パーソナルファイナンス研究
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招待論文
貸金業法が完全施行された2010年6月から民主党政権が終焉した2012年12月までの期間で進められた貸金業法の再改正に向けた立法作業に関する研究
堂下 浩
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2023 年 10 巻 p. 3-17

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抄録

2006年12月に自民党と公明党の連立政権下で政府は貸金業法を改正した。この法律は他の先進国には例を見ない過剰な規制をノンバンク市場にもたらした。法改正により、上限金利は年29.2%から年15~20%に引き下げられ(上限金利の引き下げ)、また審査時に源泉徴収票等の提出を義務付け、個人年収の3分の1を超える貸付けを原則禁止した(総量規制の導入)。

06年法改正の審議プロセスは感情論が先行する一方で、実証データに基づいた科学的検証は蔑ろにされるという、あまりにも拙速なものであった。事実、法改正直後から信用力の劣る利用者層、特に零細事業主は深刻な貸し渋りに直面した。このため、貸金業法の実効性に対して疑問を呈した内閣府の規制改革会議は08年6月から金融庁に聞き取りを行うなど調査を開始した。この作業は同会議にて積極的に進められたものの、政権が自公連立から民主党に交代した後、規制改革会議の調査は停止に追い込まれた。結果として、民主党政権下の政府は貸金業法を10年6月に完全施行した。

しかしながら、法律が完全施行された直後から、大阪府や国会の主要な党派は利用者の立場から貸金業法の抜本的見直しに着手しようと取り組む動向が見られるようになった。そこで、本稿は貸金業法が完全施行された10年6月から、民主党が自民党と公明党の勢力に大敗した12年12月の総選挙までの期間において、貸金業法の改正に向けた大阪府と国会の主要政党による取り組みについて調査する。なお残念であるが、こうした貸金業法を改正する勢いはその 後の自公政権下で徐々に消滅している。

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