日本看護科学会誌
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資料
家事関連困難感尺度(Perceived Home Management Hassles Scale)作成のための段階反応モデルを用いた項目選定
佐藤 伊織, 目 麻里子, 村本 美由希, 池田 真理
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2024 年 44 巻 p. 712-722

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Abstract

目的:家事関連困難感尺度を開発する第一段階として,項目を作成・選定する.

方法:育児・介護・家事に関する文献を基に17項目を作成し,協力が得られた団体でWeb調査を行った.回答分布,識別力,内容妥当性の観点で選定の議論を行った.合計点を育児・介護の有無で比較し,育児不安尺度・介護負担尺度との相関係数を算出し,育児不安尺度の「要介入群」を予測するAUCを算出した.

結果:1,443名に依頼し,433名から回答を得た(うち女性376名,育児中143名,介護中60名).選定した5項目の合計点は育児中・介護中で有意に高く(9.2 vs. 6.3, p < 0.001; 8.8 vs. 7.1, p = 0.019),育児不安・介護負担と相関があり(|r| = 0.27~0.53),要介入群を予測した(AUC = 0.823).

結論:内容的にも計量心理学的にも妥当と考えられる5項目5件法の自記式尺度を作成できた.

Translated Abstract

Purpose: We have developed a scale, which we named the “Perceived Home Management Hassles Scale”.

Methods: Seventeen items were developed based on previous articles related to childcare, caregiving, and housework. A web-based survey was conducted among members of a nursing academic society. The researchers engaged in discussions to select appropriate items considering factors such as the ceiling/floor effect, non-response rate, item discrimination (using the graded response model), and content validity. The total scores of the selected items were compared based on the childcare/caregiving status, and correlation coefficients were calculated in relation to a parenting stress scale and a caregiver burden scale. Furthermore, we calculated the area under the curve (AUC) to predict the group that requires intervention based on the parenting stress scale.

Results: We received responses from 433 respondents, ranging in age from their 20s to over 60s. Of these, 376 were women, 143 were raising children, and 60 were caregivers. Five items were selected based on the distribution of responses and content validity. The total score was significantly higher for those involved in either childcare or caregiving (9.2 vs. 6.3, p < 0.001; 8.8 vs. 7.1, p = 0.019). The total score correlated with parenting stress and caregiver burden (|r| = 0.27–0.53), and was able to predict the group that requires intervention (AUC = 0.823).

Conclusion: We developed a 5-item, 5-point Likert scale that can be self-administered and completed online. It is suggested to have content and psychometric validity.

Ⅰ. はじめに

1. ウィズコロナにおける育児・介護・家事

コロナウイルス感染症2019(いわゆる新型コロナウイルス感染症;COVID-19)の流行により,ロックダウン(ステイホーム),休校,リモートワーク推奨,家庭内感染などといった続発的事柄から,流行以前よりも家庭での役割や負担が増している.いわゆる家事時間は,特に女性・母親において増加したことが報告されている(Giurge et al., 2021).こどものいる共働き家庭では,育児と仕事のために時間が無い中で様々な対処法でなんとか乗り切っており(Shockley et al., 2021),高齢者を介護する者においても,介護にかける時間と介護負担感がいずれも増加している(Cohen et al., 2021).COVID-19が日本の感染症法上は5類感染症へと移行した後も,自身や家族の発熱時の対処行動や感染予防のための配慮などは人々の間に習慣化されている.そのため,COVID-19発生以前に戻るというよりも新たな日常生活(いわゆるウィズコロナ)へと移行していると言える.そのような中で,育児や介護を含む家庭での役割や負担について,流行の収束とともに改善しているかどうかや,特定の対象集団において増加していないかは不明である.これらを把握し,明らかにすることは,将来また新たな感染症の流行が起きた際の負担の将来予測や,健康課題が家族へ与える影響の理解,介入すべき集団の同定に繋がる可能性がある.

2. 「家事関連」の定義と主観的指標の不存在

これまで,家事時間や介護時間,育児時間といった客観的指標によって人々の生活時間が調査され,その大変さが評価されてきた.令和3年度社会生活基本調査(内閣府,2021)では,生活行動のうち家事,介護・看護,育児,買い物を合わせたものを家事関連として定義し,いずれも客観的指標(時間)を調査している.しかし,育児と介護については,その人自身による認識・評価を尋ねる主観的指標(育児不安parenting stressや介護負担感caregiver burden)が存在する一方で,家事・家事関連には主観的指標が見られない.

介護をしている者のQOLには介護時間の長さ(客観的指標)と独立して介護負担感(主観的指標)も影響することが明らかにされており,特に精神的QOLについて,介護時間よりも介護負担感の影響が比較的大きかった(Haya et al., 2019).日常生活を送る人々の精神健康の向上を考えるためには,客観的指標のみならず,主観的指標も必要である.そこで,主観的指標のひとつとして困難感に焦点を当て,家事関連困難感尺度(Perceived Home Management Hassles Scale)を作成することとした.

3. 本研究の目的と調査の経緯

本資料は,家事関連困難感尺度開発の第一段階として,家事・育児・介護に関する先行研究に基づく自己回答式尺度案を作成し,その尺度案を用いたWeb調査結果および専門家間の議論に基づいて尺度案を評価して,適切な項目を選定するものである.選定できた項目をもって,家事関連困難感尺度とする.

なお,尺度案を用いたWeb調査は,後述する看護系学会が会員を対象に行う調査の中で行うものであり,その後も継続的に(縦断的に)会員を対象として調査を行い,ウィズコロナにおける看護職の家事関連困難感の推移を調査する計画である.しかし,尺度の開発にあたってはあくまでも(看護職・学会員に限らない)一般的な成人を対象とする尺度としての内容・表現で作成し,将来的には一般集団でも用いることのできる尺度となることを目指す.また,将来的な一般集団において,例えば家事関連困難感を高めないシステムの検討や家事関連困難感を軽減するケアの開発にあたってのアウトカム指標として利用できる可能性のある尺度を目指して,感染予防等の感染症にまつわることに限らず全般的な家事関連の困難感を対象とする.

Ⅱ. 方法

1. 尺度案の作成

家事・育児・介護の指標に関する既存の研究(阿部ら,2010;Misawa et al., 2009;岩渕ら,2009;荒牧・無藤,2008;櫻井,1999;吉田ら,1999;Arai et al., 1997)を基に,教示文,項目,選択肢を作成した.教示文は「この1か月間に,あなたは次のことをどのくらい感じましたか.「家のこと」は,育児や介護などに限らず,例えば炊事・洗濯・ペットの世話・行政手続き・近所付き合いなど,家の中のことや家に関連することを全て含みます.一人暮らしの方であってもなるべくご回答ください」とした.尋ねたい事柄に育児や介護が含まれること,かつ,育児や介護のみならず様々な家事が含まれることを示し,一人暮らしの方も他の家族員と暮らしている方も,家事関連について回答してほしいことを表した.

項目は,家事関連困難感と関連性があると思われた表現を抽出した.利便性を鑑みて最終的な尺度は10項目以下にしたいと考えたが,項目群が包括性を持つよう,尺度案の時点では項目数に制限を設けずに抽出して,17項目の尺度案となった.17項目のうち14項目は困難感を直接に尋ねるもの(例:家のことをするのが大変だと思う)とした一方,3項目は困難感を裏返しに尋ねる,いわゆる逆転項目とした(例:家のことをするのは楽しい).各項目の分かりやすさを保つため,Web調査実施前に著者らを含む8名の研究者が確認・議論のうえ微修正を行った.選択肢は,既存の研究を参考に,「非常に強く思う」「かなり思う」「まぁまぁ思う」「少し思う」「全く思わない」の5件法とした.

2. Web調査

1) 研究デザイン

一般社団法人日本家族看護学会が会員を対象として2021年8~9月に行ったWeb調査(臨床試験登録番号UMIN000045163)に合わせて行った,横断的観察研究である.

2) 手順

研究事務局から対象候補者へメールで研究の案内を行った.対象者はメール文中のWeb調査URLにアクセスし,16~24ページから成る調査に回答した(対象者の背景属性により調査内容が分岐・変化するため,対象者によりページ数は異なった).家事関連困難感尺度案は中盤に配置された.回答はページごとに保存されるため途中で中断して休憩できるものであり,回答所要時間はおよそ30分を見込んでいたところ,実際の平均回答所要時間は中断時間を含めて34分であった.最初の案内から回答期限までは31日間あり,期間内に4回,未回答者および回答途中の者へのリマインドメールを発信した.

3) 倫理的配慮

東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2021046NI).画面上の書面による研究説明を行い,説明項目および同意のチェックをして同意した者に対してのみ調査を行った.Web調査は回答しなければ次のページに進むことができない(回答していない項目があると,回答を促すアラートが表示される)設定であったが,家事関連困難感尺度案については「無回答」の選択肢を加え,回答したくない項目がある場合には「無回答」を選択すれば次のページに進むことができるようにした.最後のページまで回答した対象者へ,教育研究者または臨床実践者の立場に応じて(立場によりページ数が異なるため),謝礼として300~500円分のギフトコード番号を送付した.

4) 対象

Web調査の案内は学会にメールアドレスを登録している全会員1,443名に対して行われた.期日までに同意した者が526名,不同意の意思を示した者が30名であった.本研究では家事関連困難感尺度案のページへ到達した433名の回答を分析対象とした.

分析対象の年代中央値・最頻値は40代で,女性が376名(86.8%)と大半を占め,大学院修士課程終了者が211名(48.7%)と最も多かった(表1).暮らし向きは普通(219名,50.6%)に次いでややゆとりがある者が多く(128名,29.6%),約半数が教育研究者であった(240名,55.9%).

表1 研究対象者の人口学的特性・社会的背景

N = 433

n %
年齢
20代 18 4.2
30代 81 18.7
40代 146 33.7
50代 140 32.3
60代以上 42 9.7
無回答 6 1.4
性別
女 376 86.8
男 51 11.8
無回答 6 1.4
学歴
短大・専門学校卒 44 10.2
大学卒 41 9.5
大学院修士課程修了 211 48.7
大学院博士課程修了 125 28.9
無回答 12 2.8
暮らし向き
大変苦しい 13 3.0
やや苦しい 47 10.9
普通 219 50.6
ややゆとりがある 128 29.6
大変ゆとりがある 23 5.3
無回答 3 0.7
主な立場(最も近いもの)
臨床実践者 171 39.5
教育研究者 240 55.4
学生 13 3.0
その他 9 2.1
配偶者・パートナーがいるか
いる 308 71.1
いない 115 26.6
無回答 10 2.3
ひとり暮らしか
はい 38 8.8
いいえ 317 73.2
無回答 78 18.0
現在,育児を担っているか
はい 143 33.0
いいえ 281 64.9
無回答 9 2.1
育児不安の程度分類(現在育児を担っている者のみ:N = 143)
I:育児不安は低い 38 26.6
II:育児不安は比較的低い 16 11.2
III:育児不安は中等度 45 31.5
IV:育児不安は比較的高い 19 13.3
V:育児不安は高い(要介入) 17 11.9
無回答 4 2.8
回答されたが,結果からは除外* 4 2.8
現在,介護を担っているか
はい 60 13.9
いいえ 363 83.8
無回答 10 2.3
n 平均 SD
介護負担尺度得点(現在介護を担っている者のみ:N = 60,無回答を除く)
日常生活への影響 58 14.4 3.2
ケアに関する受け止め 58 16.6 3.4
家族からのサポート 58 8.4 3.6
健康状態への影響 57 4.9 1.8
経済的な影響 57 4.1 1.7

* 調査実施後に質問項目設定ミスが発覚したため

5) 調査内容

Webアンケートシステム(SurveyMonkey)を用い,家事関連困難感尺度案および人口学的特性・社会的背景に加えて,妥当性・信頼性が確認されている以下の尺度を作成者の許諾を得て使用した.

(1) 育児不安尺度

Parenting stressは,育児ストレス,育児不安,育児困難感,育児負担,養育負担などと互いに同じもしくは近しい概念として用いられる.今回は対象者のうち育児をしている者へ,育児不安尺度として幅広いこどもの年齢に対応して用いることの出来る,吉田ら(1999, 2013a, 2013b, 2013c)による尺度を用いた.末子の年齢に応じて,1・2か月児版を4か月未満の場合に,4・5か月児版を9か月未満の場合に,10・11か月児版を12か月未満の場合に,1歳半児版を1歳(24か月未満)児の場合に,2歳児版を2歳児の場合に,3歳児版を3歳児の場合に,4歳児版を4歳以上の場合に用いた.ただし調査実施後に質問項目設定ミスが発覚して1・2か月児版は結果から除外した.項目数は年齢版により異なり10~14項目で,4件法の尺度であり,合計得点を算出後に年齢ごとの標準得点を参照して「I:育児不安は低い」「II:育児不安は比較的低い」「III:育児不安は中等度」「IV:育児不安は比較的高い」「V:育児不安は高い(要介入)」に分類することができる.本研究におけるCronbachのα係数は0.80~0.97であった.

(2) 介護負担尺度

Caregiver burdenは,主には介護負担と訳され,こどもを介護している者を対象とする場合には養育負担と訳されることもある概念である.今回は対象者のうち家族の介護をしている者へ,Misawa et al.(2009)による介護負担尺度を用いた.本尺度は18項目5件法の尺度であり,5つの尺度得点「日常生活への影響」「ケアに関する受け止め」「家族からのサポート」「健康状態への影響」「経済的な影響」を算出することができる.本研究におけるCronbachのα係数は0.77~0.89であった.

6) 分析

適切な項目を選定するために,17項目それぞれの回答分布と無回答者数を集計した.天井効果・床効果がないか(半数以上の回答者が,最極端な選択肢である「非常に強く思う」もしくは「全く思わない」と回答していないか)を確認した.また,無回答者の割合が多くないかを確認した(少なければ少ないほどよく,割合が多い場合には項目が理解しにくい・回答しにくいものであった可能性を考えた).

項目反応理論(段階反応モデル)を用いて,各項目の識別力を算出し,特性反応曲線を描いた.識別力は高ければ高いほどよく,尺度全体(17項目)が測ろうとしている概念をその項目がよく表していることを示す.また,特性反応曲線から,回答肢の等間隔性を視覚的に確認した.

以上の分析結果に基づき研究者間で議論し,項目を選定した.研究者(著者4名全員)は,それぞれの多様な専門性(家族看護,小児看護,産業看護,高齢者看護),職能(助産師,看護師,臨床心理士),個人的経験(育児,障害児の介護,高齢者の介護)を動員して議論に参画し,特定の領域(例:新婚期の家族における家事役割分担)に偏らない内容となるよう努めた.

選定した項目の合計点を算出し,その合計点が(1)既知集団妥当性,(2)収束妥当性,(3)予測妥当性を持つよう,以下の検討を行った.

(1) 既知集団妥当性

育児をしている場合,育児をしていない場合と比べて,合計点が有意に高いことを独立2標本におけるt分布を用いた平均値の差の検定により確認した.また,介護をしている場合,介護をしていない場合と比べて,合計点が有意に高いことを同様に確認した.有意水準は0.05とし,p < 0.05である場合に有意とした.

(2) 収束妥当性

育児をしている者について,育児不安尺度の分類段階(I~V)と合計点とのSpearmanの相関係数を算出した.また,介護をしている者について,介護負担尺度得点(各下位尺度得点)と合計点とのPearsonの相関係数を算出した.相関係数は0.1以上0.3未満を弱い相関,0.3以上0.5未満を中程度の相関,0.5以上を強い相関とみなした(Cohen, 1988).育児不安尺度とも,介護負担尺度の大半の下位尺度とも,中程度以上の相関があることを確認した.

(3) 予測妥当性

育児をしている者については,育児不安尺度により「要介入(分類段階V)」とそれ以外の2群に分けられることから,予測妥当性を検討した.育児不安尺度における「V:育児不安は高い(要介入)」を予測するROC曲線を描き,曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)を算出した.AUCは明示的な基準を示すことができないが(Janssens & Martens, 2020),本研究では0.8以上の予測性能があることを確認した.

統計解析にはR version 4.1.2を使用した.

7) 事後的な検討

以上により項目を選定したところ,後述する通り,2種類の項目群案が選定されることとなった.そのため事後的(post hoc)に,2つの案の(1)既知集団妥当性,(2)収束妥当性,(3)予測妥当性を比較検討することとした.既知集団妥当性については育児の有無・介護の有無別に群間の標準化差を計算し,標準化差がより大きい案のほうが適切と考えた.収束妥当性については相関係数の絶対値がより大きい案のほうが適切と考えた.予測妥当性についてはAUCがより大きい案のほうが適切と考えた.

Ⅲ. 結果

1. 各項目の特性と選定

家事関連困難感尺度案のページへ到達した433名のうち全員が家事関連困難感尺度案への回答を送信して次のページへ進んでいた.433名のうち半数(217名)以上が最極端な選択肢を回答した項目はなく,「全く思わない」が最も選択されたのは項目8「家のことで,報われないと思うことがある」であった(表2).433名のうち2名は17項目全てについて「無回答」を選択していた.その2名はいずれも一人暮らしではなかった.さらに3名(合わせて5名)が「無回答」を選択したのが項目12「家のことを,うまくやれているか不安になる」であり,無回答割合は1.2%であった.

表2 各項目の回答分布および項目反応理論(段階反応モデル)に基づく指標

N = 433

回答分布 項目反応理論 研究者間での議論
非常に強く思う かなり思う まぁまぁ思う 少し思う 全く思わない 無回答 識別力 項目への意見と採否
1 家のことをするのが大変だと思う 40 102 151 102 36 2 2.0 (採用)
2 家のことをしていると疲れる 28 76 152 123 52 2 2.3 (採用)
3 家のことで,どうしていいかわからないと思うことがある 10 30 66 148 177 2 1.5 (不採用)識別力が低い.回答分布がやや偏っている
4 家のことで体のあちこちに負担がかかっている 13 40 72 154 152 2 1.7 (不採用)識別力が比較的低い
5 家のことで,腹が立つことがある 16 36 89 180 110 2 1.8 (不採用)識別力が比較的低い.あまり等間隔でない
6 家のことをするのは楽しい 20 64 168 128 51 2 0.5 (不採用)識別力が低い
7 家のことでお金がかかり負担になっている 13 46 65 133 174 2 1.0 (不採用)識別力が低い.回答分布がやや偏っている
8 家のことで,報われないと思うことがある 16 29 52 141 193 2 2.0 (不採用)回答分布が最も偏っている
9 家のことで,困ってしまうと思うことがある 11 32 76 190 120 4 2.1 (不採用)無回答が多め.遠回しな表現がわかりにくい
10 家のことで,自由が制限されていると思う 17 42 78 145 149 2 2.3 (採用)
11 家のことをすることは将来の役に立つと思う 42 71 138 133 46 3 0.2 (不採用)識別力が低い
12 家のことを,うまくやれているか不安になる 13 23 72 150 170 5 1.0 (不採用)識別力が低い.無回答が最も多い
13 家のことで,他にやりたいことへの支障が出ていると思う 18 41 84 138 148 4 2.2 (採用)無回答が多め
14 家のことを,だれかに任せてしまいたいと思う 36 62 71 108 152 4 1.8 (不採用)無回答が多め.識別力が比較的低い
15 家のことをするのが大変なことを誰かにわかってほしいと思う 36 54 59 106 175 3 2.4 (採用)回答分布がやや偏っている
16 家のことをきちんとするのが難しいと思う 39 64 95 154 77 4 2.0 (不採用)無回答が多め.あまり等間隔でない
17 家のことを自分ですることは有意義だと思う 43 64 149 138 37 2 0.3 (不採用)識別力が低い

太字下線:各項目において,最も回答頻度が高かった選択肢

太字:識別力≧2

識別力は高いものから項目15「家のことをするのが大変なことを誰かにわかってほしいと思う」,項目10「家のことで,自由が制限されていると思う」,項目2「家のことをしていると疲れる」,項目13「家のことで,他にやりたいことへの支障が出ていると思う」,項目9「家のことで,困ってしまうと思うことがある」,項目8「家のことで,報われないと思うことがある」,項目1「家のことをするのが大変だと思う」,項目16「家のことをきちんとするのが難しいと思う」であった(表2).各項目の特性反応曲線を図に示した(図1).項目1と項目2が明らかに左右対称で等間隔であり,一方,識別力の高い項目でも項目5や項目16は,あまり等間隔でないように見えた.

図1  各項目の特性反応曲線

以上の集計結果に基づき議論した結果,おおよそ左右対称の回答分布を示し,無回答が(2名を除き)全くなく,明らかに等間隔で,識別力も高い項目1と2の2項目について,家事関連困難感尺度の項目として選定されるべきと考えられた(2項目案).一方,内容妥当性(包括性)の観点から,2項目案では心理社会的側面が不足していると考えられ,これを補うためには,識別力が高い項目15,10,13を加える案も考えられた(5項目案).なお項目9,16について,識別力は次いで高いものの,無回答者がおり,表現がわかりにくかったり解釈が人により異なったりしたのではないかとの議論により,選定されなかった.項目8については,床効果に近い回答分布であり,最も偏っていたことから,選定されなかった.

そこで,2項目案と5項目案を比較する事後的な検討を含めて妥当性指標の確認を行ったところ,既知集団妥当性については,いずれの案についても,育児をしている場合には,育児をしていない場合と比べて合計点が有意に高かった(表3).標準化差については5項目案のほうがより大きかった.また,介護をしている場合には,介護をしていない場合と比べて合計点が高かったが,統計学的有意差が見られたのは5項目案の場合のみであった.標準化差についても,2項目案より5項目案のほうがより大きかった.

表3 家事関連困難感尺度案の項目回答平均スコア:育児の有無・介護の有無ごとの比較

N = 429

全体 育児をしている 介護をしている
はい いいえ 標準化差 t test はい いいえ 標準化差 t test
n 平均 SD n 平均 SD n 平均 SD p n 平均 SD n 平均 SD p
2項目案[Range: 0~8] 429 3.8 2.07 141 4.5 1.85 280 3.4 2.07 0.531 0.000 59 4.1 2.10 361 3.7 2.06 0.192 0.183
5項目案[Range: 0~20] 429 7.4 4.59 141 9.2 4.65 280 6.3 4.22 0.660 0.000 59 8.8 5.17 361 7.1 4.47 0.373 0.019

収束妥当性を示す育児不安尺度の分類段階との相関は,2項目案の合計点は中程度の相関を示し(ρ = 0.48),5項目案の合計点は強い相関を示した(ρ = 0.53)(表4).すなわち,5項目案のほうが相関係数の絶対値がより大きかった.介護負担尺度の下位尺度との相関は,2項目案でも5項目案でも弱い相関から中程度の相関を示した(|r| = 0.25~41).「ケアに関する受け止め」は,介護の楽しさや意義を表現する下位尺度であり,家事関連困難感とは負の中程度の相関を示した.「健康状態への影響」「経済的な影響」は,家事関連困難感と正の中程度の相関を示した.「家族からのサポート」は,他の家族員から協力を得られていない・得られないという認識を示す下位尺度であり,家事関連困難感と正の弱い相関を示した.「日常生活への影響」は,2項目案とは正の弱い相関を,5項目案とは正の中程度の相関を示した.以上より,2項目案は3つの下位尺度と,5項目案は4つの下位尺度との中程度以上の相関が示され,いずれの案も大半の下位尺度と中程度以上の相関があることが確認された.相関係数の絶対値の大きさは,「日常生活への影響」「家族からのサポート」「健康状態への影響」については5項目案のほうが,「ケアに関する受け止め」「経済的な影響」については2項目案のほうが大きかった.

表4 家事関連困難感尺度案の項目回答平均スコアと育児不安・介護負担との関連

N = 429

育児不安の程度分類(I~V) 介護負担
日常生活への影響 ケアに関する受け止め 家族からのサポート 健康状態への影響 経済的な影響
n ρ n r n r n r n r n r
2項目案[Range: 0~8] 134 0.48 58 0.29 58 –0.41 58 0.25 57 0.40 57 0.39
5項目案[Range: 0~20] 134 0.53 58 0.30 58 –0.39 58 0.27 57 0.41 57 0.37

日常生活への影響:項目は「介護を始めてから,親戚や友人を訪ねる機会が減った」「介護のせいで,自分がくつろぐ暇がない」など

ケアに関する受け止め:項目は「家族の介護ができることを誇りに思う」「介護に楽しさを感じている」など

家族からのサポート:項目は「誰もが私だけに介護を押し付けている」「介護するにあたり,他の家族から援助を受けることはとても難しい」など

健康状態への影響:項目は「介護を始めてから,自分の健康状態が悪くなった」など

経済的な影響:項目は「介護のための費用を払うことが難しい」など

育児不安尺度における「V:育児不安は高い(要介入)」を予測するROC曲線を描いたところ(図2),2項目案のAUCは0.803,5項目案のAUCは0.823となった.いずれの案についても0.8を上回っており,5項目案のほうがAUCが大きかった.

図2  育児不安の程度が高く「要介入」の方を予測するROC曲線

Ⅳ. 考察

1. 家事関連困難感尺度の作成と選定された項目の適切性

家事関連困難感尺度案を作成し,Web調査・解析を行い,2項目案と5項目案とを比較検討した.その結果,内容妥当性としても計量心理学的妥当性としてもより優れる5項目案を,家事関連困難感尺度(Perceived Home Management Hassles Scale)とすることが望ましいと考えられた.

尺度が持たなければならない性質の中で特に重要なものの一つが,内容妥当性である.内容妥当性があると主張するためには,尺度項目が評価対象概念と関連しているか(関連性),項目内容によって評価対象概念の内容を広く捉えられているか(包括性),項目によって回答者が理解しやすくなっているか(分かりやすさ)が求められる(佐藤・土屋,2022;COSMIN, 2024).本研究では認知的インタビューその他のパイロットテストを行わず,既に認知的インタビュー等によって開発され,広く利用されている既存尺度の表現を用いて鏡文や選択肢,項目を作成した.また,項目作成から解析までの過程では研究者間の議論を繰り返した.無回答割合が最大1%台と小さかったことからは,十分な分かりやすさだったと推察される.

事後的に2種類の項目群案ができたために,2つの案の比較検討を行うことになったが,まずは事前に設定していた妥当性指標の基準について,5項目案は全て満たしていた.すなわち,育児の有無・介護の有無という群間での確かな差があり,既存の尺度との十分な相関があり,要介入群の予測性能も有していた.2項目案についても,唯一,介護の有無という群間での有意差は見られなかったことを除いて,妥当性指標の基準を満たしていた.次に,事後的な検討も含めて考え,2項目案よりも5項目案のほうが優れていると考えられた.内容妥当性(包括性)を鑑みて心理社会的困難感を含むようにしたことで,育児不安との相関や予測妥当性が向上し,介護の有無による差も見られやすくなったと考えられる.

介護負担感尺度との相関については,2つの下位尺度「ケアに関する受け止め」「経済的な影響」において2項目案のほうが5項目案よりも相関係数の絶対値が大きく,残り3つの下位尺度において5項目案のほうが2項目案よりも相関係数の絶対値が大きかった.特に2項目案では相関係数が0.20台と弱かった「日常生活への影響」「家族からのサポート」において,5項目案では相関係数が比較的大きくなったことから,2項目案と比較して5項目案のほうが,5つの下位尺度にまんべんなく相関するようになったと言える.これは,包括性の点から好ましい特性と考えられた.家族を介護している者の負担感およびうつ症状に関するメタアナリシスより,被介護者の多様な特性ごとに介護者への身体的・心理的影響が様々に異なることが明らかとなっている(Pinquart & Sörensen, 2003).本尺度が介護負担尺度内の各下位尺度とまんべんなく相関を持ち,介護における困難感の種々の側面を反映していることは,収束妥当性と包括性の点から適切と考えられた.さらに,逆転項目である項目6,11,17が段階反応モデルへの不適合から家事関連困難感尺度に含まれないこととなったが,「ケアに関する受け止め」との相関の高さから,家事関連困難感が介護肯定感と独立した関係にあるものではなく,介護の楽しさや意義の認識を損なうものと考えられた.

本尺度は,いわゆる「家事」とも「家のこと」とも表現される,育児および介護を含めた家事関連についての困難感を自己評価するものである.その家事関連に含まれるものは,「育児や介護などに限らず,例えば炊事・洗濯・ペットの世話・行政手続き・近所付き合いなど,家の中のことや家に関連することを全て」と説明され,家事関連の身体的・心理社会的な大変さを定量化する指標となった.既存の,育児や介護をしている者のみを対象とする尺度とは異なり,一人暮らしの者や育児も介護もしていない者をも対象とするため,家族構成やライフサイクルの変化による家事関連困難感の変動を捉えることが期待できる.

2. 研究の限界と今後の課題

本研究は,一般的な集団(成人)を対象として家事関連困難感を自己評価できる尺度の作成を目指したものの,利用計画のひとつにコロナ禍における看護職の家事関連困難感の推移を調査することがあって開始したこと,その前提で本研究の対象集団を得たことから,調査対象集団が30代から50代までの女性で大学院修了者が多い集団であった.一般集団と比較して有職者かつ専門職者が多いと考えられ,選定された項目の表現にある「(家のことの)他にやりたいこと」の内容や量が,他の集団と異なるおそれがある.

また,同じ形式で質問した先行研究(厚生労働省,2021)と比較して,経済的ゆとりのある対象集団であった.性別や文化によって方向性は異なるが,学歴や経済状況は,客観的な家事時間や家事分担に影響することが明らかになっている(Magda et al., 2024;Xiang et al., 2018;Zhang, 2024).さらに,選定された項目には「大変なことを誰かにわかってほしい」「疲れる」という表現があるが,一般に女性は男性と比較して疲労を感じていること(Rimaud et al., 2023;Wylie et al., 2022)や,女性は自分の困難を適切に評価して他者に理解を求めるスキルが低い傾向にあること(Exley & Kessler, 2021)が明らかとなっている.

以上から,本資料が示す回答分布や妥当性指標が一般集団にも当てはまるとは考えられない.しかし,選定された項目自体は,看護職やコロナ禍の家事に特有の内容とはなっていない.本研究は,第一段階として実施可能な対象集団において項目選定を行ったものであって,今後の研究として,計量心理学的妥当性を検証すること,一般化可能性(異文化間妥当性や性差)の有無を確認することが必要である.

Ⅴ. 結論

家事関連困難感尺度(Perceived Home Management Hassles Scale)を作成できた.家事関連困難感尺度は「家のことをするのが大変だと思う」「家のことをしていると疲れる」「家のことで,自由が制限されていると思う」「家のことで,他にやりたいことへの支障が出ていると思う」「家のことをするのが大変なことを誰かにわかってほしいと思う」の5項目から成る5件法の自己記入式(オンライン入力)尺度であり,その合計点(範囲:0~20点)は高ければ高いほど家事関連困難感が強いことを意味するように作成された.今後,計量心理学的妥当性や一般化可能性を検証していく予定である.

付記:本論文の内容の一部は,日本家族看護学会第31回学術集会において発表した.

謝辞:本研究は一般社団法人日本家族看護学会事業費により実施した.調査「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下の看護職における家族看護の困難と技:日本家族看護学会会員へのWebアンケート」(一般社団法人日本家族看護学会総務委員会 COVID-19調査研究プロジェクト,2023)プロジェクトメンバーの先生方と,参加くださった日本家族看護学会会員の皆様に,心より御礼申し上げます.

利益相反開示:本研究に関連して開示すべき利益相反は無い.

著者資格:全ての著者は研究の着想,デザイン,調査の実施,統計解析,草稿の作成に携わった.全ての著者が最終原稿を読み,承認した.

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