質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
聾学校乳幼児教育相談における母子コミュニケーション支援に関する一考察
意味ある他者との関わりを足場として
三浦 麻依子川島 大輔竹本 克己
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2016 年 15 巻 1 号 p. 47-64

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抄録
聴覚障害児を子にもつ親は,子どもとのコミュニケーションに不安を感じやすく,そのことが子どものことばの育ちや社会情緒的発達に悪影響をもたらすことが指摘されている。本研究は,聾学校乳幼児教育相談における参与観察から,聴覚障害児とその母親,そして教師によるコミュニケーションのあり様について考察を行ったものである。エピソード記録からその変容の実際を追った結果,子どもとのコミュニケーションに不安を感じやすい母親が,乳幼児教育相談における教師の支援を通じて,母子間のコミュニケーションを変容させていくプロセスが描出された。とくに,意味ある他者としての教師が,子どもや母親の気持ちを感じとろうとすることによって,その心の動きに沿った応答が可能になり,それが足場となって母子間の相互的コミュニケーションが促されることが,エピソードから明らかになった。またエピソードの記述と省察を通じて,教師も揺らぎや戸惑いを抱えながら関わっている様子が詳らかとなった。支援を行う上で,こうしたエピソードを記述し,自らの実践を省察することの重要性が改めて浮き彫りとなった。
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© 2016 日本質的心理学会
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