兵庫県の兎和野,滋賀県の饗庭野,和歌山県の潮岬の3ヵ所の黒色土壌について,母材の種類と堆積状態,生成に関わる過去の植生要因を調べた.一次鉱物組成と粘土鉱物組成を調べた結果,母材としては,3断面とも全層位で火山ガラスなどのテフラ起源粒子と岩片などの基岩風化物が混在していた.また兎和野土壌では,風成塵など外来の石英も混在していた.ゆえに黒色土の土層は,風成などの堆積物としての要素が強く,下部層位から上方に向かって累積的に発達したものであると推定された.一方,どの断面でも植物珪酸体の風化指数は表層に近づくほど小さく,この点からも土壌層の累積的な発達過程が裏づけられた.植物珪酸体分析と花粉分析の結果から,いずれの断面でも草原または疎林のような植生の継続が示唆された.また,炭化植物片の含量と腐植含量は,必ずしも相関が高くなかった.