第四紀研究
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「環太平洋の環境文明史」特集号
環太平洋生命文明圏
安田 喜憲米延 仁志山田 和芳那須 浩郎篠塚 良嗣森 勇一ホーフヒムストラ, H.
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2012 年 51 巻 4 号 p. 285-294

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抄録

環太平洋生命文明圏の存在を指摘する.今まで古代文明とみなされてきた文明は,メソポタミア文明やエジプト文明,インダス文明,黄河文明である.それらは,パンを食べ,ミルクを飲んで肉を食べるヒツジやヤギの乳用家畜を飼う文明であった.ところが,環太平洋にはこうしたヒツジやヤギを飼わない文明が存在した.それが長江文明であり,マヤ文明やアンデス文明である.長江文明の人々は米とタンパク質に魚を食べた.マヤ文明やアンデス文明の人々は,イモやトウモロコシを食べ,タンパク質は魚と野生動物,それにリャマやアルパカの肉から摂取したが,ミルクを利用することはなかった.ヒツジやヤギの乳用家畜を飼わなかった環太平洋生命文明圏では,ヒツジやヤギの食害がなく,生態系に対するインパクトが小さく,森と水の循環系を維持し,自然を崇拝し,生命にする畏敬の念をもつ生命文明を発展させることができた.

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© 2012 日本第四紀学会
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