2019 年 58 巻 3 号 p. 265-286
過去の気候変化を含めた環境変動のメカニズムを解明するには,正確な年代決定が重要となる.本小論では年代測定,特に放射性炭素を高精度で多数測定することで明らかになってきた新しい第四紀学的な知見についてレビューする.サンプリング手法の改良や分析装置の発展に伴い,わずかな試料でもこれまでよりも短時間で高精度の分析が行えるようになってきたことから,過去の氷床変動を含む気候変動やジオハザードに関する知見の深化が進んできた.特に筆者らの研究グループで取り組んできているプロジェクトについていくつか紹介しながら,その重要性にスポットをあてたい.