 |
43) | 下痢の状態に応じた水分摂取ができているか | 146 | 140 | 95.9% | 144 | 133 | 92.4% | 「…水分摂取をしているか」に変更 | ||
44) | 脱水が生じやすいことを踏まえた水分摂取ができているか | 146 | 137 | 93.8% | 144 | 128 | 88.9% | 「…水分摂取をしているか」に変更 | ||
低栄養をきたさないように食事栄養療法を行う力 | 45) | 栄養状態に応じた食事栄養摂取ができているか | 146 | 137 | 93.8% | 143 | 132 | 92.3% | 「…食事栄養摂取をしているか」に変更 | |
46) | 腹痛や下痢のため食事摂取を控え低栄養を生じていないか | 146 | 136 | 93.2% | 143 | 129 | 90.2% | 症状アセスメントの項目のため削除 | ||
47) | 低栄養をきたしやすいことを踏まえた食事栄養摂取ができているか | 146 | 137 | 93.8% | 142 | 129 | 90.8% | 「…食事栄養摂取をしているか」に変更 | ||
48) | 低栄養状態から活動,生活への影響が現れていないか | 146 | 136 | 93.2% | 143 | 127 | 88.8% | 症状アセスメントの項目のため削除 | ||
49) | 1日に摂取すべきカロリーを認識できているか | 146 | 126 | 86.3% | 143 | 114 | 79.7% | 同意率80%未満のため削除 | ||
自分の病状と症状に合わせた食事栄養療法を実践する力 | 50) | 繊維や脂肪が少ない食材の選択と調理法を実践しているか | 146 | 136 | 93.2% | 142 | 125 | 88.0% | ||
51) | 外食や外出先で食事療法を実践しているか | 146 | 137 | 93.8% | 143 | 120 | 83.9% | |||
52) | 会食の場での対処法を考え,その対処について実践できているか | 146 | 136 | 93.2% | 143 | 118 | 82.5% | 「…実践しているか」に変更 | ||
53) | 体調を崩しやすい原因食品を自覚しているか | 146 | 141 | 96.6% | 143 | 133 | 93.0% | |||
54) | 自分の病態・ライフスタイルに合った食事療法が実践できているか | 146 | 142 | 97.3% | 143 | 135 | 94.4% | 「…実践しているか」に変更 | ||
55) | 症状に応じた絶食,成分栄養剤への切り替えができているか | 146 | 137 | 93.8% | 143 | 126 | 88.1% | 38)と類似,38)より実用性が低いため削除 | ||
排泄 | 排泄に伴う症状に対処する力 | 56) | 下痢や下血を起こしていないか | 146 | 144 | 98.6% | 144 | 140 | 97.2% | 症状アセスメントの項目のため削除 |
57) | 下痢や下血で生活に影響をきたしていないか | 146 | 144 | 98.6% | 144 | 138 | 95.8% | 症状アセスメントの項目のため削除 | ||
58) | 外出前に事前にトイレの場所を確認しているか | 146 | 124 | 84.9% | 144 | 117 | 81.3% | |||
59) | 便失禁を考慮して下着の替えやナプキン等を準備しているか | 146 | 126 | 86.3% | 144 | 119 | 82.6% | |||
肛門症状悪化を防ぐ力 | 60) | 肛門部の症状を自覚しているか | 146 | 142 | 97.3% | 144 | 138 | 95.8% | ||
61) | 肛門部の症状で生活に影響をきたしていないか | 146 | 141 | 96.6% | 144 | 140 | 97.2% | 症状アセスメントの項目のため削除 | ||
62) | 肛門部の清潔を保持する必要性を理解しているか | 146 | 138 | 94.5% | 144 | 135 | 93.8% | |||
63) | 下痢,便失禁による皮膚障害を予防するためのスキンケア(汚染防止と清潔保持)を行っているか | 146 | 139 | 95.2% | 144 | 127 | 88.2% | 「皮膚障害の予防に加え,悪化防止のためのスキンケア」に変更 | ||
64) | 肛門病変があっても医療者へ表出していない(伝達していない)状況がないか | 146 | 139 | 95.2% | 144 | 126 | 87.5% | |||
65) | 肛門症状を早期に察知して対処に繋いでいるか | 145 | 131 | 90.3% | 143 | 128 | 89.5% | |||
66) | 肛門科の受診とサーベイランスを定期的に受けているか | 146 | 133 | 91.1% | 144 | 127 | 88.2% |
※網掛けにした項目は削除
自由記載の回答において,指定難病に関する制度の理解(表1-1の項目No. 32))について「制度だけでなく更新手続きの方法と時期の理解を加えた方がよい」との意見があった.また,下痢や便失禁による皮膚障害を予防するためのスキンケアの実施(表1-2の項目No. 63))について「皮膚障害の予防に加え,悪化防止のためのスキンケアを含めた方がよい」との指摘があり,これらを反映した項目に修正した(表3-1の項目No. 32),表3-2の項目No. 63)).
自由記載の回答から,飲酒や喫煙を控えること,自分の検査データの把握,療養生活へのストレスやストレスへの対処,サポートしてくれる存在など計8項目をアセスメント項目として追加した(表2).第1版では,アセスメントの分類として,ストレスマネジメントや周囲のサポートが含まれていなかったため,新たに『ストレスマネジメントする力』,『ソーシャルサポートを確保する力』を設定した.
第1回調査で研究協力者による自由記載をもとに追加したアセスメント項目
追加したアセスメント項目 | 該当するアセスメント分類 | 該当する視点 |
---|---|---|
飲酒を控え,禁煙をしているか | 病気や治療についての理解力 | 病識・健康管理 |
現在の自分の検査データを把握しているか | 病気や治療についての理解力 | 病識・健康管理 |
処方された内服/点滴/注射を指示どおり服用/実施しているか | 治療を継続していく力 | 病識・健康管理 |
自分の思いを医療者に伝えられているか | 治療を継続していく力 | 病識・健康管理 |
療養生活にストレスを感じていないか | ストレスマネジメントする力 | 病識・健康管理 |
ストレスにどのように対処しているか/対処してきたか | ストレスマネジメントする力 | 病識・健康管理 |
療養生活を実質的・手段的にサポートしてくれる存在がいるか | ソーシャルサポートを確保する力 | 病識・健康管理 |
精神的な支えや相談ができる存在(同僚,家族,友人,医療者,同病者)がいるか | ソーシャルサポートを確保する力 | 病識・健康管理 |
第1回調査結果を踏まえ,[病識・健康管理]は8分類で43項目,[食事・栄養]は3分類で9項目,[排泄]は2分類で8項目,合計60項目を看護アセスメント項目(第2版)として確定し,質問紙を作成した.
2. 第2回調査研究協力者94名の性別は女性91名(96.8%),男性3名(3.2%)で,平均年齢は38.7 ± 8.7(中央値38)歳,看護師経験年数の平均は15.5 ± 8.5(中央値15)年,CD看護実践経験年数の平均は8.9 ± 6.5(中央値7)年であった.調査時点の所属は,外来が30名(31.9%),病棟が64名(68.1%)であった.
第2回調査の結果,看護アセスメント60項目すべてにおいて,妥当性と実用性いずれも同意率80%以上であった(表3-1,3-2).
デルファイ法第2回調査を踏まえ確定した診断後2年未満の成人期クローン病患者のセルフケア構築を支援する看護アセスメント項目(1)
視点 | 分類 | No | アセスメント項目 | 妥当性 | 実用性 | アセスメント項目の修正・統合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | 「非常にあてはまる」「あてはまる」の回答数 | 同意率 | n | 「非常にあてはまる」「あてはまる」の回答数 | 同意率 | ||||||
自分の病気・治療・社会資源についての関心と理解 | 自分の病気や治療への関心 | 9) | (1) | 病気や治療の正確な情報の主体的な収集 | 93 | 83 | 89.2% | 94 | 83 | 88.3% | |
追加 | (2) | 現在の自分の検査データの把握 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 89 | 94.7% | |||
自分の病気や治療についての理解 | 3) | (3) | 自分の病変部位や合併症についての理解 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 92 | 97.9% | ||
5) | (4) | クローン病が難治性疾患で寛解維持が重要であることへの理解 | 92 | 91 | 98.9% | 94 | 93 | 98.9% | |||
6) | (5) | 自分に処方されている薬剤の名称と効用の理解 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
7) | (6) | 治療薬の副作用についての理解 | 94 | 90 | 95.7% | 94 | 91 | 96.8% | |||
10) | (7) | 治療を継続していく必要性の理解 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 92 | 97.9% | |||
11) | (8) | 治療の中断で起こりうる病状の変化についての理解 | 94 | 91 | 96.8% | 94 | 92 | 97.9% | |||
12) | (9) | 定期的に受診する必要性の理解 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 93 | 98.9% | |||
14) | (10) | 睡眠,休息の確保が寛解維持には不可欠であることの理解 | 94 | 88 | 93.6% | 94 | 90 | 95.7% | |||
利用できる社会資源の把握 | 31) | (11) | 自分が利用できる就労支援に関する情報収集 | 94 | 91 | 96.8% | 94 | 85 | 90.4% | ||
32) | (12) | 指定難病に関する制度,更新手続きの方法と時期の理解 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 87 | 92.6% | |||
病気の受け止めとセルフケアの目標 | 病気の受け止め | 1) | (13) | 病気についての受け止め | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 92 | 97.9% | |
2) | (14) | 病気や治療に関する不安 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 94 | 100.0% | |||
4) | (15) | 治療についての受け止め | 93 | 91 | 97.8% | 94 | 94 | 100.0% | |||
健康に対する価値 | 20) | (16) | 発症前の体調不良時におけるセルフケアの実施状況 | 94 | 83 | 88.3% | 94 | 80 | 85.1% | ||
22) | (17) | 自分の健康・病気・治療に対する優先順位の設定 | 94 | 90 | 95.7% | 93 | 85 | 91.4% | |||
患者の望みや目標 | 25) | (18) | 病気だけでなく,仕事や余暇,趣味を含めた生活状況 | 93 | 90 | 96.8% | 94 | 86 | 91.5% | ||
26) | (19) | 病気や治療が楽しみ,生き甲斐,趣味に及ぼす影響 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 88 | 93.6% | |||
29) | (20) | この先どのように生活していきたいのかの考え | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 90 | 95.7% | |||
30) | (21) | セルフケア実践による安定感と充実感の実感 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 84 | 89.4% | |||
ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践 | 自主的な療養の実践 | 追加 | (22) | 飲酒と禁煙の実施状況 | 94 | 85 | 90.4% | 94 | 88 | 93.6% | |
追加 | (23) | 処方された内服/成分栄養剤/点滴・注射の服用/投与状況 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 92 | 97.9% | 8)『薬の服用,成分栄養剤の注入について正しい方法で実施できているか』を統合 | ||
21) | (24) | 自分に関心をもった主体的なセルフケアの実施状況 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 92 | 97.9% | |||
ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの調整 | 17) | (25) | ライフスタイル・ライフイベントに合った療養の実施状況 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 91 | 96.8% | ||
18) | (26) | 仕事や学業と療養との調整 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
51) | (27) | 外食や外出先での食事療法の実施状況 | 94 | 89 | 94.7% | 94 | 85 | 90.4% | |||
52) | (28) | 会食の場での対処法の実施状況 | 94 | 89 | 94.7% | 94 | 87 | 92.6% | |||
無理なく継続できるセルフケア | 13) | (29) | 治療を継続するうえで支障をきたす事柄 | 93 | 91 | 97.8% | 94 | 92 | 97.9% | ||
19) | (30) | 無理がなく継続可能なセルフケアの実施状況 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 92 | 97.9% |
デルファイ法第2回調査を踏まえ確定した診断後2年未満の成人期クローン病患者のセルフケア構築を支援する看護アセスメント項目(2)
視点 | 分類 | No | アセスメント項目 | 妥当性 | 実用性 | アセスメント項目の修正・統合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | 「非常にあてはまる」「あてはまる」の回答数 | 同意率 | n | 「非常にあてはまる」「あてはまる」の回答数 | 同意率 | ||||||
病状に応じたセルフケアの実践 | 悪化する前兆の察知 | 35) | (31) | 腹部と肛門症状の変化や違和感から悪化の前兆を察知 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 94 | 100.0% | 34)『腹部症状の察知で悪化の前兆を察知できているか』,60)『肛門部の症状を自覚しているか』を統合 |
37) | (32) | 独自の悪化の前兆の認識,それを捉えようとする姿勢 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
病状に応じた食事とトイレの調整 | 38) | (33) | 症状察知からの食事・栄養療法への切り替え | 93 | 92 | 98.9% | 94 | 90 | 95.7% | ||
39) | (34) | 症状に応じた休息の確保 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 93 | 98.9% | |||
43) | (35) | 下痢の状態に応じた水分摂取状況 | 94 | 91 | 96.8% | 94 | 90 | 95.7% | |||
44) | (36) | 脱水が生じやすいことを踏まえた水分摂取の状況 | 94 | 89 | 94.7% | 94 | 91 | 96.8% | |||
45) | (37) | 栄養状態に応じた食事栄養摂取の状況 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 88 | 93.6% | |||
47) | (38) | 低栄養をきたしやすいことを踏まえた食事栄養摂取の状況 | 94 | 90 | 95.7% | 94 | 87 | 92.6% | |||
50) | (39) | 繊維や脂肪が少ない食材の選択と調理法の実施状況 | 94 | 92 | 97.9% | 94 | 89 | 94.7% | |||
53) | (40) | 体調を崩しやすい原因食品の認識 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
54) | (41) | 自分の病態・ライフスタイルに合った食事療法の実施状況 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
58) | (42) | 外出前のトイレの場所の確認 | 94 | 88 | 93.6% | 94 | 87 | 92.6% | |||
肛門部の清潔保持 | 59) | (43) | 便失禁に備えた下着の替えやナプキン等の準備 | 94 | 88 | 93.6% | 94 | 86 | 91.5% | ||
62) | (44) | 肛門部の清潔を保持する必要性の理解 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 92 | 97.9% | |||
63) | (45) | 下痢,便失禁による皮膚障害の予防・悪化防止のためのスキンケアの実施状況 | 94 | 94 | 100.0% | 94 | 91 | 96.8% | |||
肛門科の定期受診 | 66) | (46) | 定期的な肛門科の受診とサーベイランスの受療状況 | 94 | 88 | 93.6% | 94 | 90 | 95.7% | ||
適切な受診判断 | 40) | (47) | 発熱・下血や肛門病変の変化に応じた受診判断 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 92 | 97.9% | 65)『肛門症状を早期に察知して対処に繋いでいるか』を統合 | |
64) | (48) | 肛門病変についての医療者への表出状況 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |||
ストレスの認知と対処 | ストレスの認知 | 16) | (49) | 腸管炎症の誘因としてのストレスの認識 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 91 | 96.8% | |
追加 | (50) | 療養生活におけるストレスの認識 | 94 | 89 | 94.7% | 94 | 90 | 95.7% | |||
ストレスへの対処 | 追加 | (51) | ストレスへの対処の実践状況/これまで行ってきた対処経験 | 94 | 90 | 95.7% | 94 | 91 | 96.8% | ||
27) | (52) | 困り事を自分で抱え込まず,医療者を含めた第3者にSOSを伝達する状況 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 93 | 98.9% | |||
周囲からのサポート | 困った時の相談相手/同病者との繋がり | 追加 | (53) | 自分の思いを医療者に伝達する状況 | 94 | 91 | 96.8% | 94 | 89 | 94.7% | |
41) | (54) | 医療者に体調の変化を正確に伝達する状況 | 93 | 93 | 100.0% | 94 | 93 | 98.9% | |||
追加 | (55) | 精神的な支えや相談できる存在(同僚,家族,友人,医療者,同病者) | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 93 | 98.9% | |||
家族のサポート | 追加 | (56) | 療養生活を実質的・手段的にサポートしてくれる存在 | 94 | 93 | 98.9% | 94 | 94 | 100.0% |
第2回調査の結果を踏まえ,看護アセスメント(第2版)の視点,分類および項目について,項目作成方針に則り研究者間で最終検討を行った.結果,以下の3点について修正を行うことにした.1点目は,[病識・健康管理]の視点には8分類,43項目が含まれ,アセスメントを行う看護師から視点,分類,項目の間の了解可能性を得るには課題があると考えた.また,第1回調査の回答を踏まえ追加したストレスマネジメントやソーシャルサポートについて,視点として表現した方が,了解可能性が高まると考えた.そのため,看護師への面接調査から抽出されたセルフケア支援において必要となる看護アセスメントの視点(山本・布谷,2022),[自分の病気・治療・社会資源についての関心と理解],[病気の受け止めとセルフケアの目標],[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践],[病状に応じたセルフケアの実践],[ストレスの認知と対処],[周囲からのサポート]をアセスメントの視点とした.2点目は分類について,上記の視点の修正を踏まえ再検討した.看護師の了解可能性を考慮して分類名を『~力』の表現に統一していたが,単に患者のセルフケア能力を査定するものと捉えられる恐れがあると考え,内容妥当性を確認したうえで上記の看護師への面接調査から抽出されたサブカテゴリーに修正することにした.これを踏まえ,該当する60項目を新たに設定した視点と分類に基づき,配置し直した.3点目は項目について,《しているか》の文末表現が目立ち,個々の患者のセルフケアの実践を《している》,《していない》の二分で評価するかたちになるため,患者の多様なセルフケア状況をアセスメントできるように体言止めの表現に修正することにした.この他,類似する項目について統合し表現を修正した.
以上を踏まえ,[自分の病気・治療・社会資源についての関心と理解]は3分類で12項目,[病気の受け止めとセルフケアの目標]は3分類で9項目,[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践]は3分類で9項目,[病状に応じたセルフケアの実践]は5分類で18項目,[ストレスの認知と対処]は2分類で4項目,[周囲からのサポート]は2分類で4項目,合計56項目を確定した看護アセスメント項目とした(表3-1,3-2).
デルファイ法による調査の参加人数について,研究目的やデータ収集期間を考慮した人数に設定する必要性は示されているが,確立したエビデンスは示されていない(Keeney et al., 2006).本研究では最終段階である第2回調査で50名を大幅に超える94名の看護師から回答が得られた.また,デルファイ法を用いた調査では専門家集団のサンプリングが重要視されるが,本研究の第1回,2回調査ともに研究協力者の看護師経験年数の平均は15(中央値15)年を超えており,CD看護実践経験年数の平均についても7.8(中央値6)年と8.9(中央値7)年であった.Benner(2001/2005)は中堅レベルの看護師について,同系の診療科で3~5年経験すると,患者の全体像を把握できると述べている.本調査回答者のCD患者への看護実践経験年数の平均値および中央値はこれを超えており,CD患者の看護を実践する集団であったと考える.一方で,第1回,2回の調査ともにCD患者への看護実践経験年数が3年に満たない看護師が複数名いた.本研究では,全国的にCDの専門医療機関が少なく,エキスパートといわれる看護師を選定することが困難な状況であるため,経験年数よりもCD患者への看護実践について経験のある多くの看護師から回答を得ることを優先させた.結果,CD患者が数多く受診する医療施設に勤務する多数の看護師による回答を得ることができた.CD患者が数多く受診する医療施設では,看護師はCD患者に関わる機会が多く,日常的にCD患者のセルフケアに関するアセスメントを実施していると推察でき,そのアセスメントの視点が本調査の回答に反映されていると考える.
2. 看護アセスメント項目の妥当性確定した看護アセスメント項目(以下,本項目)は個々の患者の病状やライフスタイル・ライフイベントに応じたセルフケアの実践,病気・治療・社会資源についての関心と理解だけでなく,病気の受け止めとセルフケアの目標,ストレスの認知と対処,周囲からのサポートといった心理社会的側面を含め幅広いアセスメント項目を網羅している.アセスメント項目は,第2回調査で56項目すべての妥当性について88%以上の高い同意を得た.
本庄(2015)は,日本の文化的背景を反映させた慢性疾患をもつ人のセルフケア能力を測る質問紙Self-Care Agency Questionnaire(以下,SCAQ)を開発した.SCAQには,「健康のために気をつけていること」,「健康のために選んでいること」,「体調を整えること」,「生活の中で続けること」,「支援してくれる人をもつこと」の5つの構成概念があり,これを念頭に看護師は患者と対話しながらセルフケアの状況を捉えてケアに繋ぐ.「健康のために気をつけていること」は本項目の[自分の病気・治療・社会資源についての関心と理解]の『自分の病気や治療への関心』,『自分の病気や治療についての理解』,[症状に応じたセルフケアの実践]の『悪化する前兆の察知』に対応すると考える.「健康のために選んでいること」は本項目の[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践]の『自主的な療養の実践』に対応すると考える.「体調を整えること」は本項目の[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践]の『ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの調整』,[病状に応じたセルフケアの実践]の『病状に応じた食事とトイレの調整』,[ストレスの認知と対処]に対応すると考える.「生活の中で続けること」は本項目の[ライフスタイル・ライフイベントに合わせたセルフケアの実践]の『無理なく継続できるセルフケア』に対応すると考える.「支援してくれる人をもつこと」は本項目の[周囲からのサポート]が対応すると考える.したがって,慢性疾患をもつ人のセルフケア能力を測る質問紙との比較においても本項目は妥当であるといえる.
SCAQは慢性疾患患者に広く活用されるため,慢性疾患に共通する項目で構成されており,CD患者特有の成分栄養剤摂取や肛門部の症状マネジメントやスキンケア,ストレスへの対処に関する項目は含まれていない.また,SCAQには含まれていないが,本項目に含まれる分類として『利用できる社会資源の把握』,『病気の受け止め』,『健康に対する価値』,『患者の望みや目標』があった.本邦には難病患者に対する就労支援や指定難病制度があり,CDは対象疾患となるが,制度を利用するには患者による申請および更新が原則とされる.『利用できる社会資源の把握』には,就労支援や指定難病制度の更新手続きの理解状況をアセスメントする項目が含まれ,診断後2年未満の患者が制度を理解したうえで手続きを行い,サービスや医療受給ができる支援に繋ぐ必要があるため,重要なアセスメントといえる.診断後1~2年未満の時期にあるCD患者は病状が安定せず,抑うつや心理的に不安定な状態をきたしやすく(Choi et al., 2019),こうした状況にある場合,患者は主体的にセルフケアの実践に取り組むことは難しい.『病気の受け止め』には,患者の病気や治療の受け止めと不安が含まれており,診断初期の患者の場合,優先的に実施すべきアセスメントであると考える.『健康に対する価値』には,診断前の患者のセルフケア状況や,就学・就労と治療・療養の優先順位の設定をアセスメントする項目が含まれ,成人期としての役割を担って責任を負う特徴(Levinson, 1978/1992)を反映したアセスメントといえる.『患者の望みや目標』には,ありたい姿を患者がどのように捉えるのかが含まれており,病気とともに生きる自己を捉えアイデンティティを発達,再構成するか(清水,2008)に関わり,ありたい自分を実現するための主体的な取り組みや,安定感,充実感を目指したセルフケアを構築する支援において重視すべきアセスメントであると考える.
3. 看護アセスメント項目の実用性本項目は,第2回調査で56項目すべての実用性について85%以上の高い同意を得た.川島ら(2020)は看護アセスメントでは,「看護師が患者との対話を通して情報収集し,有効な情報かどうかの確認を繰り返すなかで見きわめ,推論していく能力を発揮する必要がある」と述べている.本項目は,《腹部と肛門症状の変化や違和感から悪化の前兆を察知》のように,看護師が患者とのコミュニケーションや問診を通してセルフケアの状況を的確に捉えるために必要な内容を含んでおり,実用性があると考える.
第1回調査で削除された《自己の存在価値や自己能力を過小評価していないか》は唯一妥当性,実用性ともに同意率80%未満となったアセスメント項目であった.同意率が低かった理由として,患者が自分の存在や能力を過小評価しているかについて,どのように情報収集し分析をするのか具体性がなく実用的ではないと判断されたと考える.《目標・ありたい自分を目指すには,セルフケアの微調整が必要だと認識しているか》,《セルフケア実践での成功・失敗体験を経験しているか》の項目は,いずれも実用性の同意率が80%未満であった.診断後1~2年未満の時期にある患者では病気や治療に関する不安を感じやすく心情が揺れ動く時期であり(Lynch & Spence, 2008),目標やありたい自分を思い描くことは難しく,セルフケアの成功・失敗体験の経験が乏しいことが想定される.そのため妥当性はあるが,実用性に乏しいという判断が得られたと考える.《自分の体調の変化を記録しているか》,《1日に摂取すべきカロリーを認識できているか》の項目についても,実用性の同意率が80%未満であった.体調や症状についてCD患者が手帳や日記に記録し,これをもとに看護師がセルフケア支援に繋いだ報告はあるが(Kim et al., 2018),本項目(第1版)では単純に体調の変化を記録しているか否かを捉えるに留まっており,食事栄養療法においては必要なカロリーの認識よりも脂質や食物繊維など食事内容の認識と摂取状況を捉える方が臨床において実用性が高いと判断されたのではないかと考える.
本項目には患者のセルフケア状況を包括的に捉えるための内容が網羅されており,患者と対話しながらアセスメント項目を確認し,現時点の実践状況や課題,課題が生じている理由,強化した方がよいところを確認できる.これにより,患者の療養行動の問題にだけ注視せず,実践できているところや強みを捉えポジティブフィードバックを行い,患者の自信に繋げることができれば,強化が必要なセルフケアへの波及効果も期待できる.また,本項目を活用することで指導型のセルフケア支援でなく,個々の患者の『病気の受け止め』や『患者の望みや目標』を踏まえた支援が実現でき,ひいてはセルフケアの構築に繋がると考える.診断初期の患者では病気や治療を踏まえた生活や将来像のイメージをもちにくく,どうありたいかの言語化が難しいことが考えられる.そのため,本項目を用い,現在の生活状況を確認し,徐々にこの先の生活に関する話題へ進めていく対話が可能であると考える.
本項目をセルフケア支援において活用することで,複数の看護師が患者を担当したとしても一貫したアセスメントがなされ,シームレスな支援が可能になると考える.看護師が捉えた情報を看護記録やカンファレンスで共有する際,アセスメントの視点・項目が共通しているため,情報の整理や把握がスムーズで,看護の方向性の共通認識が図れ,連携が強化できる.また,具体的なアセスメント項目を設定しているため,支援前後の患者のセルフケア状況の変化を捉えられ,看護支援の評価に活用できる.
本研究では全国のCD専門医が所属する41施設に調査を実施したが,関東や関西を中心とした都市部に位置するCD患者が数多く受診する医療施設が主であり,都市部の地域特性が回答に影響している可能性がある.また,第1,2回調査ともにCD患者への看護実践経験年数が3年に満たない看護師が含まれており,デルファイ法を用いた専門家集団による評価には一部限界があったといえる.今後,医療施設の地域特性や看護師の経験年数を考慮して調査を継続し,アセスメント項目をさらに洗練する必要がある.
本項目の外来や病棟における活用の具体的な検証はできていない.診断後2年未満の成人期CD患者に対し,本項目から支援に繋ぐためのプロトコルを作成するとともにフォーマットの作成について検討が必要である.また,実際に項目を用いて患者へのセルフケア支援を行った看護師に有効性や活用上の課題について調査し,臨床での実用化に向けた検証が必要である.
付記:本論文は,KYの令和4年度武庫川女子大学大学院看護学研究科看護学専攻の博士論文の一部を加筆修正したものであり,第17回日本慢性看護学会学術集会にて一部を発表した.
謝辞:本研究の遂行にあたり,ご協力を頂きました看護師の皆さまに心より感謝申し上げます.なお,本研究はJSPS科研費20K10800の助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:KYおよびMNは研究の着想,デザインに貢献;KYはデータ収集・分析,原稿の作成;MNは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.