質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
がん告知を受け手術を体験する人々の心理的過程
白尾 久美子山口 桂子大島 千英子植村 勝彦
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2007 年 6 巻 1 号 p. 158-173

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抄録
がん告知をされ手術を体験する人々が,病気や手術に対して現実的に対処ができるための心理的サポートを検討することを目標に,彼らの手術前・後の心理的過程を明らかにした。がん告知を受け手術を受ける 10 名に対して,看護師として看護ケアに直接かかわりながら観察記録を作成し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。がんで手術を受ける人々の心理的状況は,手術前にはがんおよび死への脅威が強く,直視することを恐れ,手術に治癒の可能性を託すという【がんによる死の脅威の回避】がみられた。手術後は,様々な苦痛を体験し苦闘しながらも,もとの生活に戻れることを期待し,回復のため自分なりに努力をしていた。しかしがんが体から完全に取り除かれるという保証が得られないことに気づき【終結がみえないがんとの苦闘】を呈していた。がん告知を受け手術を体験する人々は,あたかも何事もないように平静を装っているが,非常に複雑な心理的状況にあるため,常に関心をよせ,彼らが実践可能な手術への準備を促すことが有効であると考える。
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© 2007 日本質的心理学会
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