第四紀研究
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天然の「時計」・「環境変動検出計」としての湖沼の年縞堆積物
福沢 仁之
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1995 年 34 巻 3 号 p. 135-149

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抄録

年縞(non-glacial varve)を用いた高精度年代測定法は,第四紀の年代決定法の中で最も有力な方法の一つである.本論文では,第1にスウェーデン年縞編年学(Swedish Varve Chronology)を例として取りあげ,年縞研究の現状と問題点をレビューした.その結果,1.最新年縞年代と現在との関係,2.年縞の計数方法および,3.年縞でない葉理の付加および年縞の消失が,編年に大きな影響を与えることが指摘できた.第2に,福井県三方五湖の水月湖における数本の堆積物コアから得られた,過去16,000年間にわたる年縞堆積物を用いた編年学について詳しく述べた.この年縞堆積物では歴史記録から年代をさかのぼる計数,および広域テフラや泥流堆積層による対比や計数の検証が行われつつあり,Younger Dryas期や最終氷期極相期の編年が数年単位で明らかにできる可能性を指摘した.第3に,集水域が狭く,周辺からの粗粒砕屑物が流入しない水月湖の細粒堆積物中の鉄鉱物や粘土鉱物組成の変動が,大陸起源の風成塵変動,日本海の海水準変動および若狭湾周辺の降水量変動を反映しており,年縞計数の結果から過去8,830年間の変動を1年~数年単位で明らかにした.

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