教授学習心理学研究
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高校生の総合学習への取り組みの分化の要因 : 学習過程に即した質的・量的検討
高橋 亜希子
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2011 年 7 巻 2 号 p. 56-69

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抄録

本研究は個人課題設定形式の総合学習実践に対する質問紙調査の分析・事例研究を過して,高校での総合学習への生徒の取り組みの分化の要因を検討した。研究1として継時的な質問紙調査の分析を行い,満足度の高い・低い生徒間で学習の「楽しさ」「価値」に関するイメージが分化することを確認し,満足度と興味関心の安定性,教員の支援,作業の負担との関係を示した。研究2では事例研究を通し「テーマを意識しその関心を展開する過程」「研究として仮説を立て資料を収集し問いを解く過程」の二つの重なりを分化の中核要因として抽出し,補助要因として「興味・関心の事前の意識化の度合い」「適切な計画・方法の選択」「教員の適切な支援」「学習体験を通し問題意識や手ごたえを得る経験の有無」を得た。分析を通し学習対象への興味・関心の安定性が一貫して分化の要因として得られたことから,生徒が学習対象への安定した関心を持つ場合には手ごたえが得られ作業が進むが,学習対象への関心を失うと追究の方向性を見失い徒労感のみが増すことが,生徒の分化の背景にあると推察された。そのためテーマ設定や学習過程での支援の必要性が示唆された。

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© 2011 日本教授学習心理学会
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