質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
総合学習における課題設定過程
内面の変化と教員の助言との相互作用に着目して
高橋 亜希子
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2013 年 12 巻 1 号 p. 138-156

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抄録
総合学習において生徒の興味・関心から課題設定する難しさが指摘されている。本稿は,①生徒の関心からの課題設定過程,②適切な教員の支援の 2 点の検討を目的として,生徒の内面の意識の変化と教員の助言との相互作用に着目した事例分析を行った。調査対象は A 高校の個別課題学習である卒業研究である。課題設定場面の面接調査・日誌調査を通して得た対照的な 2 事例に関して「題材・トピック」,「inner referent」,「他者の声」,「意識的な判断」の 4 点に着目し分析を行った。課題の基となる心理的基盤をジェンドリンの概念を用いて「inner referent」と定義し,バフチンの「内的説得力のある言葉」「権威的な言葉」の観点を用い「他者の声」と「意識的な判断」との関係性を分析した。その結果,①課題設定過程は inner referent から紡ぎだした題材をもとに,他者の声との対話を通し構築される過程であること,②「inner referent の成熟」「教員の助言と意識的な判断の確かさ」「適切なメンターの存在」の必要性,③教員の声が「内的説得力のある言葉」になるためには「inner referent との呼応」「言葉自体のもつ説得性」「言葉を発する教員への信頼関係」が必要なことが明らかとなった。
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© 2013 日本質的心理学会
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