闘病記は当事者のナラティブであり,看護学の教材としての利用が期待される.本研究の目的は,ある統合失調症当事者が書いた闘病記の構造を明らかにし,その内容をより深く考察することにある.古川奈都子『心を病むってどういうこと?:精神病の体験者より』を対象に,テキストマイニングと伝記分析の個別分析の手法により分析を行った.各章ごとの特徴を見ることにより,自分の体験の告白だけでなく,周囲の人や,一般社会に対して理解を求めるポジティブで具体的なメッセージがあることが確認された.本書のような,体験者の物語りと積極的な意見が統合されているような闘病記は,当事者や家族だけでなく広く一般の人々にも偏見をなくしたり,当事者との付き合い方を知るという教育効果がある.このような闘病記はナラティブ教材として,間接的に当事者の体験や生きる姿を知ることにより,精神看護学の教育に有効に活用されるべきであることが示唆された.