目的:来日中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがいを明らかにする.
方法:日本で看護師として働いている中国人看護師8名にインタビュー(半構造化面接法)を行い,質的帰納的に分析した.
結果:インタビューから6つのカテゴリーが導き出された.a【日本での看護実践を通じた専門的なスキルの習得】,b【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】,c【日本の看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献する】,d【患者・家族への将来の生活を考慮した退院支援での充実感】,e【日本人の仲間と安定した職場環境の中で得られる喜びと充実感】,f【日本での文化や暮らしから得られる安心感】であった.
結論:異なる文化や環境下での経験を通じて,看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献するなど自己肯定感とやりがいをもたらしていた.専門的スキルの獲得や患者との信頼関係構築を含む様々な要素が中国人看護師にとって重要であることが明らかになった.
Purpose: To clarify the rewarding of Chinese nurses in Japan in their nursing practice in Japan.
Methods: Semi-structured interviews were conducted with eight Chinese nurses working as nurses in Japan and analyzed qualitatively inductively.
Results: Six categories were derived from the interviews: a [Acquiring professional skills through nursing practice in Japan] b [Building trust through care and communication with patients] c [Adapting to various settings of nursing practice in Japan and contributing as a nurse] d [Fulfilment in supporting patients and families in their future lives e [Fulfilment in discharge support] e [Joy and fulfilment gained in a stable work environment with Japanese colleagues] f [Peace of mind gained from the culture and life in Japan].
Conclusion: Through their experiences in different cultures and environments, the participants adapted to the diverse settings of nursing practice and contributed as nurses, bringing a sense of self-affirmation and fulfilment. Various factors, including the acquisition of professional skills and building trusting relationships with patients, were found to be important for Chinese nurses.
日本では急速に少子・高齢化が進んでおり,総人口は1億2,617万人,65歳以上人口(高齢化率)は3,589万人(28.4%)となった(2019年10月1日現在).そのような中,2025年に必要とされる看護職員は約196~206万人(厚生労働省,2023)であり,看護職員の需要量は供給数を上回り,看護職員の不足が懸念されている.人口減少や労働力不足が深刻な社会問題となりつつある中で,今後,外国人看護師が益々増加することが予想される.こうした日本の現状から,医療機関や福祉施設では,直接海外から看護師や介護福祉士になる留学生や研修生を受け入れ,日本人看護師とともに働き,共に看護が展開されている.日本では2008年からインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から外国人看護師の受け入れに関し,経済連携協定であるEPAが開始された(JICWELS, 2021)が,日本語学習の経費など,支援態勢も十分とはいえず,日本語能力の不足が指摘されている(卜,2017).日本の看護師籍に登録されたEPA看護師は2009~2022年現在までに573名となり,日本で就業する看護師の0.07%である.
その一方で,EPA枠以外の中国からの看護師候補生の受け入れも急速に進んでいる.中国人看護師が来日して看護師資格取得までのルートが複数存在し,公的に公開している情報がないため,中国人看護師は現在どれほど日本に存在しているのか把握しにくい現状にある.中国人が来日後2年以内に看護師国家試験に合格することが求められており,受験前に日本語能力試験(国際交流基金など主催)の最上位のN1に合格しなければならない(卜,2017)にもかかわらず,中国人看護師日本での看護師国家試験の合格率は88.4%であり(一般社団法人国際人材開発,2020),日本人の看護師国家試験の合格率と近い現状にある.
中国人看護師の日本での看護実践における異文化ケアとコミュニケーションの困難について,多くの先行研究がその要因を明らかにしている.飯田・酒井(2012)および古川ら(2012)は,外国人看護職が抱える最大の課題として日本語能力の不足を指摘しており,日常会話に問題はないものの,看護業務に必要な読み書きや専門用語の理解が不足していることが業務遂行の障壁となっていることを示している.この点について,特に大谷(2018)や文・中谷(2023)は,与薬技術における日本語での確認作業の重要性に着目し,誤薬防止や薬剤のダブルチェックにおけるコミュニケーション能力の不足が,診療補助技術を円滑に行うための大きな課題であることを強調している.さらに,急性期病棟での業務においては,医師や看護師からの迅速な口頭指示に対応する必要があり,これに応じるための臨機応変な判断力が求められるが,日本語でのコミュニケーション能力が低いことが,臨床判断を妨げる要因となり,看護管理者にとっても不安材料となっている(大谷,2018;文・中谷,2023).これに対して,戸塚(2009)は,外国人看護師がどれほど有能であっても,コミュニケーションが取れなければその能力を十分に発揮できないと指摘している.
そして,外国人看護師との協働については,中村ら(2013)は,言語理解が不可避の課題であるとし,成瀬・石川(2013)は,外国人看護師の能力に応じた研修や日本語能力向上のための質保証システムの構築の必要性を示唆している.これらの研究により,日本の看護現場で外国人看護師が適応するためには,日本語能力とコミュニケーションスキルの強化が不可欠であることが明らかとなっている.
このように中国人看護師は,比較的高い国家試験合格率を保持し,臨床実践に出る看護師も多いと推測されるが,先行研究では来日中国人看護師の日本での看護実践における困難に着目している研究が多い.それらの先行研究に関して困難をまとめると,4つの困難が明らかとなった.一つ目はコミュニケーションの困難である.二つ目は専門用語の難しさである.三つ目は文化理解の難しさである.四つ目は日本と中国の看護実践の違いである.
看護師は他の職業と比べ,厳密なコミュニケーションを要求され,活動する国の母語において高いレベルが要求される.コミュニケーションの問題と同時に職場での人間関係も含め,言葉の問題を克服し,仕事上のやりがいを明らかにし,やりがいを感じながら看護実践の向上に努める必要があると考える.
コミュニケーションの問題と同時に,看護実践の場では急性期,慢性期,所属される部門の違いによって,仕事上の大変さも楽しさも存在していた.日本人看護師の看護実践におけるやりがいに着目すると,中村ら(2001)は,仕事のやりがいについて,患者との信頼関係,仕事の達成,患者以外からの努力の承認など6つの要素が関係していると報告している.三浦ら(2002)は,職務満足感の関連要因として,「仕事のやりがい」「仕事の達成感」「仕事の面白さ」などの8要因があるとし,職務満足は精神的健康に関与することを明らかにしている.また,撫養ら(2011)は,一般病棟に勤務する看護師の職務満足を構成する概念として「仕事に対する肯定感情」「専門職としての自律」「仕事の成果の確認」など6つの概念を明らかにしている.「仕事のやりがい」は,職務満足の構成要素となっており,やりがいを感じている者ほど職務満足度が高い(亀岡ら,2001)と報告している.更に田村ら(2007)は,看護師が質の高い看護を提供していくためには,看護師の仕事への満足感を高める必要があるとしている.中国人看護師にも,日本人看護師と同様に,日本での看護実践におけるやりがいが共通しているのではないかと考えた.
来日中国人看護師が日本で行う看護実践の困難ばかりではなく,やりがいに着目したいと考えるようになった.日本に来て体験できる看護のやりがいを明らかにすれば,日本へ行きたいと考える中国人看護師に希望を与えることができると感じたのである.更に,それらが明らかになれば,日本人看護師と中国人看護師の異文化コミュニケーションが促進され,協働し,看護を実践できるようになるのではないかと考えた.それらは本研究の意義でもあると考える.図1は研究の枠組みである.

来日中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがいを明らかにする.
中国人看護師
中国国籍を有し,中国で看護系大学を卒業し,日本語能力試験N1に合格し,日中の看護師国家免許を取得し日本国内の医療機関で看護師として働く者(森・田中,2021).
外国人看護師
日本語以外の言語を母語としている人で日本の看護師資格を持ち,かつ医療機関に勤務している看護師(大谷,2018).
日本での看護実践におけるやりがい
看護師のやりがいに関する先行研究では,やりがいの定義を仕事を達成していく過程で喜びや,手ごたえ(福岡,2007),満足感(松原,2014)としている(千葉ら,2019).本研究において,日本での看護実践におけるやりがいとは,中国人看護師が日本での看護実践の中で感じる喜び,手ごたえ,満足感と定義した.
質的帰納的研究とし,内容分析の手法を参考し計量テキスト分析を行った.質的分析手法では扱うことのできるテキストデータの量に限界があり,データが大規模になれば全体像を把握するのは難しく,人手による記述内容の分類だけでは,見落としや主観による偏りが問題になることが指摘されている.本研究は質的帰納的研究とし,計量的テキストマイングを活用し分析を行った.同一の質的データに対し質的分析と量的分析の両方を行い,互いの結果を相互に比較,補完すれば,より信頼性のある成果が得られる可能性は大きい(町田,2019)と考えた.
2. 研究対象日本で看護師として3~5年活動している中国人看護師である.機縁法を用いて,対象者は研究責任者が日本語学校に所属した際の同級生あり,日本で看護師として3~5年活動している中国人看護師とした.同級生のメーリングリストを活用し,大阪近郊に居住する中国人看護師に対し,研究への参加を募った.同級生のメーリングリストにより返信のあった研究対象者候補者に対し,面接の予定を調整し,ZOOMを用いて研究説明書を共有し,説明した.研究対象者候補者から研究の内諾が得られた場合,研究説明書を郵送する旨を説明し,住所,電話番号,メールアドレスをZOOMのチャット画面に入力していただいた.また,同意書は1週間程度で返信いただきたい旨を説明した.その後,研究責任者から研究対象者候補者へ研究説明書,同意書を郵送した,同意書の返信をもって,研究対象者とした.調査は匿名性を担保するために,個人が特定されないようにプライバシーの保護を確約した.
3. 調査方法日本語を用い,対面またはZOOMでインタビュー半構造化面接法を行った.インタビュー内容(表1)は,参加者の許可の下,録音した.日本語で表現しにくい内容については中国語を用いてインタビューを行った.中国語を用いて行ったインタビュー内容については,翻訳を行う際に,中国語,日本語に精通した研究責任者から,翻訳した日本語の表現確認を依頼し,文脈について意見をいただいた,語彙を損なわないようにした.
1.「〇〇さんについて教えてください」 1)「年齢,学歴について教えてください」 2)「中国で看護師として活動した年数とその内容について教えてください」 3)「日本で看護師として来日した理由と活動年数,働き続ける理由について教えてください」 2.「日本の看護実践の場で一番印象に残っていることは何ですか?」 3.「日本の看護実践の場で文化の違いを感じた時はどんな時ですか?」 4.「中国で経験できなくて,日本の看護実践ですごいな,いいなと感じた事を教えてください」 5.「日本の患者さんとの関わりでうまくいっているなと実感した場面を教えてください」 6.「日本の看護実践の場で,これが「看護ということかな」と思った事を教えてください」 7.「最後の質問です,中国にはない日本の看護実践でのやりがいについて教えてください」 |
調査期間:令和5年6月16日~令和5年8月末日
5. 分析方法インタビューの逐語録から,中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがいに関する内容を抽出した.文章を構成するコード,コーディングによって具体的な文字データに対してコードを割り当てた(佐藤,2008).次に,質的帰納的に分析し,共通する意味によりコードとしてまとめ,抽象度を上げてサブカテゴリー化し,更に共通する概念としてカテゴリーを生成した.コーディングとカテゴリー化は,文字データに対して小見出しをつけ,文字データに含まれる情報を失わずに圧縮した(佐藤,2008).調査対象者へ分析結果をフィードバックして結果の信頼性の確保に努め,指導教員と副指導教員計3名で厳密な分析を行い,確証性を確保した.また,KH Coder(ver. 3.00)(樋口,2020)を用いて,構造化されていないテキストデータの①形態素解析 ②5回以上の頻出語の抽出 ③共起ネットワークの作成 ④サブグラフについて意味内容が類似したものをグループ化する過程を通じて,質的帰納的分析の客観性を向上させた.
来日中国人看護師が感じた日本での看護実践におけるやりがいインタビューについて,計量テキスト分析を行った.インタビューで得られた音声をテキスト化したところ,テキストデータの総文字数は14,987字であり,文の総数は265文,総抽出語数は6,908語(うち分析に使用するものは2,848語)であり,異なる語数は1,183語(うち分析に使用するものは933語)であった.インタビュー内容を熟読し,本研究者及び研究分析者2名で慎重に検討した結果,研究の内容を明確かつ効果的に伝えるために必要な語数を2,848語に決定した.
インタビュー5語以上の抽出語(表2)をみると,「看護」123回,「日本」95回,「患者」89回であった.上位の抽出語をみると,「中国」,「働く」,「仕事」,「来る」,「人」など,中国人看護師としての仕事に関する内容が上位の抽出語であった.
| 抽出語 | 出現回数 | 抽出語 | 出現回数 | 抽出語 | 出現回数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 看護 | 123 | 語 | 10 | 新しい | 6 |
| 日本 | 95 | 交換 | 10 | 進む | 6 |
| 患者 | 89 | 処置 | 10 | 精神 | 6 |
| 思う | 66 | 専門 | 10 | 選ぶ | 6 |
| 中国 | 58 | 本人 | 10 | 伝える | 6 |
| 働く | 30 | 違い | 9 | 内容 | 6 |
| 仕事 | 27 | 環境 | 9 | 認知 | 6 |
| 来る | 27 | 関係 | 9 | 変わる | 6 |
| 人 | 24 | 急性 | 9 | 話 | 6 |
| 病院 | 24 | 見る | 9 | びっくり | 5 |
| いま | 23 | 時間 | 9 | カンファレンス | 5 |
| 家族 | 23 | 電話 | 9 | スタッフ | 5 |
| 入院 | 23 | 病気 | 9 | ハイケア | 5 |
| 生活 | 22 | ケア | 8 | 悪い | 5 |
| 退院 | 22 | 一緒 | 8 | 安心 | 5 |
| 言う | 20 | 飲む | 8 | 一番 | 5 |
| 行く | 20 | 今年 | 8 | 家 | 5 |
| 自分 | 19 | 使う | 8 | 確認 | 5 |
| 前 | 19 | 施設 | 8 | 好き | 5 |
| 違う | 17 | 身の回り | 8 | 考える | 5 |
| 訪問 | 17 | 説明 | 8 | 国 | 5 |
| リハビリ | 16 | 年 | 8 | 残る | 5 |
| 多い | 16 | ほか | 7 | 自宅 | 5 |
| 対応 | 16 | 医師 | 7 | 自由 | 5 |
| 支援 | 15 | 感じ | 7 | 実習 | 5 |
| 病棟 | 15 | 慣れる | 7 | 取れる | 5 |
| 急変 | 14 | 観察 | 7 | 受ける | 5 |
| 学校 | 13 | 業務 | 7 | 職場 | 5 |
| 帰る | 13 | 持つ | 7 | 新人 | 5 |
| 最初 | 13 | 手術 | 7 | 声 | 5 |
| 世話 | 13 | 全部 | 7 | 全然 | 5 |
| 先輩 | 13 | 動ける | 7 | 他 | 5 |
| 聞く | 13 | 風呂 | 7 | 大事 | 5 |
| おむつ | 12 | 文化 | 7 | 地域 | 5 |
| 一つ | 12 | 毎日 | 7 | 注射 | 5 |
| 結構 | 12 | 名前 | 7 | 丁寧 | 5 |
| 先生 | 12 | 免許 | 7 | 調整 | 5 |
| 卒業 | 12 | トイレ | 6 | 特に | 5 |
| 勉強 | 12 | リーダー | 6 | 評価 | 5 |
| お家 | 11 | 医療 | 6 | 毎日 | 5 |
| 介護 | 11 | 印象 | 6 | 理由 | 5 |
| 介助 | 11 | 覚える | 6 | IC | 4 |
| 回復 | 11 | 楽しい | 6 | ありがとう | 4 |
| 感じる | 11 | 気持ち | 6 | お金 | 4 |
| 治療 | 11 | 取る | 6 | そうですね | 4 |
| 場合 | 11 | 出る | 6 | やり方 | 4 |
| 食事 | 11 | 状況 | 6 | コミュニケーション | 4 |
| 点滴 | 11 | 状態 | 6 | ドイツ | 4 |
| 入る | 11 | 食べる | 6 | ドラマ | 4 |
| 薬 | 11 | 信頼 | 6 | バイタル | 4 |
共起ネットワークの構造に基づいて抽出された各カテゴリーに,特徴を表すネーミングを行った.それらのネーミングを行う過程においては,アンケート記述内容を読み込み,質的記述的に分析する過程において,先入観に取らわれずに量的にテキスト分析を行い,導き出された共起ネットワーク図との関連性を捉えながら,カテゴリーを導き出す客観性,妥当性の向上に努めた.それぞれの語句の結びつきについて,共起ネットワークの構造と質的帰納的分析から得られたサブカテゴリー,カテゴリーを検討し重みづけを行った.
6. 倫理的配慮本研究は,東京医療保健大学ヒトに関する研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:院023-01A-R1)(承認日:令和5年6月16日).協力が得られなくてもなんら不利益はないよう選択における任意性を確保した.調査に賛同するか否かも自由であり,同意書の提出をもって同意となすこと,提出後の協力中止をできること研究説明書に付記した.結果は個人が特定されないこと,研究以外にデータを使用しないこと,プライバシーの保護を確約する.また,分析の都合から同意撤回書は令和5年9月末着までに撤回できる旨を研究説明書,同意書,同意撤回書に記載した.
インタビューに参加した8名を表3に示す.対象者は8名であり,年齢は28~38歳,平均年齢(標準偏差)は30.1 ± 3.3歳であった.在日期間は6~7年で平均6.8年,日本での実務経験は5年~6年であった.日本における看護師経験年数は5年が7名,6年が1名であった.8名全員が中規模病院に勤務していた.転職歴がある人は5名であった.面接時間は30分~60分行い,平均時間(標準偏差)は44.0 ± 10.5分であった.全員ZOOMを用いてインタビューを行った.追加インタビューは1回,3名に行った.最初の半構造化インタビューでうまく聞き出せなかった部分があったため,3名に追加インタビューを行った.
| 参加者 | 年齢(歳) | 性別 | 在日期間(年目) | 日本での看護師経験年数(年目) | 職場 | 転職歴 | 中国での学歴 | 中国での勤務経験 | ZOOMまた対面か | インタビュー時間(分) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 28 | 女 | 7 | 5 | 200床以上HCU | 1回 | 大学専科 | なし | ZOOM | 30 |
| B | 30 | 女 | 7 | 5 | 100床以上内科療養病棟 | なし | 大学専科 | なし | ZOOM | 54 |
| C | 31 | 女 | 6 | 5 | 200床以上急性期病棟 | 1回 | 大学本科 | 6か月 | ZOOM | 50 |
| D | 38 | 女 | 7 | 6 | 訪問看護 | 1回 | 大学本科 | 10年 | ZOOM | 60 |
| E | 29 | 女 | 7 | 5 | 100床以上急性期内科 | なし | 大学専科 | なし | ZOOM | 45 |
| F | 29 | 女 | 7 | 5 | 200床以上急性期病棟 | 1回 | 大学専科 | なし | ZOOM | 42 |
| G | 30 | 女 | 6 | 5 | 100床以上急性期病棟 | なし | 大学専科 | なし | ZOOM | 40 |
| H | 31 | 女 | 7 | 5 | 100床以下SCU | 1回 | 大学専科 | なし | ZOOM | 31 |
注:中国の大学専科は3年制大学で日本の短期大学に相当し,大学本科は4年制大学である.
本研究対象者である中国人看護師,若いうちに新しいことにチャレンジしたい,日本のアニメやアイドルなど多様な文化が好きで来日し,視野を広げることができるという体験を日本で重ね,給与面が満足できるという側面もあった.
2. インタビューから導き出された,来日中国人看護師が感じた日本での看護におけるやりがいインタビューから導き出された,来日中国人看護師が感じた日本での看護実践におけるやりがいは136コードあり,これらは6つのカテゴリーと23のサブカテゴリーにまとまった(表4).以下に,カテゴリーは【 】,サブカテゴリーは《 》,対象者の語り(コード)は「 」で記述する.
| カテゴリー | |
|---|---|
| サブカテゴリー | |
| a【日本での看護実践を通じた専門的なスキルの習得】 | |
| 《日本と中国の看護実践の違いから得られる専門的なスキルの習得》 | |
| 《日本語の専門用語を理解する》 | |
| 《家族やスタッフと電話対応から日本語能力を高める》 | |
| 《新たな出会いから看護師としての成長を実感する》 | |
| 《臨床での努力によって認められる喜びを実感する》 | |
| 《日本人の“遠回し”な言い方へ対処する》 | |
| b【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】 | |
| 《中国では行わない日常生活援助を通して患者と信頼関係を構築する》 | |
| 《患者の立場に立って気持ちを受容する》 | |
| 《看護ケアによって患者に気持ちを伝える》 | |
| 《患者やスタッフから感謝の言葉をいただき喜びを感じる》 | |
| c【日本の看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献する】 | |
| 《患者へのケアを通じて看護師としての役割を認識する》 | |
| 《急変前の兆候を見逃さずに対応する》 | |
| 《患者の回復と自立を支援する》 | |
| 《さまざまな看護の場を通じて,患者へケアを提供する》 | |
| d【患者・家族への将来の生活を考慮した退院支援での充実感】 | |
| 《退院支援を通じて患者将来の生活を考慮しながらケア提供する》 | |
| 《日本の充実した社会保障制度を活かし退院支援を行う》 | |
| e【日本人の仲間と安定した職場環境の中で得られる喜びと充実感】 | |
| 《仕事から喜びと充実感を得る》 | |
| 《日本での充実した労働環境と給料に満足する》 | |
| 《日本人の友人と関わりにより得られる充実感》 | |
| 《日本のアニメやアイドルなど多様な文化から得られる充実感》 | |
| 《新しいことにチャレンジできる日本の労働環境》 | |
| f【日本での文化や暮らしから得られる安心感】 | |
| 《食生活や暮らしの違いに慣れる》 | |
| 《日本の社会保障制度における労働者としての安心感》 | |
「来日中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがい」の共起ネットワークの構造を図2に示す.質的帰納的分析と計量テキスト分析に精通した研究者と共に検討し,最終的にカテゴリーa【日本での看護業務を通じた専門的なスキルの習得】,b【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】,c【日本の看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献する】,d【患者・家族への将来の生活を考慮した退院支援での充実感】,e【日本人の仲間と安定した職場環境の中で得られる喜びと充実感】,f【日本での文化や暮らしから得られる安心感】を導き出された.

カテゴリーa【日本での看護業務を通じた専門的なスキルの習得】
「日本の看護と中国の看護が違い,日本の看護師は身の回りの世話をするが中国ではしない」,「中国と違って日本では看護師は身の回りの世話することで驚いた」,「看護ケアの違いによって文化の違いも感じた」など文化の違いで看護のやり方が違っていた.しかし日本で働く中国人看護師は,日本の看護に母国の看護との相違点を感じながらも,「日本の看護師は精神面も含めて,ケアしている」,「身の回りの世話しているところに責任感が強い,丁寧さある」と感じていた.《日本と中国の看護実践の違いから得られる専門的なスキルの習得》ということができた.またそれらを通じ,「専門用語などを学んで身についてうまく急変患者の対応ができて,やりがいを感じる」など《日本語の専門用語を理解》し,日本語能力を高めていた.
カテゴリーb【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】
「患者と関わって,価値観や人生観などいい面で影響されることがあった」,「患者は私のことを覚えてくれて,心配してくれて,うれしさ感じる」などから一生懸命看護師として仕事する気持ちが患者に伝わり,温かく見守ってくれていると感じていた.また「患者とのコミュニケーションが大切で,耳をすませば情報収集もできる」,「処置前に声かけをして,きちんと説明し,そして患者に耳を傾け,傾聴ということが大事である」ということから《中国では行わない日常生活援助を通して患者と信頼関係を構築する》ことを経験していた.「ありがとうと言ってくれると,やりがいを感じる,患者だけではなく,スタッフにも」.「感謝の言葉など言われて,うれしい」など患者やスタッフから感謝の言葉をいただき,喜びを感じることにより,《患者やスタッフから感謝の言葉をいただき喜びを感じる》という自己肯定感の向上がもたらされていた.
カテゴリーc【日本の看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献する】
「動けない患者は,入院後しっかり看病のもとで,どんどん回復して,その回復状況を見届けるということはやりがいであること」,「身の回りの世話などして,患者のそばに付き添って丁寧に看護ケアを提供する」などから《患者へのケアを通じて看護師としての役割する》ことを認識でき,「患者一人ひとりに合わせて,患者の意思を尊重する」看護を提供していた.「おむつ交換,食事介助など,看護師の仕事かと疑問に思いつつ,患者に自分らしい生活できるようにする」など,日常生活のケアに対して丁寧に看護ケアをしていた.また,「患者に安心感を与えるために,勉強を重ねて,一人前の看護師を目指した」,「急変前の患者の病状悪化する特徴を見逃さず,すぐ対応できることがやりがい」,「急変前の患者の病状悪化する特徴の予測や,訪問看護場面での高齢者への危険予測」などから《急変前の兆候を見逃さずに対応する》とすることができた.
カテゴリーd【患者・家族への将来の生活を考慮した退院支援での充実感】
「入院前の情報を把握したうえで,患者一人ひとりに合わせて退院後の社会支援,地域包括ケア支援を行う」,「現状評価に伴い,多職種連携カンファレンスで,家族や患者の希望に沿って退院支援を行うことは中国はない」,「実際に患者は外泊して,退院調整をするところが素晴らしい」などから《退院支援を通じて,患者の将来の生活を考慮しながらケア提供する》ということを体験していた.
カテゴリーe【日本人の仲間と安定した職場環境の中で得られる喜びと充実感】
「スタッフと信頼関係を築いて,みんなが頼れる人で,やりがいの一つ」,「テキパキと急変患者の対応ができて,褒められたことがうれしい」.また「看護師としていろんなことを学んで,仕事中に活用できて,先輩に認められることが楽しい」,「認められて,自分のしていることがみんなに喜んでもらえることが好き」などから《仕事から喜びと充実感を得られた》という体験をしていた.
カテゴリーf【日本での文化や暮らしから得られる安心感】
「食べ物,飲み物が違う」「節分など文化の違いがある」という文化の側面から《食生活や暮らしの違いに慣れる》ことを体験していた.「安全性高い日本であり,安心して勉強ができる環境である」,「日本の福祉厚生が良い」ことから,《日本の社会保障制度における労働者としての安心感》を持ち,穏やかな生活の中で安心しながら勉強するという体験をしていた.
本研究対象者は20~30代であり,すべて女性看護師であった.来日平均年数は6~7年で,機縁法で研究対象者を募っていたということもあり,若い年齢層の中国人看護師が対象であった.本研究対象者はそれらの体験を積み重ね,キャリア形成を目指している中国人看護師であると考える.
2. 来日中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがい来日中国人看護師は異なる文化や環境下での経験を通じて,《専門的なスキルの習得》や自己成長を遂げることができている.文・中谷(2023)は,導尿の手順の処置のやり方が違うことや,中国では静脈注射を手背で行うのは不思議だと思われるように,母国との看護技術の基準の違いがある看護を体験していた.来日中国人看護師は日本人看護師と変わらない看護実践を行っていた.王・木内(2008)は,外国人看護師が他者とコミュニケーションする際に困難を感じているのは,患者とのコミュニケーション時においてよりも,むしろ職場の同僚とのコミュニケーション時においてであった.特に看護師になった最初の一年間,世界共通の用語のように見受けられる薬品名や医療器具名でさえも,表記の方法が異なると途端にコミュニケーションの大きな障壁になってしまう.そのため,日本ではカタカナで記載されている薬品名や医療器具名を覚えなおさなければならない.森・田中(2021)は,医師や看護師の指示が早口で聞き取れない,ナースコール対応への不安,医師や看護師の指示がすぐに理解できないといった患者や家族・医師や看護師を含めた他の医療スタッフとのコミュニケーションの困難もあった.一生懸命に日本語の勉強を通して,看護師への資格取得を果たし,様々な困難を乗り越え自分の目標に向かって前進していることがやりがいの一因であると考える.日本と中国の文化の違いを理解しつつ,新しいことを学び,徐々に成長できて,よい体験を積み重ねていくことがやりがいに繋がっていたのである.《日本と中国の看護実践の違いから得られる専門的なスキルの習得》,《日本語の専門用語を理解》,《家族やスタッフと電話対応から日本語能力を高める》ことができていた.現場で患者とコミュニケーションを通じて,信頼関係を築くことで得られることがやりがいである.《中国では行わない日常生活援助を通じて患者と信頼関係を構築する》ことを体験し,努力によって承認されることで誇りを感じることが《臨床での努力によって認められる喜びを実感する》ことに繋がると考える.
中国人看護師として,日本の看護実践を行う中で得られる専門的なスキルの獲得と向上が,やりがいと充実感をもたらす重要な要素であると考えられた.中国人看護師の日本での看護実践は,異なる文化や医療体系に触れる機会となる.日本語の専門用語を理解し,患者や医療スタッフとの円滑なコミュニケーションを図るための努力は,専門的なスキルの向上に直結している.それらの過程において,臨床現場での努力や貢献が患者や日本人看護師,そしてスタッフに認められた際には,自己成長や看護師としての存在意義を実感できることがやりがいに繋がっていると考えられた.
【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】は,患者のケアを通じた喜びが,看護実践における充実感をもたらしていた.日本の看護実践では,患者へのケアが技術的な側面だけでなく,人間的なつながりを築く重要な要素となり得るものであった.患者の立場に立ち,気持ちを汲み取りながら日々のケアを提供することで,患者やその家族からの感謝の言葉や信頼を得ることができることを実感していた.《看護ケアによって患者に気持ちを伝える》,《患者やスタッフかた感謝の言葉をいただき喜びを感じる》などこのような経験は,看護師としての自己肯定感や,やりがいをもたらしていた.
3. 異なる文化や環境での看護実践から得られる喜び八代(2009)は,仕事のやり方,ほめられ方,謝り方などの日常的な文化にも注目し,異文化コミュニケーションの中では私たちの常識が相手の常識でないことに直面すると報告している.母国と異なる日本における看護技術の習得の機会はもちろん,看護以外の日本の文化,日本人の価値観や生活習慣に関する教育も異文化看護を実践していくうえで重要であった(文・中谷,2023).異文化の環境下での看護実践を通じて,新たな視点やアプローチを獲得し,患者との関係を深めることができていた.そのような異文化での看護実践から得られる喜びについて考察する.まず,異文化での看護実践は,《新たな出会いや経験を通じて成長する》機会であった.日本の医療や看護の文化に触れることで,患者ケアにおけるアプローチの多様性を学んでいた.異なる文化からの経験を取り入れ,それを自身の看護実践に取り入れることで,患者に対するケアに新たな視点を持っていた.この過程で,患者にとってより適切なケアを提供するためのスキルを発展させ,それに伴う自己成長を感じることができていた.そして,異文化の看護実践を通じて患者との信頼関係を築いていた.異なる文化や習慣に対する理解を促進させ,《患者とのコミュニケーションを円滑にし,信頼関係を構築していた》.患者に尊重されることで,看護師として信頼や親近感を築いていた.患者が自分らしくいられる環境を提供できた時の患者からの感謝の言葉や笑顔は,中国人看護師にとって大きな喜びであった.
日本の看護師には他職種との連携を図りながら患者を生活者として捉え,治療をその人の生活の中に織り込むよう支援する役割がある.一方,中国では文化や国の事情によって,看護師は診療補助を中心とした役割が大きい.中国では日常生活の世話は,一般的に家族が高齢の両親の扶養や介護を行う(張・星,2016)ことから,中国において看護師は入院患者の療養上の世話業務を行うことは少ないのである.また,中国にはケアマネジャーや保健師といった専門職がない(安部ら,2010)など,チーム医療の体制は日本と異なる点がある.そのため,日本で活動する中国人看護師は,日本におけるチーム医療の中での看護師の役割について認識が異なっており,それに適応しながら働くことがやりがいの一部であることが本研究から明らかになった.「入院前の情報を把握したうえで,患者一人ひとりに合わせて退院後の社会支援,地域包括ケア支援を行う」,「現状評価に伴い,多職種連携カンファレンスで,家族や患者の希望に沿って退院支援を行う,中国にはない」,「実際に患者は外泊して,退院調整をするところが素晴らしい」などから,《退院支援を通じて,患者将来の生活を考慮しながらケア提供する》ことを体験していた.中国人看護師は日本の看護を体験し,見識が広がり,両国の看護の相違点を理解しながら看護師として適応しながら活動していた.
4. 日本における看護実践のやりがいを支える日本の文化や社会制度の安心感日本の文化や社会制度は,看護実践における安心感を提供する多くの要素を備えていると考える.厚生労働省(2023)では,社会保障制度の整備,労働環境の整備,文化的な安全性など,中国人看護師が安心して仕事に取り組む基盤を形成していた.これらの要素が組み合わさり,看護師が自己実現と安定を両立させ,患者に寄り添ったケアを実践するための安心感を築いているのではないかと考える.
今後,日本での看護キャリアを志す中国人看護師が増加すると予想される.そのため,対象者をより広範囲に拡大し,その一般性を検証することが求められると考える.
本研究の限界として,8名のインタビュー対象者のうち,中国での看護師経験を持つのは2名のみで,6名は中国での勤務経験が無かった.したがって,中国での看護師経験があることによって,日本での看護実践におけるやりがいをどのように認識しているかは明確にされていない.また,本研究は機縁法を用いて20~30歳代の若い中国人看護師を対象にとし,また対象地域が特定の地域に限定されていることも課題である.異なる年齢層やバックグラウンドを持つ中国人看護師を対象とする研究を行うことで,やりがいに関する異なる観点を得ることができると考える.
今後は,より多角的なアプローチやインタビューだけではない包括的なデータ収集を行い,異なる条件や状況下での中国人看護師の経験や影響を詳細に調査することが重要である.また,現地でのフィールドワークや関係者への直接的なインタビューを通じて,よりやりがいについての理解を深めることが課題である.
来日中国人看護師の日本での看護実践におけるやりがいについて,8名にインタビューを行い,6つのカテゴリーa【日本での看護業務を通じた専門的なスキルの習得】,b【患者とのケア・コミュニケーションを通じた信頼関係の構築】,c【日本の看護実践の多様な場に適応し看護師として貢献する】,d【患者・家族への将来の生活を考慮した退院支援での充実感】,e【日本人の仲間と安定した職場環境の中で得られる喜びと充実感】,f【日本での文化や暮らしから得られる安心感】が導き出された.日本での看護実践におけるやりがいは,さまざまな要素が相互に結びついて形成されるものであり,専門的スキルの獲得や患者との信頼関係構築を含む様々な要素が,中国人看護師にとって重要であることが明らかになった.
付記:本研究は,東京医療保健大学大学院和歌山看護学研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.
謝辞:本研究に際し,ご助言を賜りました内海みよ子先生に心より感謝申し上げます.また本調査を実施するにあたり,ご協力いただきました中国人看護師の皆様,貴重な時間をさいて情報を提供してくださった皆様にこの場を借りて深謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YWは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,考察,論文執筆を行った.HNは研究の着想およびデザイン,分析,結果,考察に助言し,論文に加筆・修正を加えた.両著者で最終原稿を確認し,承認した.