パーソナルファイナンス研究
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インドネシアの中小零細企業金融の成功要因について : 営利目的マイクロファイナンスの可能性
藤田 哲雄
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2014 年 1 巻 p. 17-30

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抄録

インドネシアは中国に次ぐアジアの成長を牽引する国として注目を集めている。内需を拡大させて経済が成長するためには、雇用の9割近くを担う零細企業に焦点を当てることが有益であると考えられる。金融の観点から零細中小企業についてみると、中企業、小企業向けの金融は比較的順調に推移しているものの、零細企業向け金融の成長は比較的低い。零細企業層にまで経済成長の果実が十分行き渡っていない可能性がある。この結果により、企業規模間の格差や地域間の格差が拡大する可能性も懸念される。インドネシアには銀行取引の経験がない零細企業がまだまだ多く、これらの潜在的な顧客である零細企業の中から、銀行取引を通じて業容が発展し、小企業へと成長していく事例が増加することが期待される。そのためには、何よりもまず銀行取引がない零細企業との銀行取引を開拓する必要があり、政府もそれを後押しするプログラムを導入してはいるが、参加する銀行のインセンティブが弱いこともあり、これまでのところ、大きな成果を挙げるには至っていない。零細企業向けの融資業務(マイクロファイナンス)は、企業の情報の把握が難しく参入は容易ではない。特定の銀行が独特のノウハウを持っており、競争力を有している。多くの拠点を効率的に配置し、オーバーヘッドコストが通常の銀行業務とは相当異なるものの、自立的な銀行業務として成立している。すなわち、インドネシアのマイクロファイナンスは貧困削減という社会的目的ではなく、低所得者層である零細企業や個人事業主を対象とした営利目的で営まれている。マイクロファイナンスの収益性、成長性、安定性は高く、地場金融機関には追随の動きもある。インドネシアのような営利目的のマイクロファイナンスが可能となる条件について考察してみると、比較的高い金利を許容する規制、オペレーショナルコストを低下させる独自のノウハウ、現場で収集した情報を活用する審査能力・モニタリング力という3点を挙げることが可能である。インドネシアのマイクロファイナンスは、貧困削減という社会目的を追求するものではないものの、零細企業の資金アベイラビリティを高め、結果的に低所得者層の生活水準の向上に資するものと評価することが可能である。

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© 2014 パーソナルファイナンス学会
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