教授学習心理学研究
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算数授業における協同学習を通じた分数に関する児童の理解深化プロセス
グループでの話し合いと全体交流のそれぞれを通じた変化に着目して
小田切 歩渡部 優貴
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2017 年 13 巻 2 号 p. 51-67

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抄録
本研究では,グループでの話し合いの後に全体交流を行う算数授業での協同学習において,児童が正誤両解法の比較と説明を行うことによる,児童個人の理解深化プロセスを検討した。小学2年算数の「分数」の単元において,日常的な知識を活かして解決可能な,分数の和に関する問題解決過程を,事前課題-授業(協同学習)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,グループ活動後に全体交流を行う協同学習について,以下の3点が示された。①協同学習を通じて,分数に関する児童個人の理解が促進される。②協同学習において,児童個人の分数に関する自分の考えが整合化される。③分数の和に関して,児童個人の自分の考えが整合化されることにより,個人の理解が促進される。さらに,各活動における児童の説明の特徴として,グループでの話し合いでは,児童の説明が十分に精緻化されないことがあるものの,その集団的な説明の変化が個人の説明の変化に直接的に影響すること,一方で,全体交流では,教師の支援により児童の説明の精緻化が促されるものの,その集団的な説明の精緻化が個人の説明構築に与える影響は,児童の既有知識により異なる可能性が高いことが示唆された。
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© 2017 日本教授学習心理学会
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