2023 年 32 巻 1 号 p. 92-99
高齢のアルコール依存症者に対して認知行動療法を用いた簡易プログラムを,パソコンを用いたオンライン形式で実践し,対象者自身が飲酒と認知症の関連を把握すること,飲酒欲求に対する対処行動の獲得に繋げることを目的とした.簡易プログラムは全6回で構成し,飲酒と認知症に関する心理教育のほか,飲酒に至るまでの過程を「きっかけ」「考え」「行動(飲酒)」の3つに細分化し,週間活動記録表を用いて把握した喜び・達成感が高く,かつ飲酒欲求の低い行動のうち,3つの過程に直面した際に対象者自身がとれる対処行動をそれぞれ割り当てた.本プログラムでは対象者に飲酒と認知機能低下の関係性を意識づけることが困難であったが,対象者は〈自己の客観視〉を通して飲酒欲求に対する対処行動を認識し,〈断酒継続への自信〉に繋げていた.しかし本研究はパイロット研究であり,対象者の少なさからも本プログラムが十分検証できたとは言えず,継続研究とする必要がある.