館山低地に分布する元禄段丘上で, ジオスライサーによって掘削したコアの堆積相解析と14C年代測定値を総合して, 元禄 (1703年)・大正 (1923年) の2回の地震隆起による浜堤平野システムの発達プロセスを復元した. コアの堆積相は下位から順に, 上部外浜砂層, ラグーン砂層, 堤間低地泥層の順に累積する. 上部外浜からラグーンへ, ラグーンから堤間低地への突発的な堆積環境の変化は, 歴史記録との対応から, それぞれ元禄と大正の関東地震に帰せられる.
この堆積相の累積様式は, 地震隆起の規模にコントロールされており, また海岸地形の配列様式と関連がある. 元禄地震による大きな隆起 (2.5m前後) の際には, 外浜まで含めた広い海底が離水し, 浜堤・ラグーン・海浜・外浜からなる浜堤平野システム全体が海岸に付加した. 一方, 大正地震による相対的に小規模な隆起 (1.5m前後) は, 内陸ではラグーンの排水を促したが, 海浜の一部だけを付加させるに止まったため, 海浜の前進幅は小さかった.