抄録
「ハーフ」や「ダブル」等と呼ばれるような,2 つの民族的背景を持つ人々が,新たな民族的マイノリティとして日本でも急増しているが,かれらの両背景を統合したアイデンティティのあり方は充分には理解されていない。本稿は,13 名の日本で生活する 2 つの民族的背景を持つ人々に対して行ったインタビュー調査のデータを用いて分析を行った。分析では,両背景を統合したアイデンティティがあらわれている箇所に対して,類似性をもとに類型化を行った。そして,各インフォーマントの語りが各類型にどれほど分類可能かを示すマトリックスを作成した。分析の結果,両背景を統合したアイデンティティは,①集団の境界を重視するか,②両背景の民族的特徴を重視するか,③両背景の民族的特徴を一定程度満たすと思うかという,3 つの基準から,〈ハーフ〉〈ダブル〉〈マーブル〉〈アキュレイト〉に類型化が可能であることがわかった。さらに,両背景を統合したアイデンティティのあらわれ方が特徴的だった 2 名の検討を通して,類型に対する「ポジション」という視点を用いることで,個性がとらえやすくなることも明らかにした。