第四紀研究
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論説
大規模崩壊で形成された飛彈山脈南部蝶ヶ岳東面の圏谷状および堆石堤状の地形
富田 国良苅谷 愛彦佐藤 剛
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2010 年 49 巻 1 号 p. 11-22

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抄録

飛彈山脈南部の蝶ヶ岳(標高2,664 m)の東面には,圏谷状の急斜面と堆石堤状の低丘からなる一連の地形が存在する.これらの地形の成因について,氷河説と崩壊説の2つの対立意見があったが,決着はついていなかった.筆者らは野外地質記載と地形分析に基づき,一連の地形の最終成因を再検討した.堆石堤状の低丘の周辺には,厚さ100 mを超える角礫主体の堆積物が分布する.砂岩・泥岩からなる角礫は著しく破砕・変形しており,堆積物全体が砂~シルト・サイズの基質に支持される.一方,堆積物に流水運搬・堆積を示す構造は認められず,ティルやアウトウオッシュとも異なり,亜角礫や亜円礫はほとんど含まれない.また,一連の地形をとり囲む稜線の上やその下方の谷壁には,岩盤クリープやトップリングの発生を示唆する線状凹地やバルジが発達する.こうした状況から,一連の地形は大規模崩壊で形成されたとみるのが合理的である.残存する崩壊堆積物の総量は約3.2×107 m3に達する.蝶ヶ岳の近傍に存在する活断層・活火山や,当山域に卓越する多雨多雪気候は,崩壊の発生に好適な条件を提供してきたと考えられる.崩壊の誘因と発生時期は未詳である.

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© 2010 日本第四紀学会
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