2017 年 56 巻 5 号 p. 195-206
戦後の高等学校理科4領域(物理,化学,生物,地学)の履修率には大きな偏りがあり,昭和38~47年の教育課程を除いて,地学領域の履修率は常に低かった.広義の第四紀学的な内容は,地学領域全体を網羅する科目(基幹科目)の教科書ではおおむね全体の5~15%であり,平成24年からの地学領域の基礎的事項を扱う科目(基礎科目)の教科書では9%以下であった.第四紀学の典型的な内容は,全ての科目でおおむね3%以下と低かった.第四紀学の立場から,現行の高等学校理科地学領域を展望すると,地学領域の履修率を上げること,地学領域に第四紀学的な内容を増やすこと,持続可能な開発のための教育(ESD)の観点を取り入れること,地学領域では第四紀の時間軸を入れた内容を主に取り扱い,地理歴史領域と内容の切り分けをすることなどが今後の課題として挙げられる.