におい・かおり環境学会誌
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特集(食品についての嗅覚官能検査・評価)
食品についての嗅覚官能検査・評価
氏田 勝三
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2014 年 45 巻 5 号 p. 331

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抄録

嗅覚を用いた官能的手法は,様々な産業や生活場面における環境評価に用いられるとともに,生産・消費される製品の評価や管理に利用されている.本特集では,食品・飲料分野における嗅覚官能検査・評価について,製品開発,品質管理,苦情対応等の側面から取り上げ,これらの分野でのフレーバーやオフフレーバーの評価法の活用に関する今日的な知見と今後の展望を各分野の専門の方々にご執筆いただいた.

國枝氏(高砂香料工業(株))には,「官能評価技術の現状と今後の展望について」という題目で執筆していただいた.製品の品質特性を決定し維持するための技術のひとつとしての官能評価は,今日,官能検査から官能評価へと呼称が移行するとともに,そのニーズと応用範囲も時代の変化とともに変わってきたという.企業において官能評価がこれまでどのように用いられてきたか,官能評価技術の発展と現状を踏まえて今後の課題を展望し,総括的に述べられている.官能評価の全体像を理解する上で,今後,永きに渡り役立つ貴重な文献になると確信する.

大野氏(三井農林(株))は,「紅茶キャラクターホイールの作成と紅茶特徴の可視化」という題目での執筆である.紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成り,その多彩な特徴を,特に香りや味を言葉で表現し伝えることは非常に難しいという.製品開発や品質検査において的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成し,さらに,それらの特徴を可視化して評価・共有・伝達するコミュニケーションツールとして,紅茶キャラクターホイールを作成したという.製品開発・製造に際しての官能評価手法の開発について,視覚的にもわかりやすく紹介され,今後の定量的評価や統計解析手法によるおいしさの発信を展望し,その可能性について示唆に富む内容とされている.

髙谷氏(日本生活協同組合連合会)らは,「食品の苦情対応における異臭検査について」という題目での執筆である.食品苦情への対応に際しての嗅覚官能検査を含む臭気検査にはどのような特徴があるか,その全体像と考え方を述べ,さらにその検査体制の構築におけるパネルトレーニング等の基礎的な事項を解説するとともに,実際に嗅覚官能検査と機器分析を連携させての臭気検査において遭遇する留意すべき事象についても触れた内容となっている.

長嶋氏(大和製罐(株))は,「食品の異臭原因と対策について」という題目での執筆である.分析者・パネルトレーナーとして,食品等の異臭原因物質同定や異臭原因調査,及び品質管理における人材育成についての豊富な経験をもとに,嗅覚官能検査による臭質特定の重要性とそれを可能とするパネル育成の重要ポイントを述べられている.異臭原因物質の同定には,依頼者から言葉で伝えられたにおいを調査担当者が異臭品の中から見つけ,そのイメージを一致させる「においのすり合わせ」が必要であるという.さらにパネルの選定・教育については,その業界や製造現場で発生リスクがある異臭物質にターゲットを絞り,より実際的でかつシビアな条件でパネル選出し鍛えることが大事で,その実施方法とサンプル作成方法について紹介されている.発生した製品異臭事故への対応にとどまらず,そうした事故を未然に防ぐための人材育成法として非常に貴重な情報となっている.

各著者が述べられているように嗅覚を用いた官能検査・評価は,食品・飲料等の開発・製造・品質管理・苦情対応分野で様々に活用され発展してきている.消費者が嗅覚で感じることにより,好んだり,時として不快とする様々なにおいについては,嗅覚で感じるものであるが故に嗅覚をもって把握し評価することが理にかなっていると思われる.さらに物質を同定する際には機器の利用が有効であることは言うまでもないが,こうした製品のにおいに関することは,まず,においを感じることから始まると考える.そして,今後これらの技術が,幅広く利用され,さらに発展・普及することを通して,私たちの日々の生活をより豊かにしていくことが期待される.

最後に,本特集を企画するにあたり,ご多忙中にも関わらず執筆をご快諾いただいた著者の方々に,厚く御礼申し上げます.

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© 2014 (社)におい・かおり環境協会
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