抄録
本研究の目的は,訪問看護師が療養者とどのように関わり足病変のケアを行っているのか,そのプロセスを明
らかにすることである。訪問看護経験 5 年以上の看護師 17 名にインタビューを行い,修正版グラウンデッド・
セオリー・アプローチ(M–GTA)を用いて分析した。看護師は療養者に安心感の保障をした上で,ケアを慎重に
試みることで,足病変をケアできる関係を療養者と築いている。そして専門家としてのサポートをしながら,療
養者の継続できるやり方への変換および,治したい気持ちの発掘・強化をすることで,足病変のケアを療養者の
生活に位置づけている。ケアを慎重に試みるプロセスの中核には「拒否感予防の一時退避」がある。この概念は,
他人に見せることを躊躇しやすい足に着目したが故に抽出されたと考える。また,専門家としてのサポートは,「任
せて見守る」と「改善/悪化を防ぐアクション」のバランスを保つことで成り立っており,看護師は療養者の個
性が見えてくるまで,さらにその後も,そのサポートを継続することが重要である。病態悪化のリスクを見極め
ながら,療養者に任せて見守ることは,看護師だからこそできる重要なケアである。このように,足病変のケア
を目的に訪問した看護師は,一見遠回りに見えるプロセスを辿りながらも,焦らずじっくり向き合う姿勢で,足
病変をケアできる関係を療養者と築き,そのケアを療養者の生活に位置づけている。