質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
小学校中学年の国際児は現地校・補習校の宿題をどのように遂行しているのか
独日国際家族における二言語での読み書き力の協働的形成
柴山 真琴ビアルケ(當山) 千咲池上 摩希子高橋 登
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2014 年 13 巻 1 号 p. 155-175

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抄録

本研究では,小学校中学年の国際児が親の支援を受けながら現地校と補習校の宿題に取り組む過程を,ドイツ居住の独日国際家族の事例に基づいて検討した。日本人母親が記録した約 2 年半の日誌データを協働的な相互作用枠組みを使って分析した結果,宿題遂行過程における親子間の相互作用について,次の 4 点が明らかになった。第一に,母親が現地校・補習校宿題の主要な支援者であった。第二に,現地校小 4 への進級(5 期)を境に,現地校宿題遂行における母子間の相互作用数・種類と父親の関与が大きく変化する一方で,補習校宿題遂行における親子間の相互作用の種類はほぼ変化せず相互作用数が減少していた。第三に,現地校宿題では,5 期以降,語彙と作文の宿題で母子間のドイツ語力の差が縮まり,母親が単独で支援しきれなくなった。第四に,補習校宿題では,対象児は母親の支援を得ながら作文の宿題に主体的に取り組んでいたが,語彙(漢字)の宿題には困難さを感じていた。国際児が二言語で宿題を継続的に遂行するためには,支援と学習の困難さに応じて,言語別・宿題領域別に両親が柔軟かつ補完的に支援を編成することの必要性が示唆された。

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© 2014 日本質的心理学会
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