質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
バフチンの対話理論と編集の思想
五十嵐 茂
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2008 年 7 巻 1 号 p. 78-95

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抄録
バフチンはテキストとテキストの境域に生まれる対話的関係を考察した。それは二つの主体の間の意味的関係を持つ応答を作る。その境域に生まれるものが“テキストの生せいの出来事”と呼ばれる。本論では,本を間に置いた著者の作品テキストと読者の持つ自己テキストとの応答を軸にしてその生の出来事を描く。そのためにバフチンの他者論・完結論の批判的転換をおこない,生の内部に作りうるもうひとつの“完結”を措定し,自己テキストという新しい概念を導く。読者が作品テキストと対話するとき読者の側はこの自己テキストを持って意味を交換し,著者の作品テキストと対等に応答する。バフチンの“テキストの生の出来事”はイーザーが読書行為論において展開した意味生起の出来事につながる。イーザーは,本はテキストに書かれていることと読者が受け取り創り出した意味の二層構造によって“読まれた本”となることを明確にした。その際,テキスト内にある空白と言われる箇所が重要な役割をはたす。編集者の仕事は,このテキストの生にかかわり,テキストとテキストの接触において生まれる意味の応答・交換や空白に現れる意味とかかわる仕事として位置づけられる。編集者がめざすべき理想の本とは豊穣な対話的応答を生み出す本となる。
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© 2008 日本質的心理学会
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