本研究では、日本の高等学校で2022年4月から必修化された金融教育について取り上げる。2022年は日本の金融教育にとって大きな転換点であった。金融教育の必修化に加え、金融教育の重要性が高まるであろう成年年齢の引き下げ、そして岸田内閣が推進する資産倍増計画である。また足下では、政府の検討分科会において、2024年に新たな金融教育推進機構を立ち上げ、個人の資産形成を中立的に助言する専門資格を創設する事が報道されている。
このような金融教育の機運の高まりの中、政府、業界団体だけでなく金融機関を中心とした民間部門においても積極的に金融リテラシー教育を推進する企業が増加している。ただ一方で、過去に世界又はアジア諸国と比較調査されたデータによると、日本の金融リテラシーの水準は、相対的に低位に留まっている。
こうした日本の現状を踏まえ、日本の金融教育のあり方を問題意識とし、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社(以下、CF社)は2011年よりCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、「PROMISE 金融経済教育セミナー」を実施している。本研究では、「PROMISE 金融経済教育セミナー」受講者を分析対象とし、先行研究・事例と比較し論じていく。
大藪・奥田(2014)は、金融教育の重要性を示しているものの、学校教育において授業時間数が限られている点を金融教育の課題として指摘している。また、殿垣(2023)によると、国民性が金融リテラシーの獲得に与える影響が強いとされる一方、日本は保守的な国民性であるため、個の主張がしやすい教育形態を作ることが重要であると示している。さらに竹本(2017)は、金融教育には知識教育からPBL的な教育といった段階的・体系的な遷移が必要であると提言している。
分析手法として、「PROMISE 金融経済教育セミナー」を実際に受講した高校生、専門学校生に対して行ったアンケートを検証した。アンケート結果からは、「PROMISE 金融経済教育セミナー」は受講者の金融リテラシー向上に対し一定の効果が見られることがわかったものの、一方で限界も見えてきた。
そこで研究では「PROMISE 金融経済教育セミナー」の今後の方向性を提言、延いては日本の金融教育プログラムの確立に向けた助言となることを目的とする。
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