パーソナルファイナンス研究
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査読付論文
ファイナンスからみた公民連携の輸送事例に関する考察
自動車学校の送迎バスの取り組みおよび費用対効果について
上村 祥代竹本 拓治川本 義海
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2018 年 5 巻 p. 19-36

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抄録

本研究では、事例を基に自動車学校の送迎バスの取り組みおよび費用対効果を明らかにすることで、運用を検討する上での基礎的情報をまとめることとする。

その結果、6つの事例から取り組み実態を整理すると、今後サービスの拡充は期待できない状況にある。しかし、補完的な輸送サービス、また実質的に高齢者の主要な輸送サービスとして活用されており、地域によって活用の幅がみられる。費用では、保険料が大部分を占めている。また、1人1回あたりの輸送コストでは、コミュニティバスよりも本輸送サービスの方が低いコストの運行が可能となる。

福井県敦賀市事例において具体的な活用状況を見ると、登録者では、乗車経験がある全員が通院に利用しており、乗車経験がない人からは、使いにくさの指摘がみられる。一方で、非登録者を見ると、本輸送サービスの存在を約7割の人が知らないでいる。しかし今後、乗車条件が合えば約7割の人は利用してみたいと考えており、潜在的需要の存在が示される。また、各場面に対する影響を見ると、登録者は利用価値だけではなく、非利用価値についても半数以上の人が認識している。一方で、非登録者は、利用価値の「移動中の楽しみ」を他の場面よりも多くの人が認識しており、今後の行動変容の動機づけとして注目される。また、登録者はコミュニティバスと同額(負担額)200円を支払う場合であっても半数以上の人が利用すると考えているのに対し、利用意向を示した非登録者の半数以上の人は利用しないとの意思を示している。さらに各場面における影響と料金負担が伴う利用意思との関連を見ると、登録者では「外出機会」において有意な差が見られたが、「分からない」、「減らない」と回答した層は統計的に料金を支払って利用するかは分からないと考えられている。その一方で、非登録者では統計的に有意な差は見られなかった。これらより、価値認識と料金を支払って利用するかは関連がなく、また個人が対価を支払って利用したい輸送サービスではないことから、公共交通とは違って、自動車学校の輸送サービスは経済活動として認められていないといえる。そのため、本輸送サービスは当分CSRの一環としての活動に留まっておくことが望ましいと示唆される。

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