質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
乳児期におけるつかまり立ちの生態幾何学的記述
姿勢制御と面の配置の知覚に着目して
山﨑 寛恵
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2011 年 10 巻 1 号 p. 7-24

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抄録
四足性から二足性への姿勢の移行期に頻繁に観察されるつかまり立ちが,環境構造とどのような関わりを持っているのかについて,環境を面とその配置として記述する生態幾何学的方法を用いて検討した。1 名の乳児の 8~11ヶ月齢にわたる日常場面でのつかまり立ちを観察し,垂直方向にある面に対する上肢の最初の接触,つかまり立ち開始後の四肢の経路,立位後の姿勢の点から場面毎に記述した。その結果,上肢の最初の接触は手を最大限に伸ばすと「ぎりぎり」届くか届かないか,といったところで行われる傾向があること,つかまり立ちやそれに先行するハイハイを通して経験する,垂直方向の配置に対する見えの変化が,つかまり立ちの出現そのものに関わっている可能性があることが示された。加えて,四肢の動きが識別される環境の特徴に関係し,その識別自体にも動きが伴っていることも明らかになった。全事例の結果から,つかまり立ち動作における知覚の役割の重要性が確認された。
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© 2011 日本質的心理学会
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