抄録
本研究では知的障がい者(以下,同胞)の健常な兄弟姉妹(以下,きょうだい)のライフコース選択のプロセスを示し,選択における迷いとその解決となった手がかりを明らかにすることを目的とした。現在主要なライフコース選択を行っていると考えられる青年期のきょうだい男女 12 名を対象に,個別に半構造化面接によるインタビュー調査を行った。分析方法には時間を捨象せず人間の多様性や複雑性を扱うための方法論である複線径路・等至性モデルを援用した。青年期のきょうだいのライフコース選択のプロセスから,きょうだいは障がいを持つ者と家族であることを理由に同胞のケアに携わることを当然のこととして受け入れようとする考えと,自らの選択を重視する考えの双方を持ち,2 つの考えの不一致が大きいほど,選択における迷いを感じやすいことが示された。この選択における迷いを払拭する手がかりとして,きょうだいが同胞と一旦離れ,同胞のケアの在り方や親との関係について改めて考える機会を持つことが重要である。また親から直接的な言葉で改めてきょうだいの選択の自由を保障してもらうことも,選択の迷いを払拭する手がかりになる。青年期のきょうだいは,家庭内の役割において同胞のケアを担うことができる存在へ役割の変容の時期にある。同時にきょうだいの主体的なライフコース選択において,親はライフコース選択を広げるための重要な役割を担っていると考えられる。