2025 年 54 巻 1 号 p. 53-79
野球の試合において“流れ” は存在するのだろうか.ここでいう“流れ” とは,「1 つのプレーによってもたらされる,その後の試合展開に影響を与えるもの」のことを言う.複数の先行研究では,“流れ” は確証バイアスをはじめとした認知的な錯誤,錯覚であるとしている.しかし,“流れ” が生じる,もしくは変わる要因を明確に定義して分析に反映した例は限られている.そこで本研究では「ピンチの後にチャンスあり」という通説に着目し,日本の高校野球のデータを用いて再検証する.場面の重要度を示すLeverage Index を基にピンチを定義し,「ピンチをしのいだ後か否か」を処置変数とする分析アプローチを提案する.出塁率と得点を出力とし,モデル選択と回帰分析により処置の効果を検証する.また,傾向スコアマッチングの適用有無の両ケースについて結果を示す.