抄録
過去11年(2010-2020)の日本の医師の過労死・過労自殺に関する労災認定事案57件(労災認定された脳・心臓疾患26件、精神障害・自殺31件)の実態と、医師の労働環境見直しに大きく影響を与えた関連裁判事例を紹介し、持続性ある医療制度改革のため導入された時間外労働の上限規制を含む医師の働き方改革で注目すべき点と医療機関における産業保健への期待を報告した。若手医師、とりわけ研修医における精神障害や自殺の労災認定事例が増加しており、結果としての長時間労働を含む過重労働を生じさせた勤務医の過酷な労働実態がある。1990年代以降、医師の労働者性や病院の安全配慮義務を問う訴訟が相次いだ。労働環境への社会的関心と2024年4月施行の時間外労働上限規制は、こうした医師の健康問題に対応する制度的転換点であると同時に、医療機関における産業保健体制を再構築する重要な契機となった。現場の実態に即した支援体制の整備と見直しが必要である。