第四紀研究
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49 巻 , 1 号
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2008年度日本第四紀学会賞受賞記念論文
  • 松島 義章
    2010 年 49 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1970年から三浦半島北西岸の片瀬川支流の柏尾川低地を中心に,鎌倉の滑川低地,逗子の田越川に分布する海成沖積層の貝化石調査を開始した.その結果,内湾および沿岸に分布する11の貝類群集を識別することができた.その中で干潟群集と内湾砂底群集は,南は鹿児島から,北は北海道にかけて各地の海成沖積層で確認することができた.さらに,両群集中には現在の貝化石の産出地点より高水温の場所に生息する種が含まれていることも明らかになった.このような現在の貝化石の産出地点より高水温の場所に生息する種を,その化石産出地における温暖種と呼ぶ.北海道で確認された温暖種は,本州に分布の中心をもつウネナシトマヤガイTrapejium liratumやハマグリMeretrix lusoria, シオフキMactra veneriformis, サビシラトリMacoma contabulataなどであり,北海道沿岸に分布する海成沖積層と貝塚から産出する.これらの温暖種について,その出現年代と消長に着目し,完新世における対馬海流の動向を調べた.その結果,温暖種が生息できる海水温の対馬海流が強まった時期は,オホーツク海沿岸域では約7,200~5,000年前,約4,200~3,200年前,約2,500~2,300年前,および約1,000~900年前の4回であり,ウネナシトマヤガイやサビシラトリの分布する温暖な海域環境となっていたことがわかった.その4回の時期は,道南の日本海側に比べて温暖種の出現が少し遅れ,短い期間となっている.しかも,4回の脈動とそれに伴って各回にみられる海流の強弱の程度も明らかとなった.
論説
  • 富田 国良, 苅谷 愛彦, 佐藤 剛
    2010 年 49 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    飛彈山脈南部の蝶ヶ岳(標高2,664 m)の東面には,圏谷状の急斜面と堆石堤状の低丘からなる一連の地形が存在する.これらの地形の成因について,氷河説と崩壊説の2つの対立意見があったが,決着はついていなかった.筆者らは野外地質記載と地形分析に基づき,一連の地形の最終成因を再検討した.堆石堤状の低丘の周辺には,厚さ100 mを超える角礫主体の堆積物が分布する.砂岩・泥岩からなる角礫は著しく破砕・変形しており,堆積物全体が砂~シルト・サイズの基質に支持される.一方,堆積物に流水運搬・堆積を示す構造は認められず,ティルやアウトウオッシュとも異なり,亜角礫や亜円礫はほとんど含まれない.また,一連の地形をとり囲む稜線の上やその下方の谷壁には,岩盤クリープやトップリングの発生を示唆する線状凹地やバルジが発達する.こうした状況から,一連の地形は大規模崩壊で形成されたとみるのが合理的である.残存する崩壊堆積物の総量は約3.2×107 m3に達する.蝶ヶ岳の近傍に存在する活断層・活火山や,当山域に卓越する多雨多雪気候は,崩壊の発生に好適な条件を提供してきたと考えられる.崩壊の誘因と発生時期は未詳である.
  • 藤原 治, 町田 洋, 塩地 潤一
    2010 年 49 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    大分市の横尾貝塚で見られる厚い鬼界アカホヤ火山灰層(K-Ah : 層厚約65 cm)について,堆積構造の解析などに基づいて形成プロセスを復元した.この火山灰層をもたらした噴火は,横尾貝塚から約300 km南にある鬼界カルデラで約7,300 cal BPに発生した.これは完新世における地球上で最大規模の噴火イベントの一つである.横尾貝塚のK-Ahは湾奥にあった小規模な谷に堆積したもので,さまざまな堆積構造が発達するイベント堆積物(ユニットI~V : 層厚約35 cm)と,それを覆う均質なユニットVI(層厚約30 cm)からなる.イベント堆積物はK-Ahの降灰中に谷に突入した流水によって堆積し,ユニットI~Vの累積構造からは,谷を遡上する流れと下る流れが長周期で繰り返したことが読み取れる.ユニットVIは降下火山灰と考えられる.K-Ah降下との同時性や,長周期で遡上と流下を繰り返す特徴は,K-Ah下部を構成するイベント堆積物がアカホヤ噴火に伴う津波堆積物であることを強く示唆する.
短報
  • 大石 雅之
    2010 年 49 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    従来,テフラ対比にあまり用いられなかった斜長石斑晶の屈折率に基づく対比法で,既存研究によって行われている対比と同様の結果が得られるか否かを検討した.斜長石斑晶はほとんどの噴出物に含まれ,また試料の溶結・非溶結を問わず,分析に供することができる.さらに屈折率はきわめて簡便・迅速に,その化学的特性の概略を把握することができる.対象の試料は,北関東に分布するテフラで,遠隔地に分布するテフラと火口近傍に分布するテフラとを比較した.その結果,男体火山の今市スコリアと志津溶結スコリア流,榛名火山の八崎軽石と白川火砕流,浅間火山の板鼻黄色テフラと小諸第1火砕流,および浅間A軽石とその火砕性溶岩である鬼押出し溶岩,四阿火山の菅平第2軽石と横川第二軽石は,斜長石斑晶の屈折率が一致し,既存研究による対比を支持する結果が得られた.
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