教授学習心理学研究
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力学事例における大学生の力の認知とルール適用との関連
宮田 佳緒里
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2010 年 6 巻 2 号 p. 53-60

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抄録
力学分野の問題解決の先行研究より,学習者が力を正しく認知できないという知見が得られている。これに基づき,本研究では大学生84名を対象に「行為者」と「物体の運動」という構成要素に基づく力の認知が,2力のつりあいルールの事例での2力認知を妨害するかを検討した。その結果,2力非明示問題において,行為者が存在する事例,物体が運動する事例での2力認知率が高かったことから,学習者の力の認知には,事例における行為者の存在及び物体の運動という2要因の関与が示唆された。また,ルールの所有状況と2力認知の有無との間に有意な連関が見られなかったことから,2力のつりあいルール所有者も非所有者と同様に,行為者と物体の運動に基づいて力を認知しており,ルールを適用できる事例が限定的になっていることが明らかになった。以上の知見から,行為者と物体の運動に基づいて力を認知することが,事例における力の認知に制約を与え,結果としてルールの適用が阻害されると推察された。
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© 2010 日本教授学習心理学会
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