教授学習心理学研究
Online ISSN : 2424-1725
Print ISSN : 1880-0718
ISSN-L : 1880-0718
算数授業における割合の問題解決を促進する教授法の効果
「比例関係」と「具体的定義」に着目して
蛯名 正司佐藤 誠子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 15 巻 2 号 p. 70-80

詳細
抄録
本研究は,「割合」単元を対象に,割合の意味理解および公式の適用の促進を企図した授業プランを作成し,その有効性について実践的検討をおこなうものである。プランは,①食塩水濃度を用いた割合の直観的判断から比例関係に基づいた数量的判断への移行,②割合の具体的定義から一般的定義への抽象化という2つの方針により作成した。本プランの効果は,事後評価課題,追跡調査課題,及び授業中の学習者の様子により評価した。公立小学校5年生25名を対象に分析した結果,単元終了直後の事後評価課題では割合の意味理解に関する問題や割合文章題の正答率が8割を超えたため,割合の内包量的性質の理解および割合文章題の解決が促進されたといえる。しかし,単元終了の4か月後に実施した追跡調査課題では,公式の適用はほとんど見られず,比例関係を用いた解法では割合と比較量とを混同した誤答が見られた。この要因について探るため,授業過程の分析をおこなった。その結果,学習者から出された「単位量あたりの大きさ」と割合との区別が授業内で十分になされなかったことが,追跡調査課題において割合と比較量との混同を引き起こした可能性が考えられた。
著者関連情報
© 2020 日本教授学習心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top