抄録
本研究の目的は, 喉頭摘出者用としてNottingham Adjustment Scale-Japan (NAS-J尺度)の適用可能性を検討するために, その信頼性・妥当性を検証することと, 喉頭摘出者の心理的適応構造を明らかにすることである. 視覚障害者およびパーキンソン病患者に用いられた障害受容尺度のNAS-J尺度を改変して, プロマックス回転による因子分析にて分析した. 結果, 8因子32項目で, すべての項目が1つの因子のみに一定以上の負荷量を有し, NAS-J尺度と同様の因子構造を示した. 喉頭摘出者の因子構造において,「受容」の項目が第1因子「受容a (肯定的行動レベル)」と第5因子「受容b (自身の自覚レベル)」に分かれた. 信頼性係数を求めたところ, 第8因子のローカスオブコントロール以外は0.7~0.8のα係数を得られたことから, 内的整合性が高いことが示された. 以上から, NAS-J尺度は喉頭摘出者の心理的適応尺度として使用しうることが示唆された.