2022 年 53 巻 6 号 p. 345-356
本研究グループでは,微細藻類が発する“におい”を利用した新しい培養技術“においセンシング培養(Odor Sensing Cultivation:OSC)”の開発を進めている.本研究では国産の新しい農作物として期待されている緑藻イカダモ(Scenedesmus sp.)を対象として,嗅覚官能評価,におい物質同定,e-noseニオイセンサー分析を通じ,OSC実用化に向けた基礎的データの蓄積を目的とした.イカダモ培養液の嗅覚官能評価の結果,におい強度は2.1(何かわかる程度の強さ)であり,においの印象は“お茶,甘い,生臭い”というものであった.該当のにおい物質を化学分析に供試したところ,1-ノナナール,α-,β-イオノンが同定され,また2-ウンデセナールおよび酢酸が仮同定された.QCM型e-noseニオイセンサー分析に供試した結果を主成分分析で解析したところ,イカダモ培養液と対照区培養液のにおいは,寄与率の高い5種のQCM型検出素子によって判別が可能であった.