抄録
本研究では,ある中学校で行われた,教師間,あるいは教師と専門家との協働の構築過程を,その 1 年目に注目して記述した。ロシアの思想家ミハイル・バフチンの「対話」概念を足がかりとして,「協働 (collaboration)」を動的に形成される過程として記述した。具体的には,教師を中心として,スクールカウンセラー(SC)をふくめて校内で開催されている「連絡会」「ケース会議」における話し合いの過程に注目した。その際,こうした会議の運営の中心となることが期待される,コーディネーターをつとめる教師の体験,および,会議で 1 年間を通じて話題とされてきた 2 人の生徒についての教師の語りに焦点をあわせた。1 年間のプロセスを記述した結果,SC が生徒の問題について提示した言葉や,生徒の状態の変化にともなって,当初,否定的だったり,了解不能だったりした生徒像が揺らぎ,教師の既有知識と結びつくことで次の実践を方向付けるものとなっていた。一方,コーディネーターは,当初,他教師と,生徒の処遇をめぐって衝突したが,後半には,よりうまく関われるようになった。このような記述を通して,学校臨床場面における「協働」をとらえることを試みた。