質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
自己を語る人称代名詞の変化は語りの体験に何をもたらすか
二人称に着目して
横山 克貴能智 正博
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ジャーナル 認証あり

2022 年 21 巻 1 号 p. 150-168

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抄録

本研究は,二人称代名詞を主語に用いて自身の経験を語るという特殊なひとり語り(独話)が,どのような主観 的体験を語り手に促すかを探求したものである。28 人の研究協力者に,二人称代名詞「あなた」や三人称代名詞「彼 /彼女」を主語に置く形で実際の過去の経験を語ってもらい,その後で協力者にその語り体験がどのようなもの となったかをインタビューした。そのインタビューデータを中心に,三人称代名詞を用いた語り体験を比較対象 に置きながら,二人称代名詞を用いたひとり語りの特徴について質的な分析を行った。その結果,二人称代名詞 を主語において語ることで,目の前に実際にはいない「あなた」が語り相手としてイメージされたことが分かった。 そして,自分自身の経験を,あたかも「あなた」の経験であるかのように,その「あなた」に向けて語りかける という特殊な語り方が構成された。そのような語り方は,「あなた」に向けた働きかけや,配慮の意識を伴ってお り,語り手は最終的には,その語りを自身に語りかけられたもののように聞き,かえって自分自身に強く再帰す るという体験を生じさせた。このような独話体験は,二人称代名詞を用いたひとり語りに特有のものと考えられた。

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© 2022 日本質的心理学会
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