質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
教師の発問に対処する学習者間の相互行為
初級日本語の一斉授業における相互行為分析
佐野 真弓
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2021 年 20 巻 1 号 p. 298-314

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抄録

第二言語教室談話研究では,多くの研究が教師の視点からの相互行為に注目してきたのに対して,学習者の私的 な発話や学習者同士で行われる相互行為は,周辺的なものとして扱われてきた傾向がある。本稿は,そのような 学習者間の相互行為の中でも,特に,教師に指名を受けた学習者と他の学習者との間で,教師の発問に対処する ために展開される相互行為に焦点を当て,それが教師を中心としたやり取りの中でどのようにして起こり,実際 に何をしているのかを明らかにする。分析に会話分析の手法を用いて,発話だけではなく視線方向や身体的動作 といった非言語的リソースも含めることで,その場その時の状況に応じて多様に変化する相互行為を教室の参加 者の視点に基づき検討した。その結果,教師の発問に対処するための学習者間の相互行為は,学習者らが教師に よって開始された IRE 連鎖に注意を払いつつ,その連鎖に「侵入」しないようにして行われていたことがわかった。

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© 2021 日本質的心理学会
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