2023 年 10 巻 p. 47-62
この研究の目的は、高速道路の商業施設(以下「SAPA」とする。)を対象として、そこに寄せられた利用者の声の分析を通じ、SAPAに接続する路線状況によるニーズの違い、またCOVID-19蔓延によるニーズの変化を明らかにし、それに沿って利用者の購買意欲に働きかけるようなSAPAの整備・サービス方針を提言することで、SAPA運営者の財務的な意思決定に寄与する事である。
この目的に対し、仮説H1「SAPAへのニーズには路線毎に異なる」、仮説H2「SAPAが接続する路線の交通量も利用者のニーズに違いをもたらす」及び仮説H3「COVID-19蔓延前後でSAPAのニーズには変化がある」を設定し、その検証及びそれに基づく提言を行った。
検証に用いるデータは、中日本高速道路㈱に対し2018年度から2020年度に寄せられた「お客さまの声」を用いた。分析に当たっては、頻出語を6つのカテゴリーに分類、これを基としてカイ2乗分析により路線別及び重交通区間及び非重交通区間別での傾向を分析した。
路線別分析については、まず2018年度及び2019年度において、新東名高速道路等「駐車場」への関心が高かった一方で、同様に東西を繋ぐ東名高速道路では「食事」への関心が高いという違いが見られた。それら路線が2020年度になると「清潔」への関心が高まるなどの変化が見られ、仮説H1及び仮説H3を検証するものとなった。
交通量別については、重交通区間と非重交通区間の区分において、前者は「施設設備(機能)」に、後者は「接客」に関心が高いといった特徴が見られた。次いで双方の区間の年度ごとの変化を確認すると、年度を経るごとに重交通区間では「施設設備(機能)」に代わり「清潔」への関心が、非重交通区間でも「接客」から「施設設備(機能)」へと関心が推移していた。この結果は仮説H2については検証するものとなったが、仮説H3を検証するものではなかった。
これらの結果から、区域単位でのSAPAの差別化を進めるべく、ニーズに特徴のある路線、区間にある複数のSAPAを1つのグループとして取り扱い、それに即した設備投資、費用配分を行うことで、利用促進を図ることを提言とした。