中国のP2P ネット金融は2018 年半ばに大きな倒産ラッシュに見舞われた。その理由を説明する先行研究は、金融引き締め政策への変更、景気の悪化や規制の強化などによる外部要因説と、情報の非対称性や投資家の投資バイアスなどによる市場の失敗説に大別される。本稿は、これらの既存研究とは異なる内部要因説を提唱する。中国のP2P ネット金融は、「完全保証リスク」と「ディスクロージャーリスク」というプラットフォームの倒産に繋がる重大なリスクを抱えたまま、規模拡大を追求してきた。その原因は、P2P ネット金融プラットフォームが金融機関であり、かつIT 企業でもあるという特徴にある。その特徴により、各プラットフォームは、市場に参入した途端、「軍拡競争の囚人のジレンマ」的状況に置かれ、市場の独占を目指した規模拡大を強いられることになる。2018 年の倒産ラッシュの最大の原因は、プラットフォームが急成長を果たした原因と同一であり、これまで規模拡大によって先送りされたリスクが、外部環境の悪化をきっかけに一気に表面化したことによるものである。つまり、倒産ラッシュの発生は、急成長の時点ですでに避けられないものであった。