日本看護科学会誌
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同一体位によって生ずる苦痛の軽減に対する音楽の効果
石井 智香子萩原 さがみ南沢 汎美
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1993 年 13 巻 1 号 p. 20-27

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抄録

臨床看護の場で強要することの多い同一体位保持による苦痛を緩和するのに音楽が有効か否かを成人女性5名を対象に検討した. 全被験者に, 音楽なしで2時間にわたり仰臥位を保持させた(音楽なし). その後5日以上経た後, 日頃から馴染みがあり, 気持ちを落ち着かせるのに効果があるとされているクラシック音楽を聴かせながら同様に仰臥位を保持させた (音楽あり). その間, 体位保持に伴う自覚的苦痛と心拍, 呼吸の変化を連続的に調べるとともにリズムの乱れた特異呼吸の出現状況も調べた.
仰臥位保持によって生じる自覚的苦痛は音楽を聴かせることで減少し,その出現時間も遅れた. 心拍数は音楽の有無で有意な変化は見られなかった. 呼吸数は音楽ありで増加した被験者が3名あった. 特異呼吸は全被験者において音楽ありでその出現が減少した. また同一体位保持中に音楽なしで認めた自覚的苦痛の訴え数と特異呼吸出現頻度のあいだには正の相関関係が認められた.
これらの実験結果から音楽は同一体位保持にともなう苦痛を緩和させるのに有効であると考える. 音楽に対する反応は個人によって異なると考えられるが, 苦痛とその個人がもっている音楽への関心・嗜好がうまくかみあえば, 音楽はさまざまな心身の苦痛を緩和させるのに有効な外的環境になりうると思われた.

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