2020 年 29 巻 2 号 p. 50-59
目的:高齢者入所施設で働く援助職者の語りを通して,精神障害者へのケアに関する体験を描き出し,高齢者入所施設における精神障害者へのケアの課題を考察する.
方法:半構造化インタビュー調査.インタビュー内容は,①高齢精神障害者の捉え方やイメージ②印象的なケア体験③ケアへの思いや考えについて自由に語ってもらった.ICレコーダーに録音した内容をデータとして整理し,分析した.
結果:インタビュー参加者は,高齢者入所施設6施設からの援助職者26名.参加者らは,精神障害をもつ人を,〈一人の入所者〉として捉え,【入所者との良好な関係を築く】ようなケアを体験していた.しかし,入所者から攻撃性を感じるような言動を受けて【入所者との関係で傷つく】体験もあった.【入所者との関係で傷つく】体験をしながらも,【傷つきを修復しようとする】体験をしていた.
考察:【入所者との関係で傷つく】体験は,自尊感情が傷つく体験であると考えられる.入所者の攻撃性を伴う言動へのケアの困難さとその言動によって傷ついた援助職者へのケアが課題である.