応用統計学
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総合報告
不完全データの解析におけるセミパラメトリック推測の方法論
今井 匠
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 46 巻 2 号 p. 87-106

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抄録

人を対象に行われる医学・疫学研究では,データの欠測がしばしば発生し,そのような不完全データに対しては欠測メカニズムを適切に考慮した統計手法を用いる必要がある.MARの仮定の下で妥当な方法として,観測データの尤度を使用した手法や多重補完法といったパラメトリックな手法が用いられるが,1990年代以降,より柔軟な仮定の下で妥当な統計的推測ができる方法として,セミパラメトリック理論に基づく統計手法の研究が飛躍的に発展した.一方で,これらの方法論の背景には高度な数理的理論があり,諸外国においても,一般的な実務家・研究者には難解なものであると言われてきた.しかしながら,これらの方法は米国 National Research Council における調査報告書でも実践において推奨される手法の一つとなっており,応用上の観点からも,近年,ますます注目を集めている.本稿ではPretest-Posttest研究などの単純なモデルの定式化を想定し,これらのセミパラメトリック推測の方法論について邦文による平易な解説を行う.また,実践的な事例として,米国で行われたエイズの臨床試験を事例にした解析例を紹介する.

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© 2017 応用統計学会
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