目的:コロナ禍でNICU・GCUに入院した児の入院中と退院後1か月の母親のストレスと望む支援を明らかにする.
方法:母親を対象に児の退院時と退院1か月後に質問紙調査を行った.SF-8,STAI,対児感情尺度の入院中と退院後1か月の比較はWilcoxonの符合付順位検定,母親のストレッサー・看護師に望む支援は質的に分析した.
結果:対象者は20名であった.母親は入院中には【コロナ禍での面会制限】等に,退院後1か月には【対応が困難な啼泣】等にストレスを感じ,入院中は【面会の確保】等,退院後は【退院後も寄り添い続ける,相談相手・支援者であること】を看護師に望んでいた.身体的健康,接近得点は退院後1か月に有意に上昇した.STAIには変化を認めなかったが,不安に関連したストレッサーは入院中,退院後1か月共に抽出された.
結論:母親のストレスにはコロナ禍が影響しており,児の理解・家族役割の変化への適応を促す介入,継続看護の重要性が示唆された.
Objective: This study aimed to clarify the stress and desired support of mothers with infants hospitalized in a neonatal intensive care unit (NICU) or growing care unit (GCU) during hospitalization and for 1 month after discharge.
Methods: A survey of mothers, which used self-reported questionnaires, was conducted at discharge and 1 month later. SF-8, STAI, Hanazawa’s Feelings toward Baby Scale, stressors, and desired support were included. The results were then analyzed using the Wilcoxon signed-rank test, and mothers’ descriptions were analyzed via qualitative analysis.
Results: We included 20 mothers. When their infants were hospitalized in an NICU/GCU, their stress was from “restricted visitation due to the Covid-19 pandemic. ” After discharge, their stress was from “difficulty in reacting to their baby’s cry.” When their infants were hospitalized in the NICU/GCU, they wanted to “secure visitation.” After discharge, they wanted a nurse “to be a consultant and supporter who remains close to them after discharge from the hospital.” The Physical Component Summary from the SF-8 and the scores from Hanazawa’s Feelings toward Baby Scale at 1 month after discharge were significantly higher than those at hospitalization. No significant change in STAI was observed, but stressors related to anxiety were found both at hospitalization and after discharge.
Conclusion: The stress of mothers was affected by the Covid-19 pandemic. Thus, providing support to mothers is necessary to help them understand their babies and adapt to their changing family roles. Additionally, care for mothers should continue after discharge.
厚生労働省の医療施設調査によると,NICUの年間患者延べ数は平成29年には7万人を超え,増加傾向にあり,GCUでは6万人台で推移している(総務省統計局,2019).
現代の母親は,産後の生理的変化による身体的・心理的な影響に加え,核家族化(厚生労働省,2020)や男性の育児休業取得者の少なさ(厚生労働省,2021)による支援者の不足等,多くのストレスを抱えている.児がNICU・GCUに入院している母親には,さらに,児に対する罪悪感,児の将来への不安,医療従事者への不満等があることが報告されている(市川ら,2021;石森ら,2019).
ストレスとは,ある出来事をストレスフルであると認知し反応する過程であり,ストレス反応の刺激因子としてのストレッサーと,それにより身体面・心理面に引き起こされる様々なストレス反応である(Lazarus & Folkman, 1984/1991).先行研究によると,育児ストレスとQOLに負の相関がある(大橋ら,2012)こと,心理的ストレスと不安が関連している(肥田野ら,2000;岩本ら,1989)こと,うつ状態が対児感情と関連している(佐藤ら,2006)ことが明らかとなっており,ストレスへの適切な対処は,母親が身体的・心理的状態を健全に維持するために重要である.
ストレスに対しての母親への支援については,多様な媒体での客観的な情報提供を行うこと(糸井ら,2019)や,母親役割を発揮する場面作り(中澤ら,2006)の必要性が示唆されているが,母親が看護師に望む支援を調査した研究は見られない.
新型コロナウイルス感染症の流行下(以下,コロナ禍)で,NICU・GCUの面会制限が全く設けられていない施設は4.4%,対面での面会が可能な施設であっても,その75%でなんらかの制限があり(蟻川ら,2022),児がNICU・GCUに入院する母親のストレスの増大が危惧される.
また,通常,NICU・GCU退院後の初回外来受診は,1か月後に設定されることが多く,この1か月間は,母親自身が児の状態を初めて判断していく期間となる.医療機関から離れてコロナ禍で育児を開始することで,母親はさらに多様なストレッサーを認知することが予想されるが,母親のストレス内容や思いについて退院後も継続して調査した研究は見られない.入院中,退院後1か月の母親のストレスと看護師に望む支援を明らかにすることは,母親のニーズに合った看護の提供を可能にし,NICU・GCUから在宅への継続看護につながると考える.
本研究の目的は,コロナ禍でNICU・GCUに入院した児の入院中,退院後1か月の母親のストレスと看護師に望む支援を明らかにすることである.
本研究で用いるストレスとは,母親が認知するストレッサーと,その結果引き起こされるストレス反応とした.ストレッサーは「母親がストレスを感じた内容」の自由記載から抽出し,ストレス反応は,先行文献(肥田野ら,2000;岩本ら,1989;大橋ら,2012;佐藤ら,2006)を検討し,身体的・心理的側面の評価として健康関連QOL,心理的側面の評価として対象者自身の感情を示すSTAI,児に対する対象者の感情を示す対児感情に着目した.
自己記入式質問紙による調査研究
2. 研究対象者対象者は,NICU・GCUに入院した児の退院の目処が立っている,20歳以上45歳未満の健康(産後の経過が順調)な母親で,研究協力が得られた30名とした.児の主治医が不適切と判断する者,精神疾患を有する者,児が多胎であった者,児が他病棟での治療が必要となった者は除外した.なお,対象者数は,検定力分析ソフトG*Power3.1.9.7(Windows10)を用いて,α = 0.05,効果量0.8,検定力0.8として事前の検定力分析を行い,検定に必要なサンプル数が15と算出されたため,脱落率を考慮し,30名とした.
3. データ収集方法対象者には,退院時調査(同意取得時から退院後1週間以内の回答を求める)と,退院1か月後調査(退院1か月後から1週間以内の回答を求める)の2種類の自己記入式質問紙を配布し,無記名での回答,返送を依頼した.退院時調査では,児が入院中のストレス,退院1か月後調査では,児が退院から1か月後までのストレスを把握した.データ収集期間は2021年8月~2022年1月である.
4. 調査内容 1) 基本属性 (1) 退院時調査年齢,児の出生時体重・在胎週数,NICU・GCU入院期間,児の出生順位,家族構成,同居家族の人数,居住場所,経済的な暮らし向き,相談相手の有無と関係を,単一回答法または自由回答法で回答を求めた.
(2) 退院1か月後調査相談相手の有無と関係を,単一回答法で回答を求めた.
2) 母親のストレス反応健康関連QOL,不安,児に対する感情について,退院時調査,退院1か月後調査で回答を求めた.
(1) 健康関連QOL(HRQOL: Health Related Quality of Life)SF-8(SF8 Health Survey)スタンダード版を用いた.SF-8は,SF-36(SF36 Health Survey)の短縮版であり,健康関連QOLを測定するための信頼性,妥当性のある包括的尺度である.健康の8領域について1項目ずつの質問で測定でき,Web版スコアリングプログラムを使用し,2つのサマリースコア(身体的健康,精神的健康)を算出する.SF-36の身体的健康を最もよく予測するSF-8の項目は,SF-36の身体的健康をあらわす下位尺度(身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み)と対応する項目であり,SF-36の精神的健康を最もよく予測するSF-8の項目は,SF-36の精神的健康をあらわす下位尺度(心の健康,日常役割機能(精神),社会生活機能)と対応する項目である.スタンダード版の振り返り期間は過去1か月とされている(福原・鈴鴨,2004).
(2) 不安STAI(新版STAI状態・特性不安検査[Form-JYZ])を用いた.STAIは,状態不安尺度,特性不安尺度各20項目から構成され,尺度得点を算出する.状態不安尺度は“今まさに,どのように感じているか”を評価する,不安を喚起する事象に対する一過性の状況反応を,特性不安尺度は不安体験に対する比較的安定した反応傾向を査定する.信頼性,妥当性のある指標である(肥田野ら,2000).状態不安を適切に測定でき,信頼できる結果であるかを判断するために,退院時調査,退院1か月後調査ともに,状態不安と同時に特性不安を調査した.
(3) 児に対する感情対児感情尺度を用いた.対児感情尺度は,花沢(1992年)によって作成された,信頼性,妥当性のある指標である.乳児に対して大人が抱く感情を肯定的側面(接近感情)と否定的側面(回避感情)の2側面から測定する.子どもを肯定し受容する感情を示す14の形容詞から構成される接近項目と,否定する感情を示す14の回避項目から構成される.回答を得点化し,接近得点と回避得点,拮抗指数が求められる(花沢,1992;松井,2001).
3) 母親のストレッサーと看護師に望む支援 (1) 退院時調査児がNICU・GCU入院中に母親がストレスを感じた内容と,看護師に望む支援について,それぞれ自由記載で回答を求めた.
(2) 退院1か月後調査児がNICU・GCU退院から退院1か月後までに母親がストレスを感じた内容と,看護師に望む支援について,それぞれ自由記載で回答を求めた.
5. データ分析方法自己記入式質問紙で得られたデータは基本統計量を算出し,入院中と退院後1か月のSF-8,STAI,対児感情尺度の比較はWilcoxonの符号付順位検定を行った.また,SF-8のサマリースコアを1標本のt検定を用いて日本国民標準値(30~39歳 女性)と比較した.統計ソフトはSPSS Statistics22を使用し,有意水準は5%とした.自由記載で得られた情報は,可能な限り研究対象者が表現した記述を使用してコード化し,退院時調査,退院1か月後調査のコードを総合して相違点,共通点を比較し,時期別に分類した.コードが集まったものに名前を付けてサブカテゴリーとし,サブカテゴリーをまとめてカテゴリーを生成した.分析結果は,質的研究の経験を持つ研究者間で検討を繰り返し,信頼性と妥当性を高めた.
6. 倫理的配慮本研究は,京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号ERB-E-484,ERB-E-484-1).研究協力が得られた病院の病院長,看護部長に研究協力を依頼し,了承を得た上で,対象者の選定をNICUの医師と看護師長に依頼した.対象者には,研究担当者が研究の趣旨,自由意思での参加であること,研究に不参加であっても不利益を被ることはないこと等を説明し書面による同意を得た.
本研究の対象施設は総合周産期母子センター1施設であった.平常時は,父親,母親共に自由に面会が可能であったが,研究期間中は,対面で原則1週間に3回,1回あたり1時間まで,母親のみに制限されていた.データ収集期間中に対象施設のNICU・GCUから退院(転棟含む)した新生児・乳児は59名,対象者として基準を満たした母親は32名,そのうち29名から研究への参加の同意が得られた.退院時調査および退院1か月後調査の両方に回答が得られた26名(回収率89.7%)のうち,無回答または重複回答の項目があった6名を除く20名(有効回答76.9%)を分析の対象とした.
1. 対象者の属性(表1)対象者の平均年齢は,34.5(SD = 3.62)歳であった.児の出生時体重の平均値は2,798.5(SD = 555.36)g,児の出生時の在胎週数の平均値は37.2(SD = 3.00)週,NICU・GCU入院期間の平均値は22.5(SD = 18.62)日であった.
n = 20
| 項目 | min | max | median | mean ± SD | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対象者の年齢(歳) | 34.5 ± 3.62 | ||||||||
| 児の出生時体重(g) | 1,232 | 3,529 | 2,890.0 | 2,798.5 ± 555.36 | |||||
| 児の出生時在胎週数(週) | 28 | 41 | 38.0 | 37.2 ± 3.00 | |||||
| 児のNICU・GCU入院期間(日) | 4 | 71 | 17.5 | 22.5 ± 18.62 | |||||
| 項目 | 人数 | % | 項目 | 入院中 | 退院後1か月 | ||||
| 人数 | % | 人数 | % | ||||||
| 児の出生順位 | 相談相手 | なし | 0 | 0.0 | 0 | 0.0 | |||
| 第1子 | 14 | 70.0 | あり | 20 | 100.0 | 20 | 100.0 | ||
| 第2子 | 3 | 15.0 | 関係※1 | 配偶者 | 19 | 95.0 | 19 | 95.0 | |
| 第3子 | 2 | 10.0 | 実母・実父 | 17 | 85.0 | 18 | 90.0 | ||
| 第4子 | 1 | 5.0 | 義母・義父 | 6 | 30.0 | 6 | 30.0 | ||
| 家族構成 | 実の兄弟姉妹 | 10 | 50.0 | 9 | 45.0 | ||||
| 夫婦と子供 | 19 | 95.0 | 義兄弟姉妹 | 3 | 15.0 | 3 | 15.0 | ||
| 親と夫婦と子供 | 1 | 5.0 | 息子・娘 | 0 | 0.0 | 0 | 0.0 | ||
| 同居家族の人数(入院していた児を含む) | 同僚 | 3 | 15.0 | 1 | 5.0 | ||||
| 3人 | 14 | 70.0 | 友人 | 10 | 50.0 | 13 | 65.0 | ||
| 4人 | 3 | 15.0 | 医師 | 0 | 0.0 | 1 | 5.0 | ||
| 5人 | 1 | 5.0 | 看護師 | 0 | 0.0 | 0 | 0.0 | ||
| 6人 | 1 | 5.0 | 助産院の助産師 | 0 | 0.0 | 1 | 5.0 | ||
| 7人 | 1 | 5.0 | 職場の上司 | 0 | 0.0 | 1 | 5.0 | ||
| 居住場所 | ※1:複数回答 | ||||||||
| 市内 | 14 | 70.0 | |||||||
| 市外 | 4 | 20.0 | |||||||
| 近畿圏 | 0 | 0.0 | |||||||
| その他 | 2 | 10.0 | |||||||
| 経済的な暮らし向き | |||||||||
| 苦しい | 0 | 0.0 | |||||||
| やや苦しい | 1 | 5.0 | |||||||
| ふつう | 15 | 75.0 | |||||||
| やや余裕 | 4 | 20.0 | |||||||
| 余裕 | 0 | 0.0 | |||||||
児の出生順位は,第1子が14名(70.0%)であった.NICU・GCUに入院していた児を含む同居家族は,3人が14名(70.0%)であり,家族構成は夫婦と子供の核家族が19名(95.0%)であった.相談相手は,入院中,退院後1か月共に全員がいると回答していた.
2. 母親のストレス反応(表2) 1) HRQOL身体的健康は入院中の中央値が41.2,退院後1か月の中央値が44.7であり,共に日本国民標準値(30~39歳 女性)と比べて有意に低かった(それぞれp < .001,p = .001).また,入院中と比べて退院後1か月の得点が有意に上昇していた(p = .010).精神的健康は入院中の中央値が44.9,退院後1か月の中央値が45.4であり,有意な変化は認められなかった.
n = 20
| 尺度 | 項目 | 日本国民基準値(女性) | 入院中 | p値* | 退院後1か月 | p値** | p値*** |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| median | median | ||||||
| SF-8 | 身体的健康 | 49.76 | 41.2 | <.001 | 44.7 | .001 | .010 |
| 精神的健康 | 47.34 | 44.9 | .264 | 45.4 | .246 | .970 | |
| STAI | 特性不安標準得点 | ― | 45.0 | ― | 46.5 | ― | .948 |
| 状態不安標準得点 | ― | 47.0 | ― | 43.5 | ― | .137 | |
| 対児感情尺度 | 接近得点 | ― | 26.5 | ― | 28.5 | ― | .002 |
| 回避得点 | ― | 5.5 | ― | 7.5 | ― | .287 | |
| 拮抗指数 | ― | 22.6 | ― | 27.1 | ― | .881 |
* 1標本のt検定(日本国民基準値,入院中)
** 1標本のt検定(日本国民基準値,退院後1か月)
*** Wilcoxonの符合付順位検定(入院中,退院後1か月)
特性不安得点は入院中の中央値が45.0,退院後1か月の中央値が46.5,状態不安得点は,入院中の中央値が47.0,退院後1か月の中央値が43.5であり,いずれも入院中と退院後1か月で有意な変化は認められなかった.
3) 児に対する感情接近得点は,入院中の中央値が26.5点,退院後1か月の中央値が28.5点であり,入院中に比べて退院後1か月の得点が有意に上昇していた(p = .002).回避得点は入院中の中央値が5.5点,退院後1か月の中央値が7.5点,拮抗指数は入院中の中央値が22.6点,退院後1か月の中央値が27.1点であり,いずれも有意な変化は認められなかった.
3. 児がNICU・GCU入院中の,母親のストレッサーと看護師に望む支援(表3)児がNICU・GCU入院中の母親のストレッサーは,5つのカテゴリー,12のサブカテゴリー,38コードであり,母親が看護師に望む支援は,5つのカテゴリー,10のサブカテゴリー,32コードであった.なお,カテゴリーは【 】,サブカテゴリーは[ ],コードは「 」で示す.
| 項目 | カテゴリー | サブカテゴリー | コード |
|---|---|---|---|
| 母親のストレッサー | コロナ禍での面会制限 | 母親以外の家族が児に会える機会の喪失 | ・面会制限により,家族が生まれてすぐの子どもに会えなかった |
| ・一日一日成長する様子が自分以外わからなかったことがとても残念 | |||
| ・面会制限により児を配偶者や他の子どもたちに会わせられない | |||
| ・父親が面会できずかわいそうだった | |||
| 児に会えない間の寂しさ・心配・不安 | ・面会が毎日できなかったこともあり,何かあったらと思うとすごく心配 | ||
| ・夜間を中心に会えない時間の状況が知りたい 分からないことが不安 | |||
| ・面会の機会が少なかった | |||
| ・コロナで面会が制限されていて寂しい | |||
| 退院後の育児への心配 | ・産まれてから退院まで限られた時間しか子どもとの接触がなく,退院後,何も分かっていない状態で子育てできるのか心配で仕方なかった | ||
| 児の状態と今後の見通しの不透明さ | 児の状態や治療についての心配・不安 | ・病気が完治するのか不安 | |
| ・すぐに退院できるだろうと言われていたが長くなり,心配や不安が日々強くなった | |||
| ・子どもの状態が安定しているかどうか不安 | |||
| ・子どもの状態についての心配・不安 | |||
| ・合併症への不安 | |||
| ・検査結果を待つ間,どのような結果になるか不安 | |||
| ・体重がなかなか増えない | |||
| ・授乳中に徐脈を起こした時,初めてのことで,焦り,落ち込んだ | |||
| ・子どもに何か問題が出たらどうしようという心配 | |||
| ・1つ解決しても,他の問題が出てきて子供が無事なのか不安が尽きなかった | |||
| 児の治療の見通しが立たないことへの心配・不安 | ・先のことが分からず不安 | ||
| ・いつ退院できるかなかなか見通しが立たなかった | |||
| ・いつ退院できるかわからない不安 | |||
| ・今後の治療についての心配,不安 | |||
| ・次の検査(数か月先)を受けるまで,その間中ずっと子供の状態が不安 | |||
| 家族役割の変化への適応の困難さ | 母親役割を果たせていないという自己嫌悪 | ・育児に全然関われておらず,母親なのに何もできていないという自己嫌悪 | |
| ・面会制限で大切な新生児期の成長を毎日見ることができなかった | |||
| ・自宅での搾乳が精神的に苦痛で虚しくなった | |||
| 父親役割獲得の困難さ | ・退院まで抱っこもできず,夫に父親としての自覚が芽生えにくかった | ||
| ・配偶者が思うように動いてくれない | |||
| 児と児の同胞との関係性への不安 | ・他の子どもたち(同胞)が騒がしく,退院してきて大丈夫か,怪我をさせないか不安 | ||
| 医療者の連携不足や説明不足 | 医療者間の連携不足が招く疲労や不満 | ・医療者間の情報連携不足により,繰り返し同じ話をしたり,相談をしなければならなかった | |
| ・主治医に確認しておくと言われた後,返事がもらえなかった | |||
| 医療者からの説明の機会の不足が招く現状の把握のし辛さ | ・子どもの状況の説明が少なく,状況や見込みが把握できなかった | ||
| 児への罪悪感 | 育児が十分にできない自責の念 | ・自分の産後の痛みで余裕がなくなる | |
| ・自分の体調不良で面会が思うようにできなかった | |||
| ・搾乳のため睡眠不足で常に眠い | |||
| ・児が入院中に自分自身が救急搬送され,今後同じことが起こったらどうしようか不安になった | |||
| 早産となったことへの罪悪感 | ・自分自身の疾患・治療のために早産となり申し訳ない気持ち | ||
| 看護師に望む支援 | 面会の確保 | 面会時間の確保 | ・医療者から話を聞く時間は面会とは別にあると良い |
| 家族が面会可能となる方法の提案 | ・入院中に窓越しにでも他の家族に児の顔を見せられると良い | ||
| ・母親だけでなく父親も面会させて欲しかった | |||
| 児の情報の提供 | 随時の補足説明 | ・医師に会えないことも多いので,看護師からも病状説明を聞けると良い | |
| ・不安になる事の説明だけされると,こちらも気持ちを保つのが難しくなってしまうので,医師の説明の補足みたいな事をしてもらえると安心する | |||
| ・細かな病状説明をしてもらえると安心できる | |||
| ・児の様子を伝えて欲しい | |||
| ・子どもに起こりうる可能性のある事は,事前に想定できる範囲で教えておいて欲しい | |||
| ・治療や数値のこと等は難しく,すぐに理解ができないため,家族にも伝えやすいよう書面で説明して欲しい | |||
| 面会時以外の児の情報の提供 | ・毎日数枚でもいいので写真を撮って欲しかった | ||
| ・退院後の子どもとの生活も想像しやすいかなと思うので,子どもの様子(特に夜間や面会時間外などの)を詳しく教えてもらえると会えていない間のイメージもわくので嬉しい | |||
| ・会えない分,毎日の電話で,児の様子を細かく伝えて欲しい | |||
| ・子どものささいな様子も教えて欲しい | |||
| ・入院中の児の様子を教えてもらえると安心できる | |||
| ・限られた面会時間で得られる情報は限定的なので,日々の児の様子がもう少し詳しくわかると嬉しい | |||
| ・情報提供 | |||
| 退院後に必要となる知識や技術を,両親が習得できる支援 | 疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導 | ・夜間に児がぐっすり寝てくれるアドバイス | |
| ・NICU・GCUに入院していた児の母親向けに,もう少し子育てに関する支援をして欲しい | |||
| ・児の状態をふまえた退院後の育児への助言が欲しい | |||
| ・入院中に退院後の対処など話が聞ける時間があると嬉しい | |||
| 授乳指導 | ・授乳の指導をして欲しい | ||
| ・入院中にもっと授乳指導を受けたかった | |||
| ・入院中に授乳についてもう少しケアして欲しい | |||
| 父親の育児技術習得への援助 | ・夫にもミルクの作り方,授乳方法,沐浴,あやし方等を指導して欲しかった | ||
| ・入院中,母親の育児指導だけでなく父親にも育児指導を行い父性の目覚めに繋げて欲しかった(自分も育児の中心人物だと気づかせてほしい) | |||
| 母親への気遣い | あたたかい対応 | ・子どものことだけでなく,母の気持ちを傾聴する機会があるとありがたい | |
| ・気になることはないかと声かけして欲しい | |||
| ・面会の時にあたたかく接してもらえるので癒やされる | |||
| ・母親の体調,疼痛コントロール | |||
| 児を尊重する関わり | ・子どものことをかわいがってくれて大事にしてもらえるのが一番嬉しい | ||
| 医療者間の連携の中心的役割 | 医療者間の連携の中心的役割 | ・申し送りを徹底して,コミュニケーションを密に図り,同じことを何度も話さなくて良いようにして欲しい | |
| ・必要に応じて医師との連携をとり,疑問や不安を取り除いて欲しい |
【コロナ禍での面会制限】【児の状態と今後の見通しの不透明さ】【家族役割の変化への適応の困難さ】【医療者の連携不足や説明不足】【児への罪悪感】の5つのカテゴリーが抽出された.
【コロナ禍での面会制限】は[母親以外の家族が児に会える機会の喪失][児に会えない間の寂しさ・心配・不安][退院後の育児への心配]の3つのサブカテゴリーから構成された.[母親以外の家族が児に会える機会の喪失]は「面会制限により,家族が生まれてすぐの子どもに会えなかった」等,[児に会えない間の寂しさ・心配・不安]は「面会が毎日できなかったこともあり,何かあったらと思うとすごく心配」等,特別な環境下のために児に自由に会うことができずに募る思いが記されていた.[退院後の育児への心配]は「産まれてから退院まで限られた時間しか子どもとの接触がなく,退院後,何も分かっていない状態で子育てできるのか心配で仕方なかった」ことが記されていた.
【児の状態と今後の見通しの不透明さ】は[児の状態や治療についての心配・不安][児の治療の見通しが立たないことへの心配・不安]の2つのサブカテゴリーから構成された.[児の状態や治療についての心配・不安]は「病気が完治するのか不安」等,[児の治療の見通しが立たないことへの心配・不安]は「先のことが分からず不安」等が記されていた.
【家族役割の変化への適応の困難さ】は[母親役割を果たせていないという自己嫌悪][父親役割獲得の困難さ][児と児の同胞との関係性への不安]の3つのサブカテゴリーから構成された.[母親役割を果たせていないという自己嫌悪]は「育児に全然関われておらず,母親なのに何もできていないという自己嫌悪」等,母親としての無力さが記されており,[父親役割獲得の困難さ]は「退院まで抱っこもできず,夫に父親としての自覚が芽生えにくかった」等,父性の育成不足について記されていた.
【医療者の連携不足や説明不足】は[医療者間の連携不足が招く疲労や不満][医療者からの説明の機会の不足が招く現状の把握のし辛さ]の2つのサブカテゴリーから構成された.[医療者間の連携不足が招く疲労や不満]は「医療者間の情報連携不足により,繰り返し同じ話をしたり,相談をしなければならなかった」等,[医療者からの説明の機会の不足が招く現状の把握のし辛さ]は「子どもの状況の説明が少なく,状況や見込みが把握できなかった」ことが記されていた.
【児への罪悪感】は[育児が十分にできない自責の念][早産となったことへの罪悪感]の2つのサブカテゴリーから構成された.[育児が十分にできない自責の念]は「自分の産後の痛みで余裕がなくなる」等,自身の体調不良がもたらす児への影響が記されていた.
2) 母親が看護師に望む支援【面会の確保】【児の情報の提供】【退院後に必要となる知識や技術を,両親が習得できる支援】【母親への気遣い】【医療者間の連携の中心的役割】の5つのカテゴリーが抽出された.
【面会の確保】は[面会時間の確保][家族が面会可能となる方法の提案]の2つのサブカテゴリーから構成された.[面会時間の確保]では「医療者から話を聞く時間は面会とは別にあると良い」との希望があり,[家族が面会可能となる方法の提案]は「入院中に窓越しにでも他の家族に児の顔を見せられると良い」等,母親以外の家族が面会するための具体的な方法が提案されていた.
【児の情報の提供】は[随時の補足説明][面会時以外の児の情報の提供]の2つのサブカテゴリーから構成された.[随時の補足説明]は「医師に会えないことも多いので,看護師からも病状説明を聞けると良い」等,[面会時以外の児の情報の提供]は「毎日数枚でもいいので写真を撮って欲しかった」等,会えない時間の児の状態を母親が知るための具体的な方法が提案されていた.
【退院後に必要となる知識や技術を,両親が習得できる支援】は[疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導][授乳指導][父親の育児技術習得への援助]の3つのサブカテゴリーから構成された.[疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導]では「児の状態をふまえた退院後の育児への助言が欲しい」等,[父親の育児技術習得への援助]では「夫にもミルクの作り方,授乳方法,沐浴,あやし方等を指導して欲しかった」等,父親がスムーズに育児参加できるための支援を求めていた.
【母親への気遣い】は[あたたかい対応][児を尊重する関わり]の2つのサブカテゴリーから構成された.[あたたかい対応]は「子どものことだけでなく,母の気持ちを傾聴する機会があるとありがたい」等,看護師からのねぎらいの声掛けが母親の支えになることが記されていた.[児を尊重する関わり]は「子どものことをかわいがってくれて大事にしてもらえるのが一番嬉しい」と,児の尊厳を尊重した看護師の対応が母親に安心感を与えることが記されていた.
【医療者間の連携の中心的役割】は[医療者間の連携の中心的役割]のサブカテゴリーから構成され,「申し送りを徹底して,コミュニケーションを密に図り,同じことを何度も話さなくて良いようにして欲しい」等,医療者間の情報共有と母親への情報提供のタイミングが母親のストレスに大きく関わることが記されていた.
4. 児がNICU・GCU退院後1か月の,母親のストレッサーと看護師に望む支援(表4)児がNICU・GCU退院後1か月の母親のストレッサーは,6つのカテゴリー,13のサブカテゴリー,35のコードであり,母親が看護師に望む支援は1つのカテゴリー,3つのサブカテゴリー,9つのコードであった.
| 項目 | カテゴリー | サブカテゴリー | コード |
|---|---|---|---|
| 母親のストレッサー | 対応が困難な啼泣 | 止まない啼泣 | ・夕方から夜にかけて,何をしても泣き続ける |
| ・泣いている理由が分からない時 | |||
| ・日中よく泣いてなかなか泣きやまないこと | |||
| ・なぜ啼泣しているか分からない時がある | |||
| ・授乳,おむつ交換など全部したのにずっと泣き続けている時 | |||
| ・ミルクもオムツもかえているのに,ずっと泣き続けて眠ってくれなかった時 | |||
| 啼泣が疾患に障るという緊張感 | ・疾患に障るので,泣かせすぎないようにしないといけない | ||
| ・ほとんど機嫌の良い時間帯がない | |||
| ・機嫌良く過ごせる時間がほとんどなく心配になった | |||
| 見通しの不透明さ | 今後の見通しへの漠然とした不安 | ・病気に関して先行きが見えない漠然とした不安がある | |
| ・将来への不安 | |||
| 退院後も続く感染防止のための行動制限 | ・感染症にかからないよう人と会うことに制限が必要 | ||
| 児の症状への判断,対処への迷い | 順調かどうか自分で判断できないこと | ・何の知識もない素人の私の判断で1ヶ月も過ごさないといけないのかと恐くなった | |
| ・疾患の状態が定期検診まで分からない | |||
| ・体重の増減が定期検診まで分からない | |||
| 児の症状への対処法が分からないこと | ・児の排便が4日間なかった時 | ||
| ・嘔吐が多く不安になった | |||
| 家族役割の再構築 | 家事・育児の負担の家族内での偏り | ・配偶者が協力的でなく,家事,育児ともにほとんどのことを自身が行っている | |
| ・朝,家事(洗濯物,掃除)が思うようにできない時 | |||
| ・育児について配偶者の協力を得られない時がある | |||
| 一時的な家族構成での生活 | ・里帰り期間中,親類が子どもをかわいがり抱っこをするため,自分自身が子どもを抱っこできなかった | ||
| 児の同胞との関係性への懸念 | ・自身と児の同胞との関わりが十分確保できない | ||
| ・児の兄弟の激しいごっこ遊びや大声 | |||
| 母親自身の疲労 | 睡眠不足 | ・睡眠不足により,精神的に下向きになりがち | |
| ・自身の寝不足 | |||
| ・身体が休まらない | |||
| ・日中ずっと寝て,夜中頻回に起きたり,昼夜逆転生活が続いた,子供に合わせた睡眠のリズム | |||
| ・ずっと泣き続けて眠ってくれなかった時,自分も寝不足になって辛かった | |||
| 自身の健康状態への不安 | ・自分の病気で体力が落ちていて,育児での疲労感が強く,そんな自分に悲しくなる | ||
| 育児の困難さ | 育児への自信喪失 | ・育児が思うようにいかない | |
| ・自分の抱っこよりも実母の抱っこで泣き止んだこと | |||
| 授乳に関する困難 | ・授乳が上手にできない | ||
| ・母乳が難しく,ミルクに切り替えたこと | |||
| ・直接授乳が上手く進まない | |||
| ・自身の病気で授乳ができず,完全人工乳である | |||
| 看護師に望む支援 | 退院後も寄り添い続ける,相談相手・支援者であること | 看護師が相談できる存在であり続けること | ・退院してしまうと,看護師は途端に遠い存在になってしまうので,相談に乗ってくれる立場でいて欲しい |
| ・退院後の児の様子を話せる機会があると嬉しい | |||
| ・自分だけじゃないと思えるよう,話を聞いて欲しい | |||
| ・話を聞いて欲しい | |||
| ・育児について相談にのって欲しい | |||
| 疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導の継続 | ・泣き止むコツを教えて欲しい | ||
| ・母乳やミルクの量がこれでいいのか,アドバイスが欲しい | |||
| ・どれくらいで便秘なのか,便秘の時の対処法を教えて欲しい(綿棒刺激で出ない) | |||
| 母親への精神的支援 | ・母親に疾患がある場合の通院治療時の精神的支援 |
【対応が困難な啼泣】【見通しの不透明さ】【児の症状への判断,対処への迷い】【家族役割の再構築】【母親自身の疲労】【育児の困難さ】の6つのカテゴリーが抽出された.
【対応が困難な啼泣】は[止まない啼泣][啼泣が疾患に障るという緊張感]の2つのサブカテゴリーから構成された.[止まない啼泣]は「夕方から夜にかけて,何をしても泣き続ける」等,[啼泣が疾患に障るという緊張感]は「疾患に障るので,泣かせすぎないようにしないといけない」等が記されていた.
【見通しの不透明さ】は[今後の見通しへの漠然とした不安][退院後も続く感染防止のための行動制限]の2つのサブカテゴリーから構成された.[今後の見通しへの漠然とした不安]は「病気に関して先行きが見えない漠然とした不安がある」等,[退院後も続く感染防止のための行動制限]は「感染症にかからないよう人と会うことに制限が必要」であるように,感染症への配慮から退院後も引き続き行動の制限が必要となる苦悩が記されていた.
【児の症状への判断,対処への迷い】は[順調かどうか自分で判断できないこと][児の症状への対処法が分からないこと]の2つのサブカテゴリーから構成された.[順調かどうか自分で判断できないこと]は「何の知識もない素人の私の判断で1ヶ月も過ごさないといけないのかと恐くなった」等,[児の症状への対処法が分からないこと]は「児の排便が4日間なかった時」等,児に起こる日々の変化をどのように判断し対処すれば良いか分からない現状が記されていた.
【家族役割の再構築】は[家事・育児の負担の家族内での偏り][一時的な家族構成での生活][児の同胞との関係性への懸念]の3つのサブカテゴリーから構成された.[家事・育児の負担の家族内での偏り]は「配偶者が協力的でなく,家事,育児ともにほとんどのことを自身が行っている」等,変化した生活に合わせて家族が役割を再構築していく途上での悩みが示されていた.
【母親自身の疲労】は[睡眠不足][自身の健康状態への不安]の2つのサブカテゴリーから構成された.[睡眠不足]は「睡眠不足により,精神的に下向きになりがち」等,睡眠不足が母親の身体的・精神的不調の一因であることが記されていた.
【育児の困難さ】は[育児への自信喪失][授乳に関する困難]の2つのサブカテゴリーから構成された.[育児への自信喪失]は,「育児が思うようにいかない」等,理想と現実のギャップへの苦悩が記されていた.
2) 母親が看護師に望む支援【退院後も寄り添い続ける,相談相手・支援者であること】が抽出され,[看護師が相談できる存在であり続けること][疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導の継続][母親への精神的支援]の3つのサブカテゴリーから構成された.[看護師が相談できる存在であり続けること]は「退院してしまうと,看護師は途端に遠い存在になってしまうので,相談に乗ってくれる立場でいて欲しい」等,[疾患に関連した症状への判断と対処法の助言と指導の継続]は「どれくらいで便秘なのか,便秘の時の対処法を教えて欲しい」等,児の症状の緊急性を正しく判断し,対応できる知識や技術を入院中から退院後まで継続して助言,指導を受けられることを求めていた.
NICU・GCUに入院した児の本調査の母親は,入院中,退院後1か月共に全員が相談相手を得られたとしており,核家族化やコロナ禍で里帰り出産や他者との接触が懸念される中でも障壁が少ない集団であった可能性がある.しかし,保健医療関係者の相談相手はおらず,専門的な助言が受けられなかったことがストレスに影響した可能性もある.
母親の健康関連QOLについて,身体的健康は,入院中には陣痛,会陰切開創の疼痛等,出産に伴う疼痛が認められていたが,退院後1か月には疼痛が軽減することで,身体的健康の得点が上昇した可能性がある.しかしながら,身体的健康は入院中と比較し,退院後1か月では上昇したものの,同年代の同性の日本国民標準値と比較すると低値である.入院中には搾乳による睡眠不足,退院後1か月には自身の[睡眠不足]や児の育児・家事に伴う身体的疲労を自覚しており,身体的健康には産後の疼痛のみならず,睡眠不足や身体的疲労が影響している可能性がある.また,瀬戸らは母子分離状態にある母親の思いは,出産直後は母親自身の身体的なニーズに向けられ,母親自身のニーズが満たされると母親の関心は自分自身から児へと移る(瀬戸ら,2009)と述べている.このことから,健康関連QOLの精神的健康は,入院中,退院後1か月では,まだ母親自身の身体的な側面に関心が向いていたため,変化を認めなかった可能性がある.
状態不安は,入院中と退院後1か月では変化が認められなかったが,ストレッサーに関する自由記載からは,入院中,退院後1か月共に,不安と関連するカテゴリーが抽出されており,不安は入院中から退院後1か月まで継続していたと推察される.不安の内容は,入院中,退院後1か月で異なり,入院中は【児の状態と今後の見通しの不透明さ】をストレスに思いながらも,児に会えないことや罪悪感,医療者への不満といった母親自身が中心の感情が多いが,退院後1か月には,【見通しの不透明さ】へのストレスを持続して持ちながらも,児の症状への対処や啼泣の対応,授乳の難しさ等,児に関する不安が大きく入院中よりも内容がより具体的である.不安の内容は時期によって異なり,不安に対する介入は,入院中には思いの傾聴,退院後には具体的な問題を抽出し,それぞれが解決できる助言が必要とされ,入院中から少なくとも退院1か月後まで継続して行う必要があると考えられる.
次に,母親の児に対する感情について,花沢は,乳児との接触が少ない群と比較し,多い群では接近感情が有意に高得点であった(花沢,1992)と述べている.今回の調査期間中,面会制限によりNICU・GCUに入院している期間の母子分離状態はさらに助長され,平常時よりも児との接触経験が少なかったが,退院後には母親は,児との接触が増加し,児と共に過ごせないことでの心配や不安が解消されたため,肯定的感情が高められたと考えられる.
2. 児がNICU・GCU入院中の母親のストレスと看護師に望む支援コロナ禍前の研究において,児がNICUに入院している間に母親は,児に対する罪悪感,児の将来への不安,わが子への申し訳なさ,医療者への不満等の思いがあった(市川ら,2021;石森ら,2019)ことが報告されている.コロナ禍で行った本研究でも類似したストレッサーが抽出されたが,それぞれのカテゴリーはコロナ禍の実情を包含しており,【コロナ禍での面会制限】は本研究特有のものであった.[母親役割を果たせていないという自己嫌悪][父親役割獲得の困難さ]をはじめとする【家族役割の変化への適応の困難さ】にも,面会制限により児との関わりが少なかったことが影響したと考える.コロナ禍では,オンライン面会を導入し,我が子のかわいさ,自分の子としての実感,児の世話への自信等につながり,愛着形成に効果があった(安川,2022)との報告がある.この取り組みは,児の理解や役割に関するストレスを軽減できる可能性がある.
看護師の支援については,児がNICUを退院する母親に対して,入院中には母親の言動を受け止め個別性のある退院指導の実施や退院後の生活がイメージできるように支援する(北村ら,2022)ことや,NICUからGCUへ移動時にはNICUとGCUで連携を図ることが重要(中田・黒田,2017)だと述べられている.また,糸井は,NICU入院児の両親には,看護師の主観的な情報提供だけでなく,多様な媒体での客観的な情報提供を行う必要性を示しており(糸井ら,2019),本研究でも類似したカテゴリーが抽出されたが,【面会の確保】はコロナ禍特有のカテゴリーであったと考える.【面会の確保】を行うことは母親が児の情報を得ることにつながると考えるが,今回の調査期間ではコロナ禍であることが加わり,面会が制限されたことで児の情報が十分に得られなかったことから,母親の児の理解を促す支援の必要性が特に増していると考える.具体的には,児の病状,児の様子,起こりうる可能性のあること,[面会時以外の児の情報提供]を,母親が望む時にはいつでも電話で伝えられるようにし,面会時には写真や書面等の媒体を活用した情報提供が望まれる.また,[父親の育児技術習得への援助]に対しては,面会制限下では,オンライン面会を活用して父親に育児技術の指導を行うことも有効だと考える.
3. 児がNICU・GCU退院後1か月の母親のストレスと看護師に望む支援低出生体重児の母親は,児が退院から初回外来受診までに,過敏性や睡眠への対処が困難との思い等を持っていた(増井・市江,2019)ことや,NICU退院後6か月までに,子どもとの生活に対しての不安,授乳に関する不安等(北村ら,2022)があることが報告されている.今回,児がNICU・GCU退院後1か月の母親のストレッサーは,いずれも先行研究と類似したカテゴリーが抽出されたが,【対応が困難な啼泣】が9コードから構成されており面会制限により,啼泣する児に直面し,対応する経験が少ないことも要因となり,退院後の大きなストレスになったと考える.また,今回の研究では,入院中,退院後1か月共に全員に相談相手が存在していたことから,育児支援も得られている対象者がほとんどであったと考えられたが,そのような中でも,[育児・家事の負担の家族内での偏り]があり,育児や家事の負担がストレスになっている現状が明らかとなった.コロナ禍前には,親同士で悩みを共有し,育児や医療ケアについてNICU・GCU看護師や助産師に相談する機会の提供を目的としたベビーマッサージ教室(八尾ら,2016),退院後1週間前後での電話訪問(中川ら,2012)を行っている施設があったことが報告されている.このようなケアで児への対応や役割についての相談ができていたと考えるが,コロナ禍では感染リスクや医療の逼迫により実施が困難となった可能性がある.【コロナ禍での面会制限】や【家族役割の変化への適応の困難さ】等の入院中のストレスが,【児の症状への判断,対処への迷い】や【家族役割の再構築】等の退院後のストレスに影響していると考えられ,入院中から実施する母親へのストレスの軽減,退院後の児の状態を見越した育児指導が,母親の退院後のストレスを軽減させる可能性がある.
4. 児がNICU・GCUに入院した母親への継続した支援2017年の母子保健法の改正に伴い,子育て世代包括支援センターの設置が促進されており,妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援が広がっている.児がNICU・GCUに入院した母親が,【退院後も寄り添い続ける,相談相手・支援者であること】を看護師に望んでいることからも,母親への継続した支援の必要性が明確となった.本研究結果から,少なくとも退院1か月後までは支援が必要だと示唆される.退院前にNICU・GCU看護師が入院施設の地域連携室と協働して地域の担当保健師へ情報提供を行い,ケアを継続していくと共に,コロナ禍前からも実施されている電話訪問やベビーマッサージ教室のような保健医療関係者やNICU・GCUを退院した他の児の母親と関われる場の提供が望まれる.また,看護師は具体的なストレス内容を聞き,抽出された問題を解決できるよう助言ができる必要がある.
5. 本研究の限界と今後の課題本研究は一施設での,コロナ禍による様々な制限下での調査であっため一般化することは難しい.また,児の入院日数に差があり,対象者の児の状態,退院後の育児や医療的ケアの有無を含む療養にも差があったことが推測される.今後は,研究対象者を増やし母親のストレスを分析していくことが望まれる.
コロナ禍でNICU・GCUに入院した児の母親の,入院中・退院後1か月のストレス,看護師に望む支援を調査した結果,以下のことが明らかとなった.
1.児がNICU・GCU入院中の母親のストレスは【コロナ禍での面会制限】【児の状態と今後の見通しの不透明さ】【家族役割の変化への適応の困難さ】【医療者の連携不足や説明不足】【児への罪悪感】がストレッサーとなり引き起こされていた.また,児がNICU・GCU退院後1か月の母親のストレスは【対応が困難な啼泣】【見通しの不透明さ】【児の症状への判断,対処への迷い】【家族役割の再構築】【母親自身の疲労】【育児の困難さ】がストレッサーとなり引き起こされていた.
2.母親の身体的ストレス反応の指標であるSF-8の身体的健康の得点は,入院中と比較し,退院後1か月に有意に上昇した.
3.母親の心理的ストレス反応の指標であるSTAIの状態不安の得点は,変化を認めなかったが,対児感情尺度の接近得点は入院中と比較し,退院後1か月に有意に上昇した.
4.母親が看護師に望む支援は,児がNICU・GCU入院中は【面会の確保】【児の情報の提供】【退院後に必要となる知識や技術を,両親が習得できる支援】【母親への気遣い】【医療者間の連携の中心的役割】であり,児がNICU・GCU退院後1か月は【退院後も寄り添い続ける,相談相手・支援者であること】であった.
付記:本研究は,京都府立医科大学大学院保健看護学研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.本論文の一部は,第42回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究にあたり,研究へのご協力を頂きました対象者の方々と研究協力施設の皆様に心より感謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:堀元綾乃は研究計画からデータ収集,分析の実施および原稿の作成;室田昌子は研究プロセス全体の助言および分析の実施,原稿への助言;岩脇陽子は研究プロセス全体への助言および原稿への助言;山本容子は分析の実施および原稿への助言,全ての著者は最終原稿を読み,承認した.