日本精神保健看護学会誌
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29 巻 , 2 号
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総説
  • 松浦 佳代
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    本研究の目的は,1)医療観察法における看護実践に関する研究の動向把握,2)看護実践の内容分類,3)看護実践上の課題の検討である.医中誌Webを用いて2003年から2019年9月現在までに報告された文献を検索し26件を分析対象とした.看護実践は「ケアコーディネーター」,「入院時面接・入院時オリエンテーション」「対象行為・病識獲対象行為に関する話し合い・内省の深化や病識獲得」,「リスクマネジメント」,「退院後の地域での生活および療養」,「その他」の6カテゴリーに分類できた.看護実践上の課題は,所属する各チームにおいて期待される役割を意識した看護の実践,対象行為の確認や内省の深化を核とした看護実践の展開,看護師が主体的に意見を発信する能力の養成であった.医療観察法に基づく医療は精神医療における政策医療の一つであり,提供する医療や看護の均てん化が求められる.今後,指定医療機関での看護実践状況の把握が期待される.

原著
  • ―統合失調症患者の身体症状の判断に焦点をあてて―
    池内 彰子, 上野 恭子
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 9-18
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    本研究は,精神科看護師の批判的思考態度の促進に向けた教育的な介入を試み,効果を検証することを目的とした.教育プログラムは統合失調症患者の身体症状を判断した場面を,看護師の倫理的感受性に焦点を当てリフレクションする内容とした.

    介入は準実験研究(1群事前事後テスト)デザインで,一般科臨床経験のない精神科臨床経験が5年未満の看護師23名を分析対象とした.介入による効果を,介入前と介入直後,介入1ヶ月後の批判的思考態度尺度中央値を比較し検討した.さらに,介入1か月後に患者の身体症状判断の実践状況,および看護師自身の変化や成長を把握するために,研究参加者10名を対象に半構造化インタビューを実施した.

    結果として介入前に比べ介入直後,介入1ヶ月後ともに批判的思考態度尺度の中央値は上昇を示した.また,インタビュー結果より看護師の身体症状の判断に関する変化や成長を示すカテゴリーが形成され,批判的思考態度の促進に一定の効果が認められた.

  • 加藤 隆子, 齋藤 直美, 渡辺 純一, 渡辺 尚子
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    本研究の目的は,精神科看護師がトラウマにより生きにくさを抱えている患者への看護支援でどのような体験をしているのか,看護支援に影響している要因は何かを明らかにして,看護支援の課題を検討することである.

    精神科看護師8名に半構造インタビューを行い,質的記述的に分析した.精神科看護師は,患者支援の困難感やトラウマに触れることへの戸惑いを感じながらも,患者の現在の問題に着目し支援をしていた.トラウマを意識した看護支援には患者の対人関係特性,看護師の安定性,トラウマと対峙することが許される環境が影響しており,トラウマの問題を回避する看護支援の停滞とトラウマのある患者を気にかける看護支援の発展というパターンの特徴があった.看護支援において,トラウマを意識した看護経験の少なさや自信のなさから,患者との関わりを回避するという課題があった.それらを解決するためには基本的なトラウマの知識や感情活用についての教育,退院後の支援を見通し支援者や関係機関と早期から連携する必要性が示唆された.

研究報告
  • 川内 健三, 板山 稔, 風間 眞理
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 29-39
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    研究目的は,非同意で精神科病棟に初回入院した患者に対する熟練看護師の入院時の関わりを明らかにすることである.非同意で精神科病棟に初回入院した患者と入院時に関わりの経験をもち,かつ精神科病棟で10年以上経験した看護師9名に対し半構造化面接を行い,質的記述的分析を行った.

    熟練看護師は非同意で精神科病棟に初回入院した患者への入院時の関わりとして,入院直後に【入院時の衝撃を和らげる】関わりを行っていた.そして【患者のペースを尊重する】ことを行いながら,【患者と接点を作る】関わりを行っていた.患者と接点ができたところで【患者の体験を知る】ことを大切にしながら,【患者へフィードバックする】ことを行い,【患者に治療参加を促す】とともに【患者と一緒に行動する】【患者の強みを活かす】ことを行っていた.更に,関わり全体を通して熟練看護師は患者の一生を左右するという【看護師として関わりに責任を持つ】関わりを行っていることが明らかになった.

  • 原田 由香, 澤田 いずみ, 吉野 淳一
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 40-49
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    本研究は,うつ病患者の配偶者により認識されたうつ病が家族にもたらした影響と対処について明らかにすることを目的とした.対象はうつ病患者と婚姻関係にある配偶者5名で,半構造化面接を実施した.面接によって得られたデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.その結果,うつ病が患者の配偶者とその他の家族にもたらした影響として『うつ病に生活のベースもペースも持っていかれる』など4カテゴリー18概念,家族のうつ病への対処として『うつ病患者に踏み込み過ぎない』など5カテゴリー17概念が生成された.

    うつ病は家族の生活全般に大きな影響をもたらすものの,マイナスの影響だけでなくプラスの影響ももたらしていた.その影響に対し患者の配偶者とその他の家族は,プラスの影響に支えられながら夫婦関係を維持し,患者と適度な距離を保つことや,負の側面に焦点を当て過ぎずにかかわるなどしてうつ病に対処していた.

  • ―施設で働く援助職者の語りを通して―
    鷺 忍, 寳田 穂, 和泉 京子
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 50-59
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    目的:高齢者入所施設で働く援助職者の語りを通して,精神障害者へのケアに関する体験を描き出し,高齢者入所施設における精神障害者へのケアの課題を考察する.

    方法:半構造化インタビュー調査.インタビュー内容は,①高齢精神障害者の捉え方やイメージ②印象的なケア体験③ケアへの思いや考えについて自由に語ってもらった.ICレコーダーに録音した内容をデータとして整理し,分析した.

    結果:インタビュー参加者は,高齢者入所施設6施設からの援助職者26名.参加者らは,精神障害をもつ人を,〈一人の入所者〉として捉え,【入所者との良好な関係を築く】ようなケアを体験していた.しかし,入所者から攻撃性を感じるような言動を受けて【入所者との関係で傷つく】体験もあった.【入所者との関係で傷つく】体験をしながらも,【傷つきを修復しようとする】体験をしていた.

    考察:【入所者との関係で傷つく】体験は,自尊感情が傷つく体験であると考えられる.入所者の攻撃性を伴う言動へのケアの困難さとその言動によって傷ついた援助職者へのケアが課題である.

  • ―単科精神科病院におけるフォーカスグループインタビュー調査から―
    清野 由美子, 田中 浩二, 関井 愛紀子, 小山 諭
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 60-70
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/30
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    本研究の目的は,精神科看護師が体験している誤嚥性肺炎予防に関するケアの実態を明らかにし,誤嚥性肺炎防止と患者の食生活に関するQOL向上に向けた支援の在り方について示唆を得ることである.A県内16か所の精神科病院に勤務する病棟看護師55名を対象にフォーカスグループインタビュー調査を行い,収集したデータを質的帰納的に分析した.精神科看護師は,【精神科における誤嚥性肺炎予防ケアの困難】があるために,誤嚥性肺炎予防ケアにおいて,見守りの徹底に象徴される【目前の誤嚥・窒息リスクを回避したいという強い思いに基づくケア】を提供していた.一方では,精神疾患患者にとって食はQOLの重要な要素であることから,【食べることのQOLを志向したケア】に取り組んでいた.また,看護業務の一環として日常的に【誤嚥性肺炎予防に有効とされる日常生活援助】に努めていた.さらに,限られた環境の中で,【精神科医療の強みを活かすチームケア】を取り入れていた.本研究結果から,有効な資源の少なさや精神疾患をもつ人に特有の困難さがある中での,看護師のケアが明らかとなった.本研究により,一人ひとりの患者のニーズに立ち返り,多職種連携や包括的支援に取り組むことの重要性が示唆された.

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