日本看護科学会誌
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ISSN-L : 0287-5330
原著
ジェネラリスト・ナースの卓越した看護実践とその獲得に至る背景
―患者のニーズに応えられたという手応えのある経験のインタビューから
川端 京子池田 真理
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2024 年 44 巻 p. 397-407

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Abstract

目的:卓越した看護実践を行うジェネラリスト・ナース(ハイパフォーマー)の看護実践内容とその獲得に至る背景を明らかにする.

方法:所属長の推薦があった16名に半構造化面接を実施し,継続比較分析及び質的内容分析を行った.

結果:【タイミングを図って患者・家族に意図的に介入する】【やり取りを通して患者が納得して主体的に取り組める姿勢を引き出す】など看護実践7カテゴリが生成された.また〔患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる〕など獲得背景5コアカテゴリが生成された.

結論:看護実践すべてのカテゴリに〔患者の生活に寄り添い希望を叶える〕獲得背景のコアカテゴリが関連した.実践の背景として患者を思う気持ちは不可欠であると考える.また卓越した看護実践のカテゴリに関連する獲得背景のコアカテゴリは複数あったことから,ハイパフォーマーの経験の多様性が示唆された.

Translated Abstract

Aim: To identify excellent nursing practice and its background factors associated with acquisition of excellent nursing practice by focusing on generalist nurses practicing excellence (high performers).

Methods: Department heads recommended 16 high performers for the study. Semi-structured interviews were conducted, and continuous comparative and qualitative content analyses were conducted.

Results: Seven categories of excellent nursing practice were generated: “intervening intentionally with the patient/family at the right time,” “through dialogue, the patient is convinced and the patient’s attitude becomes proactive” and so on. Five categories of background factors were found; “valuing being close to the patient’s life and fulfilling their wishes leads to action” and so on.

Conclusion: The all categories of excellent nursing practice were related to the core category of background factors of valuing being close to the patient’s life and fulfilling their wishes. Therefore, expressing feelings for patients/families is essential in supporting these practices. Moreover, multiple core categories of background factors were associated with outstanding nursing practice, suggesting that high performers have diverse experiences.

Ⅰ. 緒言

少子高齢化の進展および疾病構造の変化に伴い,高度医療の推進,看護の専門性が追及され,特定分野において専門性を発揮できるスペシャリスト育成のための教育や資格認定制度の仕組みは確立されている(日本看護協会,2007).臨床における看護師の大多数はジェネラリスト・ナース(ジェネラリスト)であり,日本の看護の質はスペシャリストだけではなくジェネラリストの果たす役割や能力に委ねられているとも言われている(下平,2006).ジェネラリストとは,特定の専門あるいは看護分野にかかわらず,どのような対象者に対しても経験と継続教育によって習得した多くの暗黙知に基づき,その場に応じた知識・技術・能力を発揮できる者と定義されている(日本看護協会,2007).ジェネラリストの育成についてはそれぞれの施設において独自の工夫がなされ,様々な領域の医療・看護を経験できる機会を取り入れたジェネラリストのための現任教育システムを構築している施設もある(秋山,2021).看護師は継続的専門能力開発を重視し,それが専門性と生涯学習の基本であり,患者ケアの水準を向上させる上で重要であると認識している(Mlambo et al., 2021).

一方で,研修が業務時間内に行われない,業務が多忙,育児中などの理由から研修に参加しないジェネラリストの存在(山本ら,2022)や仕事と家庭のバランスの困難さが能力開発への障壁となっている(Yu et al., 2022).そして,クリニカルラダーの到達目標の多くは10年以下であり,ジェネラリストを育成する取り組みとしては,10 年以上の中堅看護師の継続教育には課題が残るとの指摘もある(戸塚・佐藤,2018).さらに,キャリア発達におけるプラトー現象はキャリア中期にある看護職者が直面する課題とされている(辻ら,2007).また,業務の過密化や単純化による刺激の減少,他者からのフィードバックの減少などが停滞の要因とされている(関,2015).

このような課題を持ちつつも,臨床における中心的な存在であるジェネラリストは質の高い看護を提供していると推測される.高い成果を生み出している人の行動特性をあらわすコンピテンシーという概念はMcClelland(1973)によって提唱され,Spencer & Spencer(1993/2011)は20項目からなるコンピテンシーの分類を行っている.看護師の能力をコンピテンシーという概念で把握し評価する研究は数多くされている(細田ら,2011林ら,2014細田ら,2016林ら,2017).林ら(2017)は卓越した看護実践を行っているジェネラリスト(以下,ハイパフォーマー)のコンピテンシーを明らかしている.しかし,優れた看護実践ができるようになった背景については明らかにされていない.

Mezirow(1991)は,成人の学習とはある経験の意味を新しく解釈したり,修正したりして,認識,感情,行動の指針として活用するプロセスであると述べている.ハイパフォーマーを成人学習者として捉えこれまでの経験に着目することで,優れた看護実践につながった背景がどのようなものであるのかが理解できるのではないかと考える.山本(2018)は,当事者自身は看護実践を無意識的に行っている場合があるとし,経験を語ることで実践の意識化につながると述べている.したがって,ハイパフォーマーとして経験から得られ習得した学びは看護実践のスキルとして語り表現することが可能と考える.そこで本研究は,患者のニーズに応えられたという手応えのある経験の語りから,優れた看護実践とその獲得に至る背景について明らかにすることを目的とした.

Ⅱ. 研究方法

1. 研究デザイン

本研究は,質的記述的研究である.

2. 用語の定義

1) ハイパフォーマー

Ericssonはある領域で非常に高いレベルのパフォーマンスを達成するためには,10年の準備期間が必要であることを「The 10-Year Rule」(10年ルール)として述べている(Ericsson, 1996)ことから,看護実践経験10年以上で,管理者,専門看護師,認定看護師でないスタッフ看護師で,卓越した看護実践を行い,成果を生み出しているジェネラリストのこととする.成果とは,患者家族の奥深いニーズまで探求し尊重した関わりによってそのニーズに応えることである.

ハイパフォーマー像として,先行研究(林ら,2017)を参考に,次の3点を定義する.

(1)患者や家族の真のニーズを理解でき,ルーチンな関わりでなくその患者に適した創造的な関わりができる

(2)自分を取り巻く他者との関係性を意識的に構築し,効果的に活用できる

(3)具体的成果を生み出すためにリーダーシップや教育的な関わりが取れる

2) 獲得背景

ハイパフォーマーが卓越した看護実践ができるようになるまでにどういった要因があったかについて,当事者が認識している事柄で,言語化されたものとする.

3. 対象

対象者は急性期一般病棟(精神,小児,産科,手術室,緩和,救急,集中治療室を除く)に所属するハイパフォーマーとした.ハイパフォーマーの3点の基準に該当し,所属長より推薦があり同意が得られた者を対象とした.

4. データ収集方法

1) データ収集開始までの手続き

機縁法で紹介され,研究協力への同意が得られた関東,関西圏にある約300~1,000床規模の施設にて実施した.用語の定義にあるハイパフォーマーの基準3点を示し,所属長に該当者の推薦及び研究説明書の配布を依頼した.研究協力への意思表明が得られた者に対して,研究趣旨への同意を得たうえでインタビューを実施した.

2) データ収集期間

データ収集は,2019年5月から2020年1月に行った.

3) データ収集

半構造化面接を1回約60分,プライバシーを確保するため個室で実施した.インタビューの内容を深めることを目的に2回実施した.あらかじめ事例を想起できるようインタビューガイドを事前に対象者に提示した.

インタビューガイドは以下の通りである.

(i)これまでの看護実践において,患者のニーズに応えられたという手応えがある経験について具体的にお話しください.

(ii)(i)の看護実践を行えたのはどうしてだと思いますか.

5. データ分析方法

対象者の同意を得てインタビュー内容はICレコーダーにて録音を行い,逐語録を作成した.データ分析は卓越した看護実践および獲得背景のそれぞれで行った.卓越した看護実践については,継続的比較分析法を使用して以下の手続きで進めた.作成したインタビューの逐語録からハイパフォーマーの卓越した看護実践について抽出し,コード化を行った.コードの意味内容の類似性を検討しデータをグルーピングし,抽象度を上げサブカテゴリとした.さらに,サブカテゴリの類似性を検討して抽象度を上げてカテゴリ化を行った.データの統合にあたり,コードの抽象化を行う過程で常にそれぞれの文脈における意味に戻るという作業を繰り返し,データとの乖離がないように留意した.また,コード化とカテゴリ化の過程は,新たなコードが追加される毎に,従来のカテゴリと類似する内容かそうでない場合は新たなカテゴリの形成をするという過程を,データの収集期間を通じて絶えず継続的に比較するというプロセスを経て分析を行った.

次に,卓越した看護実践がなぜできるようになったか,という語りを抽出し,卓越した看護実践のカテゴリと対応する獲得背景を統合することで,卓越した看護実践との関連性を示した.獲得背景の統合は,質的内容分析を用いた.類似しているカテゴリをグループにまとめ,抽象度を上げるプロセスを2段階行い,コアカテゴリを作成した.

分析過程は質的研究に精通した研究者からスーパーバイズを受けて実施した.

6. 倫理的配慮

対象者には研究参加への意思表示を直接研究者へ回答するよう依頼することで,研究参加への強制力が働かないよう配慮した.対象者に対して,何ら不利益を受けることなく同意の拒否又は撤回ができること,個人情報の匿名化,論文等での公表について文書及び口頭にて説明を行い承諾を得たうえで実施した.

本研究は東京女子医科大学倫理委員会より承認を得て実施した(承認番号:5144).

Ⅲ. 結果

1. 研究対象者の概要

対象者は16名,すべて女性,平均看護師経験年数は17.8年(12~27年)であった.所属施設は,関東及び関西圏の病院で7施設であった.開設主体による分類では,国;2施設,医療法人;1施設,その他;4施設であった.病床数は300~400床;2施設,500~600床;4施設,700床以上;1施設であった(表1).

表1 対象者の概要

対象者 年齢(歳代) 経験年数(年) 看護基礎教育 医療施設の開設主体 病床数(床)
A 40 27 専門学校 医療法人 500
B 30 12 大学 600
C 30 12 専門学校 600
D 30 15 専門学校 その他(会社) 400
E 30 19 専門学校 その他(会社) 400
F 40 24 専門学校 その他(会社) 400
G 40 15 専門学校 その他(社会福祉法人) 300
H 40 16 大学 その他(社会福祉法人) 300
I 40 23 短大 その他(学校法人) 700以上
J 40 16 専門学校 その他(学校法人) 700以上
K 40 20 専門学校 その他(その他法人) 600
L 40 17 専門学校 その他(その他法人) 600
M 30 14 大学 その他(その他法人) 600
N 40 19 専門学校 600
O 40 18 専門学校 600
P 40 18 専門学校 600

2. ハイパフォーマーの看護実践

卓越した看護実践として,7つのカテゴリ(【 】で示す),25のサブカテゴリ(〈 〉で示す)が生成された(表2).コードの一部を「斜体」で示し,アルファベットは参加者を示す.

表2 ハイパフォーマーの看護実践

カテゴリ サブカテゴリ コード(一部抜粋)
タイミングを図って患者・家族に意図的に介入する 勤務時の挨拶や少しの会話の積み重ねから関係性を築く あいさつや些細な声掛けを通し担当看護師としての関わりを意識して行うA
勤務時に必ずコミュニケーションを取り身近なことから少しずつ会話を積み重ねるE
勤務時1日1回は患者とゆっくり話ができることを心がけるJ
その患者の今の状態に合わせた声かけをする 廊下で出会う患者の変化を気にかけ一声かけることで会話につなげるA
患者が前向きになれるよう短時間でもすれ違ったときなど何度も声をかけるJ
患者全体の状況を把握し廊下ですれ違ったときに必ず声をかけるN
家族の来院時に患者の状況を共有することで関係を深める 患者家族から話しかけやすいよう必ずこちらから挨拶や患者の状態を伝えるG
家族が来院時には患者の状態を伝えるなどコミュニケーションを深めるJ
家族に面会時以外の患者の様子を伝えるなかで関係を築いていくN
患者・家族の現状認識を確認し今だけでなく先を見通せるような情報提供をする時間をもつ 現状の理解を促し今後のことを考えられるように細やかな報提供を行うE
患者の状態の変化を見極め家族の来院時に少しずつ話していくE
医療者とのずれがないよう家族の現状認識を確認したうえで今後の対応を話し合うK
患者と家族や他の医療者の間に入り関係がうまくいくよう働きかける 家族が不安に思っていることへの対応を速やかに医師に依頼し介入するD
患者が気にかけている自宅のことについて家族に伝えられるように支援するE
家族の中での患者の立ち位置や役割という視点から現状の問題点を捉えるN
やり取りを通して患者が納得して主体的に取り組める姿勢を引き出す 問いかけ・応答することで自己決定を引き出す 患者本人の意思で自己決定できるような問いかけをするA
患者が自分事と思えるような声かけや根拠を説明しながら納得してできるような説明を行うB
何気ない会話から始め治療への思いなどを質問することで患者の気持ちを引き出すJ
患者がどうしたいと思っているかを掘り下げて引き出していく必要があると思っているL
やる気を引き出せるような声かけや心配していることを示す関わりをするL
こちらが提供することが一方的にならないよう「一緒に頑張る」という空気を意識して作る 患者に提案し一方的にならないよう了承を得たうえで一緒に治そうというスタンスで関わるF
指導場面において一緒に頑張りましょうという空気を作ろうと意識するG
その日の患者の表情や返事の仕方によって関わりのペースを確認しながら進めるK
疾患や現状の認識を確認しながら今後の関わりを見極める 現状の受け入れができているかどうかを確認し体調を見ながら少しずつケアを進めていくA
想いを確認し入院中から退院後の生活についても考えられるようコミュニケーションをとるN
先の目標を意識しながら今の患者にとって必要な関わりは何かという視点を持って考えるN
その日の患者の状況を把握し未来を予測し必要な看護ケアを判断して患者に伝えながら実践する 患者の観察から得られた情報をもとに今日の関わりを決定する 日常の様子やベッド周囲の環境からどういった方かを想像し関わり方や対応の仕方を考えるK
今日はこの患者の気になるポイントに絞って関わろうと日々考えているM
患者のベッドサイドの状況から現状に適した介入がされているか情報を収集し把握していくO
その時の患者の要望に応じて自分ができることを考えながら実施する 不安の強い家族に対して丁寧に状況を説明したり気にかけていることを態度で示すI
患者の訴えをくみ取り少しでも安楽・前向きな意欲につながるよう環境を整えるK
情報収集の段階でこうしたらという提案を持ちつつ患者の希望を聞きながら取り入れていくM
患者の要望を聞きながらスケジュール調整や関わり方の実際について考えるM
この先の展開を予測し現在の状態から判断した必要な関わりを行う 事前に先の展開が予測できるようになりどんな関わりができるかを考えながら関わるM
患者が今どの時期にあるのかということを念頭に患者のベッドサイドで関わるようにしているO
現在の状態からこの先の回復過程を予測しリハビリを進めていけることを判断するP
患者のそばにとどまることを選択する 患者のそばにいて時間をかけて関わる必要性を感じ取る 患者の気持ちをお互いのやり取りを通して確認していくJ
患者が望んでいることを表出できるようにゆっくり話せる機会を作るJ
優先順位を判断し時間を確保したうえでベッドサイドで寄り添い苦痛を緩和する関わりを行うL
患者のそばに腰を据えて目線を合わせゆっくり本人が伝えたいことを聴こうとするP
直面する事態からひと時でも和めるような場の提供を図る 患者の精神面を支えられるようワクワクするような環境を作れるよう家族に協力を依頼するF
一人での移動が困難な患者の受け持ち時に病床から離れる機会を作るJ
患者のストレスにならないよう身体の態勢やベッド周辺の環境を整えるL
患者が少しでも「気持ちいいな」と思えることがないかという思いでできることを提案するM
見取り時に家族の話を聞くことや触れることを通してそばにいる時間をもつ これまでに至る患者との思い出話をして母親と想いを共有するD
患者の母親の気持ちに寄り添い話を否定せずに聞くD
あらかじめまとまった時間を作れるようスタッフに声をかけ調整して妻の話を聞くM
家族の手を握る・背中をさするなど触れることを通した関わりをするN
患者・家族が新たな状況に対応できる力を獲得できるよう支援する 入院中から自宅の状況をイメージし柔軟な方法を選択する 退院前に居宅訪問を行い病院から自宅への移行がスムーズに進むように調整を行うC
病院での方法に固執せず自宅での家族のやりやすさを優先した指導を行うC
常に退院後をイメージし入院中から自宅で使用する医療機器を導入するC
基本的なこと以外に患者・家族にとってプラスの要素を関わりの中に取り入れる 清拭タオルにアロマを付けて香りを楽しみながらケアできることを家族に提案しケアに取り入れるC
患者にとって良いと思えること・できることを行いたいという想いを持っているC
優先順位を考え家族が段階的に習得できる指導方法を計画する 在宅に帰るために必要な処置を家族が習得できるよう優先順位を考え導計画を立てるC
段階を追って技術の習得ができるように家族への指導方法を工夫するC
自信を持ってケアが続けられるように繰り返しの練習や困った時に頼れる存在をつくる 必要な時に妻の協力を得られるよう妻も巻き込みながらケアに参加を促すA
家族が自信を持って在宅に帰れるように毎日ポンプの練習などを一緒に行うG
妻だけでなく娘が来院時に一緒に指導する G
情報の収集力・発信力を駆使してチームを動かす 患者・家族への関わりが継続できるよう自分が持つ情報を発信し周囲を巻き込む 率先して患者のケア計画を伝達し周囲のスタッフも巻き込んでケアを実践するC
新しいケアを取り入れるにあたりカンファレンスでケア方法等を示しスタッフの理解を得るD
ケアのポイントや患者の状態をスタッフへ伝え自分が不在時にもケアが継続できるようにするE
患者さんのためにという想いがあるF
自分が中心となり認定看護師・訪門看護師との連携も意識してコミュニケーションを密にするG
スタッフ・多職種からの意見を集め多様な視点からの実践を行う カンファレンスで自分の考えを伝えたり意見を聞くことでケアの方向性を修正していくB
後輩スタッフの家族への関わりから情報を得て自分のケアへ活かすC
作成した看護計画に対して周囲のスタッフや上司からのアドバイスを得て実践するC
多職種からも患者についての情報収集しケアに役立てるJ
自分だけでなくほかのスタッフやチームとともに看護をしているという想いがあるN
患者家族への対応について常にどうしたらよいかを日々の会話の中で問題提起するN
多職種へ働きかける「相談」によってこれまでのやり方を超えて新しい状況に対応する 家族の負担軽減や願いを実現できるよう医師や栄養士との調整を行うC
病棟管理に関わる内容を判断することが多く師長へ相談をしながら対応するC
外出したいという患者の希望を叶えるために関連のある部署へ相談するE
患者の在宅療養に向けて必要なケアを多職種に介入してもらうことで実現するJ
自分のこれまでの知識から活用できるものを探す 創を見て治すためには「あれが使える」ということが思い浮かぶF
自分の判断に確信がない場合は必ず認定看護師に確認を取ったうえで行ったG
後輩への指導の機会を見定め時期を逃さず患者へのケアが行えるよう後輩の実践を支える 限られた時間の中で後輩との対話を通して患者に必要な支援が行えるよう共に考える 受け持ち看護師とともにリーダーとして病状的に時間の猶予がない患者の在宅移行支援を行うB
後輩ともお互いに意見を話し合うことでよい看護ができるという想いを持っているB
後輩との対話を通して考えを聞きながら支援をしていくB
自分が経験してきたことを伝えることによって後輩が経験できないことを学ぶきっかけを作るB
指導する相手の理解度を確認してフォローする内容を決定する 後輩が持っている能力を判断し一緒に考え不足部分を提案するB
患者のニーズを満たすことを目標にそこに到達するために後輩をどう支援するべきか考えるB
指導する相手に合わせた指導を意識しているO
どこをフォローしたら相手が次に実践できるかを考えながら関わっているO
新人の理解度を確認し理解できていないことはわかりやすく伝えるO
後輩の関わりに目を配り自らの介入の時期を逃さない せん妄患者への後輩の関わりを聞きながら自分の介入のタイミングを図るH
後輩なりのいいところが活かせられるように見守り支援が必要な時には一緒にケアをするI
新人のフォローをする立場で関わるときに患者に必要なケアがされていないことに気が付くO
素早く情報収集が可能となるよう観察項目の整理など機会があれば後輩に指導を行うO

【タイミングを図って患者・家族に意図的に介入する】では,〈勤務時の挨拶や少しの会話の積み重ねから関係性を築く〉こと,〈その患者の今の状態に合わせた声かけをする〉など,タイミングを図りながら,関係性を構築するなどある意図を持った関わりを行っていた.

【やり取りを通して患者が納得して主体的に取り組める姿勢を引き出す】では,〈問いかけ・応答することで自己決定を引き出す〉ことや〈こちらが提供することが一方的にならないよう「一緒に頑張る」という空気を意識して作る〉という関わりのようにやり取りを行い,患者の主体性を引き出せるようにしていた.

【その日の患者の状況を把握し未来を予測し必要な看護ケアを判断して患者に伝えながら実践する】では,〈その時の患者の要望に応じて自分ができることを考えながら実施する〉ことや〈この先の展開を予測し現在の状態から判断した必要な関わりを行う〉ことなど,この先の未来を予測しながら今必要なケアを判断し実践していた.

【患者のそばにとどまることを選択する】は,〈患者のそばにいて時間をかけて関わる必要性を感じ取る〉や〈直面する事態からひと時でも和めるような場の提供を図る〉ことなどそばにとどまることを選択し,時間をかけベッドサイドでのケアを行っていた.

【患者・家族が新たな状況に対応できる力を獲得できるよう支援する】は,〈入院中から自宅の状況をイメージし柔軟な方法を選択する〉ことや〈優先順位を考え家族が段階的に習得できる指導方法を計画する〉など退院後の自宅の状況をイメージしながら,状況変化に対応できるようよう患者・家族を力づける実践を行っていた.

【情報の収集力・発信力を駆使してチームを動かす】は,〈スタッフ・多職種からの意見を集め多様な視点からの実践を行う〉ことや「自分が中心となり認定看護師・訪門看護師との連携も意識してコミュニケーションを密にするG」など〈患者・家族への関わりが継続できるよう自分が持つ情報を発信し周囲を巻き込む〉ことでチームを動かしていた.また,〈多職種へ働きかける「相談」によってこれまでのやり方を超えて新しい状況に対応する〉というチームから力を得ることで実現できる実践も含まれていた.

【後輩への指導の機会を見定め時期を逃さず患者へのケアが行えるよう後輩の実践を支える】では,「後輩なりのいいところが活かせられるように見守り支援が必要な時には一緒にケアをするI」といった〈後輩の関わりに目を配り自らの介入の時期を逃さない〉ように関わることで,後輩を育成する視点を持ちながら患者に必要なケアが継続的に実践されるようにしていた.

3. ハイパフォーマーの卓越した看護実践の獲得背景

7つの卓越した看護実践と対応する合計32の獲得背景のカテゴリ(『 』で示す.)から,5つのコアカテゴリ(〔 〕で示す)が生成された(表3).

表3 ハイパフォーマーの看護実践と獲得背景の関係

獲得背景のカテゴリ 獲得背景のコアカテゴリ 卓越した看護実践のカテゴリ
①タイミングを図って患者・家族に意図的に介入する ②やり取りを通して患者が納得して主体的に取り組める姿勢を引き出す ③その日の患者の状況を把握し未来を予測し必要な看護ケアを判断して患者に伝えながら実践する ④患者のそばにとどまることを選択する ⑤患者・家族が新たな状況に対応する力を獲得できるよう支援をする ⑥情報の収集力・発信力を駆使してチームを動かす ⑦後輩への指導の機会を見定め時期を逃さず患者へのケアが行えるよう後輩の実践を支える
患者とのトラブルやうまくいかなかった事例から学び相手の状況を予測した関わりに変化した① 経験の積み重ねによって関わり方が発展する  
関わりの手応えによってその実践を継続した①
患者とのうまくいかない経験や身内との関わりをもとに患者への関わり方を考えた②
患者の回復過程の経験やうまくいかない事例から先を見通す力をつけた③
そばにいるという関わりによって手応えを得る経験をしていた④
見通しがつくことや自信によってそばにいる関わりを選択できた④
患者の要望に応えられないことを克服するために学習することで準備性を高めた⑥
指導スキルについて試行錯誤を繰り返すことで身に着けた⑦
研修において実践の意味づけができることで意識的な患者理解や先の予測に基づく情報収集につながった③ 別の視点から俯瞰的に捉えることでより意図的な選択につながる  
視野を広げる経験によって生活に寄り添う姿勢を形成した⑤
これまで蓄積した知識から目の前の実践に応用できる方法を見出した⑥
指導が契機となり患者を全体的に看る視点や根拠に立ち返った⑦
先輩の関わりや病棟で大切にされている看護を受け継いだ① 周囲の身近な存在から影響を受けて自分の関わり方を形成する  
先輩看護師や認定看護師の患者への関わり方や委員会の役割を通して患者の想いを尊重する関わりへ変化した②
患者を観察する視点とその情報をどう看護に活かすかを先輩の看護から感じ取った③
優れている先輩の関わりに触発され自分の実践に取り入れた④
周囲と自分の関わりの違いに気づき患者主体の関わりへ変化した⑥
これまで影響を受けてきた先輩の存在が後輩への関わりの基本となった⑦
自分の限界を認識しエキスパートの支援を受けた④ 自分から周囲の人的ネットワークへ働きかけ実践できる力を得る      
豊富な経験をもつ多職種の力を得ることで実践が可能となった⑤
迷いがある時や状況に応じて相談相手の選択ができ躊躇なく頼れるようになった⑥
意見交換ができるような環境を自分から働きかけながら周囲と共に作り上げた⑥
指導上不足している情報を多職種から得られることで実践につながった⑦
家族の病・死と向き合うことで患者家族の立場での思考を深めた① 患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる
患者に対する姿勢として根拠のあるケア提供と誠実さを大切にしてきた②
身内の病気体験から患者に寄り添える関わりを考えた②
患者に対して治療が進むようにどうアプローチできるかを考えている③
就職時の環境や患者との関わりから「患者の希望を叶えること」を大切に思うようになった④
患者のこれからの療養生活をイメージした関わりをするよう心掛けていた⑤
状況の判断や根拠より家族の為に何かできないかという気持ちがあった⑤
患者・家族の立場を尊重することを関わりの基本にして希望を叶えたいという想いを持っていた⑥
患者の生活を支える視点から後輩指導を行うようになった⑦

※丸数字は卓越した看護実践のカテゴリを示す.※〇印は卓越した看護実践の獲得背景であることを示す.

1) 〔経験の積み重ねによって関わり方が発展する〕

『関わりの手応えによってその実践を継続した①』という一方で,『患者とのうまくいかない経験や身内との関わりをもとに患者への関わり方を考えた②』や『患者の要望に応えられないことを克服するために学習することで準備性を高めた⑥』というようにうまくいかなかった経験が学習行動につながっていた.『患者の回復過程の経験やうまくいかない事例から先を見通す力をつけた③』からうまくいかなかった経験を踏まえて先を見通す,予測した関わり方へと関わり方が変化していた.『指導スキルについて試行錯誤を繰り返すことで身に着けた⑦』というように,関わり方を相手によって変えるといった試行錯誤を繰り返すことで獲得できていた.

2) 〔別の視点から俯瞰的に捉えることでより意図的な選択につながる〕

『研修において実践の意味づけができることで意識的な患者理解や先の予測に基づく情報収集につながった③』や『視野を広げる経験によって生活に寄り添う姿勢を形成した⑤』,『指導が契機となり患者を全体的に看る視点や根拠に立ち返った⑦』といった研修や指導などの経験を通して,自分の関わりを俯瞰的に捉えられるようになり,それまで行っていたことをより意図的に行動するようになっていた.また,『これまで蓄積した知識から目の前の実践に応用できる方法を見出した⑥』というように,目の前の実践に応用できる関わり方を意図的に選択して適応させていた.

3) 〔周囲の身近な存在から影響を受けて自分の関わり方を形成する〕

『先輩の関わりや病棟で大切にされている看護を受け継いだ①』や『先輩看護師や認定看護師の患者への関わり方や委員会の役割を通して患者の想いを尊重する関わりへ変化した②』,『優れている先輩の関わりに触発され自分の実践に取り入れた④』など身近な先輩たちが行っている看護実践を参考に,患者を尊重する関わり方へ変化していた.

4) 〔自分から周囲の人的ネットワークへ働きかけ実践できる力を得る〕

『自分の限界を認識しエキスパートの支援を受けた④』や『豊富な経験をもつ多職種の力を得ることで実践が可能となった⑤』から活用できる周囲の資源であるエキスパートや多職種へと働きかけることで,実践が可能となっていた.状況に応じて適切な相手へ相談することを躊躇なく行える姿勢も関わっていた.

5) 〔患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる〕

『患者に対して治療が進むようにどうアプローチできるかを考えている③』や『患者・家族の立場を尊重することを関わりの基本にして希望を叶えたいという想いを持っていた⑥』というように患者家族のために何かできないかという想いが実践につながっていた.

4. ハイパフォーマーの卓越した看護実践と獲得背景の関連

それぞれの看護実践に対応する獲得背景を表に示した(表3).対応がある看護実践と獲得背景の交点は〇で示した.看護実践⑥【情報の収集力・発信力を駆使してチームを動かす】,⑦【後輩への指導の機会を見定め時期を逃さず患者へのケアが行えるよう後輩の実践を支える】は,5つすべての獲得背景のコアカテゴリが関わっていた.また獲得背景〔患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる〕は7つすべての卓越した看護実践に関わっていた.

Ⅳ. 考察

1. ハイパフォーマーの看護実践の特徴

今回明らかになったハイパフォーマーの看護実践のカテゴリから,ハイパフォーマーは介入に必要な状況を読む力,その時に何が必要かを判断する状況判断力が優れているといえる.看護実践能力の構成要素の1つである状況判断スキルには,個人として対象者にケアを提供するときに必要とする判断と看護専門職としてチーム全体の状況を把握し課題解決に向けての判断の際に必要になるスキルが含まれる(井本,2022).今回の結果におけるハイパフォーマーの状況判断力に関しても対象者とチーム全体の把握,両方の視点を保持していた.また,Benner et al.(2009/2015)は達人の実践を可能にするのは,事前に考えられた一連の期待値に当てはめて考えるのではなく状況を読みこむという能力である,と述べている.この時と状況を見極める状況判断力によって患者・家族の奥深くにあるニーズを引き出し対応できる柔軟性を備えているといえる.

ハイパフォーマーは多様な視点の意見を集めることや周囲の人的ネットワークを資源として捉え,そこへ働きかけることで自分の能力以上の新しい状況に対応できる力を得ていた.ハイパフォーマーの看護実践は,関係性のなかで発揮されるものであると捉えることができる.林ら(2017)の研究においても,ハイパフォーマーは自分の計画をいかにアピールするか,どうすれば効果的に意図が伝わるかといった戦略的思考や多様な情報収集の視点を持つことが示され,情報収集に関わる点が共通していた.村田(2018)はプレイングマネジャーの役割を持つ看護師のリーダーシップ行動として,良好なチームつくりや高いソーシャルスキルなどのチーム志向性を基盤とする行動を指摘している.ネットワークといった関係性を形成する能力はジェネラリストという特性を考慮すると,重要な能力であると考える.

またハイパフォーマーは看護の継続性を意識し,後輩の実践を支援することで,組織全体の実践力を高める行動を行っていた.Kawaguchi & Hatono(2021)が開発した中高年ジェネラリスト看護師の役割遂行尺度には,若年看護師への非公式なメンターとしての実践指導や精神的支援の提供が含まれており,こうした後輩支援について求められる役割とも類似している.また,細田ら(2011)は中堅期看護師のコンピテンシーとして,相手が自ら答えを見つけ出し行動できるように役割を果たす能力として支援的リーダーシップがあることを示している.一方で,ハイパフォーマーにとって重要とされている,自ら意思決定を行い,自信を持ち挑戦的なことに取り組むという「自己確信」が中堅期の看護師にはみられなかったと細田らは指摘している.今回の結果はハイパフォーマーでもあり,後輩への指導の機会を見定め時期を逃さず自分が介入する限界を見極められるだけの余裕が存在し,経験から裏付けられた明確な後輩育成の視点に基づいた行動であったと推察できる.

2. 卓越した看護実践ができるようになるために必要なこと

卓越した看護実践の背景には経験の積み重ねによる関わり方の発展と,俯瞰的に捉えることでの意図的な選択につながるということがあった.中堅看護師の能力開発手法として,経験学習を通じたスキルの獲得・向上や学習意欲の向上,内省を深める機会を持つこと,また内省は専門職の発達に必要不可欠な要素とされている(小山田,2009).また,新垣ら(2015)はリフレクション(内省)の効果として看護実践能力の向上があるとしている.看護実践を振り返り,これまでの経験を意味づけるという過程は,卓越した看護実践を習得していくうえでは欠かせないものであると言える.

楠見(2012)は職務の広がりや高度な仕事の達成によって得た経験を,これまでの経験や知識を用いて意味づけることによって,より難しい状況や類似した状況に転移できる知識となると述べている.また井下・山本(2022)も新しい役割によって,看護師としての視野の拡大や未開発領域の能力開発,モチベーションの向上に効果があり,看護実践能力を高める要因であると述べている.以上より,ハイパフォーマーはただ経験を積み重ねているだけではなく,役割の拡大や多様な経験によって生じる機会を意味づけていく内省を通じて経験と積極的に向き合い,今後に活用できるような形に自身の中で作り上げるという過程を経て実践が発展していると推察できる.

また,ハイパフォーマーの看護実践は周囲の身近な存在から影響を受け,周囲の人的ネットワークへ働きかけることで看護実践につながるという結果もみられた.これはハイパフォーマーが職場の関係性の中で看護実践能力を培ってきたことを示している.井下・山本(2022)の研究において,ジェネラリストの看護実践能力に影響する要因の一つに仕事に対する認識があり,仕事上の人間関係を肯定的に捉え関係性に満足しているものほど看護実践能力が高いと述べられていることと共通している.さらにハイパフォーマーは積極的にそのネットワークを活用していることが本研究の結果よりうかがえた.

今回,7つの卓越した看護実践のカテゴリすべてに獲得背景のコアカテゴリ〔患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる〕が関わっていた.ハイパフォーマーの看護実践を支えるものとして,患者家族を思う気持ちは不可欠と考える.林ら(2017)の研究においても,ハイパフォーマー看護師の実践が,患者ニーズや気持ちを尊重するという点で患者中心であると同時に,すぐれたアセスメント力や倫理性を備えた実践であることが示されていることと共通する.松尾(2011)は,高度な知識やスキルを持つと同時に,自分の目標達成やプロとしての力を身につけたいという自分への思いと,仕事上の相手に喜んでもらいたい,相手と信頼関係を築きたいという他者への思い,両方を持っている人がプロフェッショナルと言えると述べている.卓越した看護実践が求められる場は困難事例であることが多く,その時に原動力となるのは他者への思いであるといえる.ハイパフォーマーは患者が希望するケアを実現するために,経験を積み重ねるなかで試行錯誤しながら主体的に学び,専門職として応えたいという姿勢を持ち続けていると推察できる.山本ら(2022)はジェネラリスト看護師の教育ニードに関して調査し,学習・研究に関して主体的に取り組み看護専門職としての発達を志向するという点において教育的な支援が必要であると述べている.本研究の結果からも,卓越した看護実践を目指すためには,主体的な学びの支援が必要であると考える.また,卓越した看護実践のカテゴリに関連していた獲得背景のコアカテゴリは複数(3~5コアカテゴリ)あった.1つの看護実践を作り上げるには多様な背景が存在していることが示唆された.本研究においてはハイパフォーマーの看護実践と対応する形で獲得背景を明らかにしてきた.そのことによって,ハイパフォーマーの看護実践には患者家族を思う気持ちが不可欠なものであるということ,看護実践の獲得には多様な背景が存在するという2点が新たに示された.

3. ジェネラリストの成長に対する示唆

Jarvis(2006)は実践知の構造の一部として毎日の生活の中からの学びも日常知と位置づけている.ハイパフォーマーは自身の身内との関わりをもとに患者への関わり方を考えるという病院以外の経験から得たことを看護実践に応用していたことからも,学習機会は病院以外の経験にもある,という視点が必要である.香川(2008)は学習の捉えなおしによって指導者が関与しないところでのインフォーマルな学習過程に焦点が当てられるようになると述べている.また,看護師が豊富で高度な専門知識を持つようになると,正規の教育は付加価値が低くなる可能性があり,このような場合の看護師の成長は,日常の経験などの非公式な学習活動を通じて行われる(Pool et al., 2013).ジェネラリストの学習機会を研修からさらに広く捉えることによって,例えば身内の療養生活を見守ることで得られた気づきが患者指導における細やかな配慮として活かされるなどの実践につながっていくと考える.

ハイパフォーマーの獲得背景には患者との直接経験からの学習と先輩など周囲の関わりから学ぶ間接経験からの学習が示された.松尾(2011)も他者の体験から学ぶ間接経験も直接経験を振り返り,意味を考えるうえで貴重な情報になると述べている.ジェネラリストの成長には,直接経験である自身の看護実践とともに,他者との関わりを通して,自分にとっての学びを引き出し,次の看護実践に応用・適応させるプロセスを経ることが必要であると考える.

ジェネラリストには多くの業務や役割が期待されている.やりがい感と負担感を同時に抱いている中堅看護師が日々の仕事意欲を高めるには,負担に感じながらもリーダーシップを発揮する役割を与える必要性と職場の人的環境を調整する役割についてはその負担を軽減していくことが必要であると述べている(下川・片山,2015)ように,役割を任せると同時にその後の支援についても並行して行っていく必要がある.同時に様々な状況や役割を経験でき,その経験が学習資源になり得ることがジェネラリストの強みと捉えられないだろうか.看護師が成長に向かう動機づけについて,他者へ向かう思考と自己の内面に向かう思考がバランスを取り合い,協調的で自律的な行動へ向かうと示されている(新ら,2019).学習のモチベーションとなるのは,プロフェッショナルとして自分への思いと他者への思いを持ち続けることと考える.そのためには,手応えのある経験を積み重ねることが必要であり,日々の経験で得たことの棚卸しをする機会を定期的に持つことで成長を実感でき,モチベーションの維持につながるのではないか.また,その成長を支えるためには,管理者らがジェネラリストに対して積極的に承認する周囲の環境も必要であるといえる.

Ⅴ. 本研究の限界と今後の課題

本研究の対象者は急性期一般病棟に所属するハイパフォーマーであるため,その他の領域への一般化には検討が必要である.

今後の課題は,ハイパフォーマーに至る背景の要素を活かしたジェネラリストのキャリア教育や継続教育の在り方を検討することである.

Ⅵ. 結論

ハイパフォーマーの看護実践とその獲得背景について明らかにした.ハイパフォーマーの卓越した看護実践として7カテゴリとその獲得背景として5コアカテゴリが生成された.7つの卓越した看護実践のカテゴリすべてに獲得背景コアカテゴリ〔患者の生活に寄り添い希望を叶えることを大切にすることが行動につながる〕が関わっていたことから,これらの実践を支えるものとして,患者家族を思う気持ちは不可欠なものであると考える.また,卓越した看護実践のカテゴリに関連していた獲得背景のコアカテゴリは複数あったことから,ハイパフォーマーの経験の多様性が示唆された.

謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただきました研究対象者の皆様,看護管理者の皆様に深く感謝申し上げます.

著者資格:KKは研究の着想からデータ収集,分析解釈及び原稿の作成,MIは研究プロセス全体への助言に貢献した.両著者は最終原稿を読み承認した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

付記:本研究は,東京女子医科大学大学院看護学研究科博士論文の一部を加筆・修正したものである.また,第25回・26回日本看護管理学会学術集会にて一部を発表した.

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