におい・かおり環境学会誌
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45 巻, 5 号
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特集(食品についての嗅覚官能検査・評価)
  • 氏田 勝三
    2014 年 45 巻 5 号 p. 331
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    嗅覚を用いた官能的手法は,様々な産業や生活場面における環境評価に用いられるとともに,生産・消費される製品の評価や管理に利用されている.本特集では,食品・飲料分野における嗅覚官能検査・評価について,製品開発,品質管理,苦情対応等の側面から取り上げ,これらの分野でのフレーバーやオフフレーバーの評価法の活用に関する今日的な知見と今後の展望を各分野の専門の方々にご執筆いただいた.

    國枝氏(高砂香料工業(株))には,「官能評価技術の現状と今後の展望について」という題目で執筆していただいた.製品の品質特性を決定し維持するための技術のひとつとしての官能評価は,今日,官能検査から官能評価へと呼称が移行するとともに,そのニーズと応用範囲も時代の変化とともに変わってきたという.企業において官能評価がこれまでどのように用いられてきたか,官能評価技術の発展と現状を踏まえて今後の課題を展望し,総括的に述べられている.官能評価の全体像を理解する上で,今後,永きに渡り役立つ貴重な文献になると確信する.

    大野氏(三井農林(株))は,「紅茶キャラクターホイールの作成と紅茶特徴の可視化」という題目での執筆である.紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成り,その多彩な特徴を,特に香りや味を言葉で表現し伝えることは非常に難しいという.製品開発や品質検査において的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成し,さらに,それらの特徴を可視化して評価・共有・伝達するコミュニケーションツールとして,紅茶キャラクターホイールを作成したという.製品開発・製造に際しての官能評価手法の開発について,視覚的にもわかりやすく紹介され,今後の定量的評価や統計解析手法によるおいしさの発信を展望し,その可能性について示唆に富む内容とされている.

    髙谷氏(日本生活協同組合連合会)らは,「食品の苦情対応における異臭検査について」という題目での執筆である.食品苦情への対応に際しての嗅覚官能検査を含む臭気検査にはどのような特徴があるか,その全体像と考え方を述べ,さらにその検査体制の構築におけるパネルトレーニング等の基礎的な事項を解説するとともに,実際に嗅覚官能検査と機器分析を連携させての臭気検査において遭遇する留意すべき事象についても触れた内容となっている.

    長嶋氏(大和製罐(株))は,「食品の異臭原因と対策について」という題目での執筆である.分析者・パネルトレーナーとして,食品等の異臭原因物質同定や異臭原因調査,及び品質管理における人材育成についての豊富な経験をもとに,嗅覚官能検査による臭質特定の重要性とそれを可能とするパネル育成の重要ポイントを述べられている.異臭原因物質の同定には,依頼者から言葉で伝えられたにおいを調査担当者が異臭品の中から見つけ,そのイメージを一致させる「においのすり合わせ」が必要であるという.さらにパネルの選定・教育については,その業界や製造現場で発生リスクがある異臭物質にターゲットを絞り,より実際的でかつシビアな条件でパネル選出し鍛えることが大事で,その実施方法とサンプル作成方法について紹介されている.発生した製品異臭事故への対応にとどまらず,そうした事故を未然に防ぐための人材育成法として非常に貴重な情報となっている.

    各著者が述べられているように嗅覚を用いた官能検査・評価は,食品・飲料等の開発・製造・品質管理・苦情対応分野で様々に活用され発展してきている.消費者が嗅覚で感じることにより,好んだり,時として不快とする様々なにおいについては,嗅覚で感じるものであるが故に嗅覚をもって把握し評価することが理にかなっていると思われる.さらに物質を同定する際には機器の利用が有効であることは言うまでもないが,こうした製品のにおいに関することは,まず,においを感じることから始まると考える.そして,今後これらの技術が,幅広く利用され,さらに発展・普及することを通して,私たちの日々の生活をより豊かにしていくことが期待される.

    最後に,本特集を企画するにあたり,ご多忙中にも関わらず執筆をご快諾いただいた著者の方々に,厚く御礼申し上げます.

  • 國枝 里美
    2014 年 45 巻 5 号 p. 332-343
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    日本の企業における製品開発と品質管理が優れていることは,日本の製品が今や国内外の市場を賑わし,世界中の消費者から信頼を得て,根強い人気を持つことからも実感できることである.その製品の品質特性を決定し,維持するための技術のひとつとして,官能評価がある.時代の変化とともに呼称も官能検査から官能評価へと移行し,そのニーズと応用範囲も変わってきた.ここでは,企業における官能評価がこれまでどのように用いられてきたのかを説明し,今後の課題と展望について考えてみたい.

  • 大野 敦子
    2014 年 45 巻 5 号 p. 344-350
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成る.その多彩な特徴の捉え方や伝え方は人によって様々であり,特に香りや味を言葉で表現し,多くの人に伝えることは非常に難しい.よって,紅茶の複雑であいまいな特徴を,製品開発や品質検査においても的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成した.また,日本の消費者に紅茶の特徴をわかりやすく伝えるためのツールとして有用である.我々は,紅茶の香り・味・水色の特徴について,より多くの人と共有し,伝達するためのコミュニケーションツールとしての紅茶キャラクターホイールを作成し,その効果を示した.また,紅茶キャラクターホイールに基づいて紅茶の特徴を可視化した.

  • 髙谷 智之, 加藤 宏明, 氏田 勝三
    2014 年 45 巻 5 号 p. 351-371
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    食品の異臭苦情における対応の特徴は,消費者が感じた「におい」を,的確に現物で保持し,その表現を伝え,現物から感じ取って評価し,それを関係者が共有して,さらには検査結果により裏付けることであるといえる.そして,異臭検査においては,個々の物質における嗅覚閾値や分析機器の検出感度によって,得られる結果が制約される場合があるため,これらの結果を総合的に判断して原因の究明にあたる.異臭検査への嗅覚官能検査導入には,迅速に異常性を判断できる,的確に異臭原因物質の推定・絞り込みができる,高感度に検知できる場合が多い,という3つのメリットがある.嗅覚官能検査の導入にあたっては,パネル統括者の選任,運営ルールの整備,パネルの選定を行う必要があり,さらに,継続的なパネル育成と嗅覚トレーニングを行う.こうした異臭検査能力の向上は,苦情対応に関わる部署間の連携を円滑にし,さらには対外的な納得性を高めることにもつながる.嗅覚官能検査の結果を受けて,原因物質をさらに特定する場合には機器を用いた臭気検査を行うが,日々の苦情品検査において求められる「迅速」「簡単」「的確」という要件に合致した手法をまず選択する.そして,機器分析においては,こうした要件に合致した有効なツールとして,「SPME」「GC/MS」「におい嗅ぎGC」がある.しかし,これらの手法でどのような物質も検出できるというわけではなく,嗅覚官能検査ではにおいを検知できて,機器分析では検出できない場合もある.異臭となっている物質の種類や含まれている濃度,および,その物質に対する嗅覚閾値と機器の感度などの要因により,異臭検査結果のパターンは幾つかに分かれ,さらに,食品特性や香気成分等の影響も受ける.食品の異臭苦情品検査において様々な場合に共通する重要なことは,嗅覚官能検査で異臭のターゲットを的確に捉えた上で機器分析を行い,全ての結果を総合的に判定することである.

  • 長嶋 玲
    2014 年 45 巻 5 号 p. 372-377
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー

    異臭のご指摘があった場合に,異臭原因物質を同定し,発生原因を明確にした後,再発防止することは必要なことであるが,異臭は目に見えず,人によって感じ方が異なる為,各段階においてにおいを明確に判断することが必要である.

    異臭原因物質の同定から再発防止までの方法と,それに必要な官能評価パネルの育成について説明する.

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