日本看護科学会誌
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資料
地域在住高齢者における情報通信機器(ICT)の利用時間と睡眠の関連
益満 智美白井 みどり秋山 庸子佐々木 八千代
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2024 年 44 巻 p. 903-910

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Abstract

目的:高齢者のICT利用時間と睡眠との関連を明らかにする.

方法:65~84歳を対象にICT利活用の実態と健康,生活状況に関する自記式質問紙調査を実施した.分析では1日のICT利用時間を1時間未満群と1時間以上群に分類した.従属変数は睡眠時間,入眠潜時とし,ロジスティックモデルを用いて多要因の影響を調整し,睡眠時間,入眠潜時に関するICT利用時間のオッズ比(OR)を算出した.

結果:自記式質問調査に参加した324名のうち,ICT利用時間の回答が得られた202名を分析対象者とした.ICT利用時間が1時間以上(vs. 1時間未満)のものは,睡眠時間が7時間以上に関するORが0.49(p = 0.051)で境界域の有意性を示した.ICT利用時間と入眠潜時との関連は検出されなかった.

結論:高齢者における1時間以上のICT利用により,睡眠時間が短くなる可能性が示唆された.

Translated Abstract

Objective: To elucidate the relationship between ICT use and sleep patterns among older adults.

Methods: A self-administered questionnaire survey on ICT usage, health, and living conditions was conducted among adults aged 65–84 years. In the analysis, daily ICT use was classified into two groups: those who used ICT for less than one hour and those who used it for more than one hour. The dependent variables were sleep duration and latency, and the odds ratios (ORs) of ICT use time for these variables were calculated after adjusting for the effects of multiple factors by using a logistic model.

Results: Of the 324 participants who completed the questionnaire survey, 202 provided information on ICT use time and were included in the analysis. Those who used ICT for more than one hour (compared to less than one hour) showed a marginally significant OR of 0.49 (p = 0.051) for more than seven hours of sleep. No association was found between time spent using ICT and sleep latency.

Conclusion: ICT use exceeding one hour among older adults may be associated with decreased sleep duration.

Ⅰ. 緒言

わが国では,2000年高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)の制定以降,デジタル化に取り組み,2022年デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針が策定され,誰もがデジタル化の恩恵を享受することにより,日常生活等の様々な課題を解決し,豊かさを真に実感できる「誰一人取り残されない」デジタル社会の実現を目指すことを推進している(総務省,2021).デジタル技術を活用して健康,医療,介護,教育,防災などの準公共分野をはじめとするデジタル化を進めており(デジタル庁,2023),高齢者においてもICT利活用が増大すると予測される.高齢者におけるICT利活用の状況をみると,2022年度の調査では70歳代のスマートフォンの利用率は72.1%で,1日あたりのICT利用時間(ネット利用時間)は,年々増加傾向にあると報告されており(総務省,2022),今後もICT利用率や利用時間は長くなると推測される.

ICT利活用に関する先行研究では,健康との関連が検討されており,COVID-19パンデミック下の行動制限により人との交流や社会とのつながりをもつ機会が減る中で,スマートフォンの利用が孤独を軽減したことが報告されている(Nguyen et al., 2022).このことから,高齢者の健康増進に向けてのICT利活用の重要性が高まっていると考えられる.さらに,ICTを利用した認知行動療法により不眠や抑うつ,不安の改善が報告されており(Lee & Yu, 2021Salvemini et al., 2019),ICTは今後,健康増進のために幅広く活用されると推測される.一方,ICTの過剰な利用により睡眠の質の低下や抑うつ,不安などの健康への影響が報告されている(Karaş et al., 2023Ratan et al., 2021).ICT利用時間や利用方法は,利用者の年齢により異なっており,情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省,2022)によると,60歳代のモバイルネット利用時間は,平日平均58.4分,休日平均59.2分であることが報告されている.しかしながら,高齢者に限定してICT利活用による健康や生活への影響を検討した報告は少ない.そこで,著者らは,高齢者におけるICT利活用に影響する背景因子やICT利活用による健康や生活への影響について検討するために要介護認定を受けていない地域在住高齢者を対象に2023年1月から1年ごとに質問紙調査を実施している.

ICT利活用による生活への影響に関する先行研究では,16歳から65歳以上の幅広い年齢を対象として1日のスクリーンタイムの長さ,または夜間のスクリーンタイムの長さが睡眠の質の低下に関連していることを報告している(Dissing et al., 2021)が,高齢者において睡眠とICT利用時間について報告したものはない.高齢者の睡眠は眠りが浅く,熟睡感が得られにくいという特徴がある(三島和夫,2015)ことから,高齢者における適切なICT利用時間を検討することが必要である.これまで,高齢者の睡眠が健康状態へ及ぼす影響として,短い睡眠時間や長い睡眠時間,不眠症状が認知機能(Dzierzewski et al., 2018)やうつ(Nielson et al., 2023)と関連していることや不眠症状は心臓病,体の痛み,記憶障害(Foley et al., 2004)と関連があることが報告されている.これらのことからも高齢者において適切な睡眠時間と睡眠の質を確保する必要があり,それに向けて適切なICT利用について検討することが重要である.

そこで本研究では高齢者のICT利活用の実態と健康状態,生活状況に関する経年的調査のベースラインデータを用いて,地域在住高齢者のICT利用時間と睡眠との関連について明らかにすることとした.本研究の結果は,高齢者の適切なICT利活用を検討するための一助となると考える.

Ⅱ. 目的

高齢者のICT利活用の実態と健康状態,生活状況に関する経年的調査のベースラインデータを用いて,地域在住高齢者を対象にICT利用時間と睡眠との関連について明らかにする.

Ⅲ. 方法

1. 研究デザイン

鹿児島県離島在住65歳から84歳の要介護認定を受けていない高齢者を対象に,高齢者のICT利活用の実態と健康状態,生活状況との関連について多角的に検討するために2022年度から経年的に自記式質問紙調査を実施している.本研究はそのベースラインデータを用いた横断研究である.

2. 対象者

2022年度のベースライン調査に参加した高齢者のうち,ICTを利用しているものを対象とした.

3. 調査方法

2023年1月にICT利活用の実態と健康状態,生活状況に関する自記式質問紙調査を実施した.研究協力依頼文と同意書,記名自記式質問紙,返信用封筒を郵送し,回答した質問紙と同意書は配布後2週間以内に返送してもらった.また,調査票には未記入等があった場合の連絡先として任意で電話番号を記載してもらい,後日,電話で確認した.得られた個人情報は番号を付し,匿名化した.個人と番号の対応表を作成し,施錠できる場所に厳重に保管した.また,番号を付したものと対応表は別々の場所で保管した.

4. 調査内容

自記式質問紙では,年齢,性別,主観的健康感,運動の実施状況,飲酒喫煙状況,フレイル,社会的孤立,主観的睡眠状況,睡眠習慣,ICTの利用状況について情報を得た.主観的健康感は4者択一「とても健康である・まあまあ健康である・あまり健康でない・健康でない」とした.運動の実施状況は実施している日数を4者択一「ほとんど毎日(週3~4日以上)・ときどき(週1~2日程度)・ときたま(月1~3回程度)・しない」,実施時間を4者択一「30分未満・30分以上1時間未満・1時間以上2時間未満・2時間以上」とした.飲酒状況は4者択一「毎日飲む・時々飲む・過去に飲んでいた・飲まない」,喫煙状況は3者択一「吸う・過去に吸っていた・吸わない」とした.フレイルの判定は基本チェックリストを用いて(Satake et al., 2017),評価した.このチェックリストは手段的・社会的ADL,運動・転倒,栄養状態,口腔機能,閉じこもり,記憶・物忘れ,抑うつ・気分の7つの領域から構成されている.総合得点が7点以下をフレイル「なし」,8点以上をフレイル「あり」とした.社会的孤立は日本語版Lubben Social Network Scale:LSNS-6短縮版(以下,LSNS-6)(栗本ら,2011)を用い,12点未満を「社会的孤立あり」,12点以上を「社会的孤立なし」とした.主観的睡眠状況は過去1カ月における平均的な1日の睡眠時間と入眠潜時を分単位で回答してもらった.先行研究では,自己申告された睡眠時間と客観的に測定された睡眠時間は相関関係がある(Lockley et al., 1999Signal et al., 2005)と言われており,自己申告による睡眠時間や入眠潜時は,睡眠に関する研究ではよく用いられる方法(Niijima et al., 2016Masumitsu et al., 2022)である.また睡眠薬内服の頻度について4者択一「なし・1週間に1回未満・1週間に1~2回・1週間に3回以上」とした.ICTの利用状況は,現在利用しているICTの種類を「スマートフォン・タブレット型端末・携帯電話(ガラパゴス携帯)/PHS・パソコン・その他・使っていない」の選択肢の中から該当するものをすべて選択してもらった.本研究では,ICT利用時間はスマートフォンとタブレットの使用とした.ICT利用時間は1日の合計とし,4者択一「約1時間未満・1~2時間程度・3~4時間程度・5時間以上」とした.ICT利用内容については「メール・電話・ブログやニュースの閲覧・情報検索・動画視聴・LINE(ライン)・インスタグラム・フェイスブック・Zoom(ズーム)・Skype(スカイプ)・オンライン診療・健康アプリ・その他」の選択肢から該当するものをすべて選択してもらった.

5. 分析方法

自己申告されたICT利用時間と対象者の特徴について,χ2検定またはFisherの正確確率検定をおこなった.次に睡眠時間,入眠潜時を従属変数,ICT利用時間を独立変数としてロジスティック回帰分析をおこない,オッズ比(以下,OR)と95%信頼区間(以下,95%CI)を算出した.モデルに含める変数は年齢,性別に加えて,先行研究で従属変数と関連することが報告されているもの,本研究の単変量解析の結果で有意な関連または境界域の有意性を示したものとした.なお,解析の前には,変数間の相関係数を算出し,相関の高い(r ≧ 0.7)変数についてはどちらか一方をモデルに投入することとした.分析にはIBM SPSS statistics26.0を用い,有意水準5%未満を有意,10%未満を境界域の有意性とした.

分析においては,連続変数の年齢は対象者全体の3分位とした.カテゴリ変数の主観的健康感は「とても健康である・まあまあ健康である」を「健康」,「あまり健康でない・健康でない」を「不健康」,運動は「30分以上の運動を3日以上している」を「あり」と「30分未満と3日以下」を「なし」,飲酒は「毎日飲む・ときどき飲む」を「現在飲酒」と「過去飲んでいた・飲まない」を「現在非飲酒」,喫煙は「吸う」を「現在喫煙」,「過去に吸っていた・吸わない」を「現在非喫煙」とした.主観的睡眠状況の睡眠時間は2分位し,「7時間未満」と「7時間以上」,入眠潜時は先行研究(Dew et al., 2003北濃ら,2013)を参考に「30分未満」と「30分以上」とした.睡眠薬内服は「なし」と「1週間に1回未満1週間に1回未満・1週間に1~2回・1週間に3回以上」を「あり」とした.ICT利用時間は「1時間未満」と「1~2時間程度・3~4時間程度・5時間以上」を「1時間以上」とした.

6. 倫理的配慮

対象者へ研究の参加は自由意思であること,協力を拒否する場合や撤回する場合に不利益を被らないこと,得られたデータは個人が特定されないことなどを文書により説明し,文書による同意を得た.本研究は,鹿児島大学桜ケ丘地区疫学研究等倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号220181疫).

Ⅳ. 結果

2023年1月の自記式質問調査を1,562名に配布し,回答が得られたものは324名であった.そのうち,ICT利活用者は235名(72.5%)で,ICT利用時間の設問に回答の得られた202名を分析対象者とした.

1. ICTの利用状況

ICT利活用者の性別は男性92名(45.5%),女性107名(53.0%),未回答3名(1.5%)であった.年齢の平均値(標準偏差)は,男性が72.1(±4.1)歳,女性が71.6(±4.3)歳であった.1日のICT利用時間は1時間未満110名(54.5%),1~2時間程度62名(30.7%),3~4時間程度22名(10.9%),5時間以上8名(4.0%)であった.ICT利用内容は,電話98.5%,メール81.7%,LINE 80.2%,情報検索59.4%,ブログやニュースの閲覧39.6%,動画視聴36.6%,フェイスブック8.9%,インスタグラム4.5%,健康管理アプリ6.4%,zoom・skype 5.4%,オンライン診療0.5%であった.

2. ICT利用時間と対象者の特徴

ICT利用時間と対象者の特徴を表1に示す.ICT利用時間が1時間以上群は1時間未満群に比べて65~70歳の割合が有意に高く(p = 0.037),睡眠時間が有意に短かった(p = 0.046).また,1時間以上群は1時間未満群に比べて睡眠薬内服をしている境界域の有意性を示した(p = 0.087).

表1 ICTの利用時間と対象者の特徴

ICT利用時間 p
1時間未満
n = 110
1時間以上
n = 92
性別
男性 53(49.1) 39(42.9) 0.381
女性 55(51.8) 52(57.1)
年齢
65~70歳 40(37.0) 50(54.9) 0.037
71~75歳 46(42.6) 26(28.6)
76歳以上 22(20.4) 15(16.5)
世帯構成
独居 16(14.8) 17(18.7) 0.465
独居以外 92(85.2) 74(81.3)
飲酒
現在非飲酒 51(46.4) 32(35.2) 0.108
現在飲酒 59(53.6) 59(64.8)
喫煙歴
現在非喫煙 104(94.5) 86(94.5) 1.000*1
現在喫煙 6(5.5) 5(5.5)
主観的健康感
健康である 97(89.0) 80(87.0) 0.658
健康でない 12(11.0) 12(13.0)
運動習慣
なし 40(37.7) 37(41.6) 0.585
あり 66(62.3) 52(58.4)
フレイル
なし 89(90.8) 76(89.4) 0.750
あり 9(9.2) 9(10.6)
社会的孤立
なし 96(88.9) 82(90.1) 0.780
あり 12(11.1) 9(9.9)
睡眠薬内服
なし 98(89.9) 75(81.5) 0.087
あり 11(10.1) 17(18.5)
睡眠の質
良好 85(78.7) 64(69.6) 0.139
不良 23(21.3) 28(30.4)
睡眠時間(分) 430.0 ± 70.6 413.6 ± 59.4 0.046*2
入眠潜時(分) 20.6 ± 16.5 24.6 ± 23.6 0.175*2

χ2検定またはFisherの正確確率検定*1,Mann-WhitneyのU検定*2

表中の値はn(%),nは回答数により異なる.

3. ICT利用時間と睡眠との関連

全体の睡眠時間の平均値は424.9分,中央値は420.0分であった.入眠潜時は平均値22.4分,中央値15.0分であった.

睡眠時間を従属変数として,年齢,性別,飲酒の状況,喫煙の有無,睡眠薬内服の有無,主観的健康感,運動習慣,フレイルで調整した.調整変数は年齢,性別の他に単変量でICT利用時間と境界域の有意性があった睡眠薬の内服,単変量で睡眠時間と有意な関連のあったフレイル(p = 0.029),先行研究で睡眠時間と関連があることが報告されている飲酒(Ebrahim et al., 2013),喫煙歴(Htoo et al., 2004),主観的健康感(Midorikawa et al., 2022),運動習慣(Dzierzewski et al., 2014)とした.結果を表2に示す.女性(OR: 0.32, p = 0.009)や現在喫煙のもの(OR: 0.17, p = 0.013),フレイルのもの(OR: 0.22, p = 0.012)は睡眠時間7時間以上であることに対するORが有意に低かった.主観的健康感が健康でないものは睡眠時間7時間以上であることに対するORが高く,境界域の有意性を示した(OR: 3.50, p = 0.069).ICT利用時間が1時間以上のものは1時間未満のものに比べて,睡眠時間7時間以上であることに対するORが低下し,境界域の有意性を示した(OR: 0.49, p = 0.051).入眠潜時を従属変数として,年齢,性別,飲酒の状況,喫煙の有無,睡眠薬内服の有無,主観的健康感,運動習慣,フレイル,社会的孤立で調整した.調整変数は,年齢,性別,単変量でICT利用時間と境界域の有意性があった睡眠薬の内服,単変量で入眠潜時と有意な関連のあった主観的健康感(p < 0.0001),フレイル(p < 0.0001),社会的孤立(p = 0.001),先行研究で睡眠時間と関連があることが報告されている飲酒(Ebrahim et al., 2013),喫煙歴(Htoo et al., 2004),運動習慣(Dzierzewski et al., 2014)とした.結果を表3に示す.睡眠薬を内服しているもの(OR: 6.97, p = 0.001),社会的孤立のあるもの(OR: 4.20, p = 0.015)は入眠潜時が30分以上であることに対するORが有意に高かった.運動習慣のあるもの(OR: 1.89, p = 0.084),フレイルのもの(OR: 3.15, p = 0.070)も入眠潜時が30分以上であることに対するORが高く,境界域の有意性を示した.また,ICT利用時間と入眠潜時との関連は認められなかった(OR: 0.95, p = 0.896).

表2 睡眠時間とICT利用時間との関連

独立変数 未調整モデル 調整モデル
OR* (95%CI) p OR* (95%CI) p
性別
男性 1 1
女性 0.41 (0.22~0.76) 0.005 0.32 (0.14~0.75) 0.009
年齢
65~70歳 1 1
71~75歳 1.21 (0.62~2.40) 0.573 0.74 (0.34~1.65) 0.465
76歳以上 1.00 (0.44~2.28) 0.994 0.47 (0.17~1.26) 0.132
飲酒
現在非飲酒 1 1
現在飲酒 0.71 (0.39~1.28) 0.254 1.12 (0.51~2.46) 0.784
喫煙歴
現在非喫煙 1 1
現在喫煙 0.40 (0.12~1.36) 0.143 0.17 (0.04~0.69) 0.013
睡眠薬内服
なし 1 1
あり 0.63 (0.28~1.43) 0.269 1.15 (0.41~3.23) 0.797
主観的健康感
健康である 1 1
健康でない 1.96 (0.69~5.54) 0.204 3.50 (0.91~13.47) 0.069
運動習慣
なし 1 1
あり 0.77 (0.42~1.41) 0.391 0.83 (0.40~1.73) 0.622
フレイル
なし 1 1
あり 0.34 (0.13~0.92) 0.034 0.22 (0.07~0.72) 0.012
ICT利用時間
1時間未満 1 1
1時間以上 0.63 (0.35~1.14) 0.128 0.49 (0.24~1.00) 0.051

OR: odds ratio, CI: confidence interval

*睡眠時間7時間以上に対するOR

調整モデル:年齢,性別,飲酒,喫煙,睡眠薬内服,主観的健康感,運動習慣,フレイルの有無で調整

表3 入眠潜時とICT利用時間との関連

独立変数 未調整モデル 調整モデル
OR* (95%CI) p OR* (95%CI) p
性別
男性 1 1
女性 0.69 (0.39~1.24) 0.220 0.55 (0.34~1.27) 0.158
年齢
65~70歳 1 1
71~75歳 0.91 (0.47~1.76) 0.786 0.97 (0.44~2.15) 0.949
76歳以上 1.33 (0.61~2.92) 0.471 1.21 (0.45~3.22) 0.704
飲酒
現在非飲酒 1 1
現在飲酒 1.04 (0.58~1.85) 0.905 1.02 (0.45~2.32) 0.960
喫煙歴
現在非喫煙 1 1
現在喫煙 0.69 (0.71~2.73) 0.591 0.51 (0.10~2.48) 0.402
睡眠薬内服
なし 1 1
あり 7.09 (2.70~18.65) <0.0001 6.97 (2.23~21.77) 0.001
主観的健康感
健康である 1 1
健康でない 2.14 (0.74~3.79) 0.220 0.95 (0.32~2.82) 0.926
運動習慣
なし 1 1
あり 1.89 (1.04~3.44) 0.037 1.89 (0.92~3.88) 0.084
フレイル
なし 1 1
あり 5.11 (1.73~15.05) 0.003 3.15 (0.91~10.87) 0.070
社会的孤立
なし 1 1
あり 2.76 (1.07~7.11) 0.036 4.20 (1.32~13.40) 0.015
ICT利用時間
1時間未満 1 1
1時間以上 0.99 (0.56~1.77) 0.98 0.95 (0.46~1.96) 0.896

OR: odds ratio, CI: confidence interval

*入眠潜時30分以上に対するOR

調整モデル:年齢,性別,飲酒,喫煙,睡眠薬内服,主観的健康感,運動習慣,フレイル,社会的孤立の有無で調整

Ⅴ. 考察

本研究の調査に参加した対象者のICT利用時間は1時間未満が約半数(54.5%)を占め,1~2時間が30.7%,3~4時間が10.9%,5時間以上が4.0%であった.情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省,2022)によると,60歳代のモバイルネット利用時間は,平日平均58.4分,休日平均59.2分であることが報告されている.

ICT利用時間と睡眠の関連について,本研究においては,1時間以上ICT利用時間は7時間未満の睡眠と(p = 0.051)関連があることが明らかとなった.先行研究において,高齢者に限定してICT利用時間と睡眠時間や入眠潜時との関連を報告したものはないが,18歳以上の平均48.2歳を対象とした夜間のICT利用時間における調査では,自己申告された就寝時間,就寝1時間後,就寝時間から起床時間までの睡眠中において,ICT利用時間が長いほど,睡眠効率が低下し,入眠潜時が延長することが報告されている(Christensen et al., 2016).本研究におけるICT利用時間は自己申告によるものであるが,対象者の8割以上がメールやLINE,6割程度が情報検索,4割弱がブログ閲覧や動画視聴でICTを利用していたことから,ICT利用時間と睡眠時間との関連には,スクリーンタイムが影響している可能性がある.本研究では,ICT利用時間と入眠潜時との関連についても検討したが,有意な差は認められなかった(p = 0.591).Christensen et al.(2016)は,客観的に測定されたスクリーンタイムを反映したICT利用時間とピッツバーグ睡眠質問票による入眠潜時の関連も検討しているが,有意差は認められていない(Christensen et al., 2016).ICT利用時間と入眠潜時の関連については,ICTを利用する時間帯も考慮して検討していく必要がある.

先行研究では,65歳以上を対象にしたICT利用時間と睡眠の質との関連について,スマートフォン利用時間が長いものはスマホ依存症との関連があり,スマホ依存症のものは睡眠の質が低いことが報告されている(Karaş et al., 2023).また,18歳から30歳の平均年齢21.1歳を対象とした先行研究において,1日のICT利用時間が3時間のものに比べて2時間以下のものはピッツバーグ睡眠質問票による睡眠の質が38%よいこと(Sohn et al., 2021)や16歳から65歳以上の対象者を含む調査では,日中と夜間の両方においてICT利用時間の延長が睡眠の質に影響していることが報告されている(Dissing et al., 2021).これらのことから,ICT利用時間の延長は,将来的にはスマホ依存症や睡眠の質にも影響するといえる.今後,高齢者のICT利活用は増大することが予測されており,高齢者の生活や健康への影響を考慮した適切な利用時間や利用方法の検討が急務である.

本研究の限界として,主観的なICT利用時間を想起し,回答したデータであるため,ICT利用時間の測定精度に情報バイアスがあった可能性も否定できない.また,ICT利用時間1時間をカットオフ値として分析をしたが,今回の調査では65歳以上のICT利用時間は他の年齢層と比較して短く,その利用時間の選択肢を「1時間未満」「1~2時間程度」「3~4時間程度」「5時間以上」としたため,どのくらいのICT利用時間が睡眠へ影響を及ぼす可能性があるのかは言及できないことがある.さらに,本研究の結果の解釈には,本研究の調査ではICTを利用する時間帯やICTの利用内容ごとに正確な利用時間を測定していないが,ICTの種類をスマートフォンまたはタブレットに限定していること,対象者の8割以上がメールやLINE,6割程度が情報検索,4割弱がブログ閲覧や動画視聴でICTを利用していたことから,ICT利用時間と睡眠時間との関連には,スクリーンタイムが影響している可能性があることを考慮する必要がある.今後は,ICT利用時間については利用内容ごとの時間やスクリーンタイム,睡眠時間を客観的に測定したデータを用いて,生活や健康への影響を多角的に検討するなど,さらなる研究の蓄積が必要である.

Ⅵ. 結論

地域在住高齢者において,ICT利用時間が1時間以上のものは睡眠時間が7時間未満である傾向が明らかとなった.また,ICT利用時間と入眠潜時の関連は認められなかった.

謝辞:本研究にご協力していただきました研究参加者の皆様に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:TMは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,考察,論文執筆を行った.YSは,研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,考察,論文に加筆・修正を加えた.MS,YAは,分析,結果,考察に助言し,論文に加筆・修正を加えた.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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