日本精神保健看護学会誌
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研究報告
精神科看護師が体験している誤嚥性肺炎予防に関するケアの実態
―単科精神科病院におけるフォーカスグループインタビュー調査から―
清野 由美子田中 浩二関井 愛紀子小山 諭
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2020 年 29 巻 2 号 p. 60-70

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抄録

本研究の目的は,精神科看護師が体験している誤嚥性肺炎予防に関するケアの実態を明らかにし,誤嚥性肺炎防止と患者の食生活に関するQOL向上に向けた支援の在り方について示唆を得ることである.A県内16か所の精神科病院に勤務する病棟看護師55名を対象にフォーカスグループインタビュー調査を行い,収集したデータを質的帰納的に分析した.精神科看護師は,【精神科における誤嚥性肺炎予防ケアの困難】があるために,誤嚥性肺炎予防ケアにおいて,見守りの徹底に象徴される【目前の誤嚥・窒息リスクを回避したいという強い思いに基づくケア】を提供していた.一方では,精神疾患患者にとって食はQOLの重要な要素であることから,【食べることのQOLを志向したケア】に取り組んでいた.また,看護業務の一環として日常的に【誤嚥性肺炎予防に有効とされる日常生活援助】に努めていた.さらに,限られた環境の中で,【精神科医療の強みを活かすチームケア】を取り入れていた.本研究結果から,有効な資源の少なさや精神疾患をもつ人に特有の困難さがある中での,看護師のケアが明らかとなった.本研究により,一人ひとりの患者のニーズに立ち返り,多職種連携や包括的支援に取り組むことの重要性が示唆された.

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© 2020 日本精神保健看護学会
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