本論文は,専門職大学院ビジネススクール院生視点の授業満足基準から,院生が望む学習モデルを作成し,多様な経験や既有知識を持つ社会人の院生が,教員の知識体系や他の院生の視点をどのように学習資源として活かすことを望んでいるのかを,成人学習理論に照らして明らかにしようとしたものである。調査では,授業アンケート回答者1,137 名の自由記述をデータとし,「文書-コード・マトリックス」を用いて分析し,男性修了生 6 名に実施した半構造化インタビューの結果と照らし合わせた。その結果,個々の学習場面という視点では,「サービス業の質」と「学習者目線の質」が学習組織への信頼感を,「教授法の質」と「専門知識の質」が学習の有意味感を,「学習者変容の質」が自己の変容感を導き,学習場面間の相互作用という視点では,「タスクリンクの質」が達成感とわくわく感を,「人的リンクの質」が繋がる安心感を,「理論実践リンクの質」が自己効力感をもたらすという授業満足基準が,院生によって捉えられていることが明らかになった。院生はシラバスを共通認識として,事前課題により共通ベースを作り,事例を通して理論を正しく理解し,教員の知識体系を組み込みながら,ディスカッションで他の院生やゲスト講師から多様な視点を取得し,既存の準拠枠を組み替え,最後に課題を通して,理論を実践に架橋する展望を言語化するような「開放型学習」を望んでいるのではないかという仮説に至った。
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